永住申請で、どんな場合に源泉徴収票を提出しますか?

1,源泉徴収票は永住申請の必要書類ですか?

 永住申請では、許可要件の1つ独立生計要件に係る書類(課税証明書など)を提出する必要があります。もっとも、勤務する会社が発行する源泉徴収票は必須の書類ではありません。源泉徴収票は必須の書類ではありませんが、下記の状況によっては提出が必要となる場合もあります。

2,どんな場合に源泉徴収票を提出しますか?

 永住申請では独立生計要件に係る書類として、居住する市区町村が発行する課税証明書が必須の書類とされています。課税証明書には、当該年の年収が記載されているので、その年収額を基準に生計要件について判断されます。課税証明書は当該年の1月から12月までの収入金額が記載されますが、課税証明書が発行されるのは、だいたい翌年の5月頃になります。したがって、1月から4月までは前年の課税証明書を取得することはできません。

 そこで、5月になるまでは課税証明書を取得できないため、永住申請することはできないのか?ということが問題となります。この場合に提出することになるのが源泉徴収票です。源泉徴収票は年末に勤務する会社から発行されます。そして源泉徴収票には、その年の収入の金額が記載されています。副収入を得て確定申告などをしていない限り、源泉徴収票と課税証明書に記載されている年収額は一致します。よって、5月以前に永住申請を希望する場合には、課税証明書の発行を待たずして永住申請するために、課税証明書に代えて前年の源泉徴収票を提出することになります。

3,源泉徴収票を提出すれば、課税証明書の提出は不必要ですか?

 上記2で課税証明書に代えて源泉徴収票を提出すると述べましたが、これは課税証明書を取得できない時期の申請の際の代替措置にすぎません。あくまでも、永住申請の必須書類は課税証明書です。したがって、申請後、5月を過ぎれば課税証明書を取得できるので、直近の課税証明書の取得が可能となったら課税証明書を取得して入管に提出することになります。また、源泉徴収票を課税証明書の代替として利用できるのは、5月以前は課税証明書を取得できないため代替するので、直近1年のみとなります。したがって、それ以前の年度は課税証明書を取得できるので、課税証明書を提出する必要があります。すべての年度を源泉徴収票で代替することはできません。

4,提出する源泉徴収票で気を付ける点は何ですか?

 源泉徴収票は簡単に偽造することができます。したがって、提出する源泉徴収票が真正な書類であるとの信用を得る必要があります。そのため、提出する源泉徴収票には、可能な限り勤務先の法人印の押印を得るようにすることが、好ましいと考えます。近年では、源泉徴収票を紙で渡されるという会社は減ってきています。源泉徴収票を電子的記録で交付されている場合は、パソコンで印刷して提出してください。この場合も、印刷した源泉徴収票に法人印の押印を得る必要があることは同じです。

5,審査期間中に課税証明書が取得できるようになった場合は、どうすれば良いですか?

(1)課税証明書の提出

 永住申請の審査には、多くの場合、半年以上の期間が必要となります。したがって、直近の課税証明書が発行される5月以前に永住申請をしても、審査期間中に直近の課税証明書を取得できるようになります。この場合は、追加資料として入管から直近の課税証明書の提出を求められます。

(2)課税証明書の注意点

 確定申告をしていない場合は、源泉徴収票と課税証明書の所得金額は一致します。しかし、副業などで確定申告をしている場合は、源泉徴収票と課税証明書の所得金額が一致しなくなる場合があります。副業が赤字の場合で、赤字計上している場合は、所得金額が減ることになります。この赤字計上の額が大きい場合、源泉徴収票では生計要件を満たすに十分な収入を得ている場合でも、課税証明書では生計要件を満たせなくなる危険性もあります。

 就労系の在留資格では副業が禁止されている場合もあります。よって、副業が禁止されている在留資格で副業していた場合は、不許可となります。また、永住申請時には経歴書などに職歴を記載して提出します。この申請書に副業を記載していない場合は、課税証明書で副業をしていることが明らかとなった場合は、内容虚偽として不許可になります。

 この様な理由から、永住申請は直近の課税証明書を取得してから申請することが好ましいと考えます。

6,まとめ

①原則は課税証明書の提出
②直近1年分の収入のみ源泉徴収票で代替可能
③源泉徴収票で代替する場合は、勤務先の法人印の押印を得る
④審査期間中に追加資料として課税証明書が要求される
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法