外国人従業員が退職した場合、会社はどんな手続きを行いますか?

1,従業員が退職した場合の必要な手続きは何ですか?

 会社が雇用している従業員が退職した場合、会社は以下の手続きを行う必要があります。これは日本人であると外国人であると変わりません。

・雇用保険被保険者資格喪失届の届出
・雇用保険の離職票の交付(失業保険は受給資格がある場合には、外国人でも受給できます。需給には離職票が必要となりますので、交付してください。)
・源泉徴収票の交付
・社会保険の資格喪失届の届出
・住民税の変更手続
・会社からの貸与品の回収

2,雇用保険被保険者資格喪失届は、どうすれば良いですか?

 外国人の場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」の外国人被保険者用の欄に氏名、在留カード番号、在留期間、派遣又は請負区分、国籍・地域、在留資格を記入する箇所があります。外国人が所持している在留カードには、在留カード番号などは記載されています。入管法には、外国人が離職した場合の出入国在留管理局への届出について努力義務を定めています。もっとも、ハローワークへ雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで、この届出に関する義務は免除されます。外国人が雇用保険の対象者でない場合は、「外国人雇用状況届出書」をハローワークに提出してください。もっとも、在留資格が「外交」「公用」の場合や「特別永住者」の場合は、出入国在留管理局への届出は不要です。

3,退職証明書はどうすれば良いですか?

 労働基準法第22条は「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と規定しています。したがって、離職した外国人従業員から「退職証明書」の交付を求められたら、交付しなければなりません。退職証明書は、退職した外国人が帰国することなく転職した場合などに、ビザの種類変更や就労資格証明書の交付申請の際に出入国在留管理局に提出する必要があります。

 なお、法第22条第3項は「労働者の請求しない事項を記入してはならない。」と規定しています。よって、従業員にとって不利益な事項(従業員側の理由で解雇した場合の解雇事由など)は、従業員が記載を求めなかった場合は記載してはいけません。また第4項は「使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。」と規定しています。これらの事項には注意を払う必要があります。

4,外国人が転職せず帰国する場合は、どうすれば良いですか?

 外国人が退職後帰国する場合は、日本出国後2年以内であれば、厚生年金の「脱退一時金」を請求することができます。脱退一時金を請求するためには厚生年金に6か月以上加入していたことが条件となります。脱退一時金とは、外国人が帰国した場合は日本で老齢年金を受け取ることができないので、保険料の掛け捨てとならないよう、厚生年金保険の加入期間に応じて支払われる一時金のことです。

 この脱退一時金の手続きは、外国人本人が行うもので、企業側が行う手続きではありません。しかし、外国人が退職し帰国する場合は脱退一時金について説明しおくことが望ましいと考えます。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法