永住許可要件の1つ独立生計要件を満たすためには、いくらの年収が必要ですか?

1,独立生計要件とは何ですか?

 永住許可要件の1つに独立生計要件というものがあります。独立生計要件を充足するためには、日本で安定継続的に生計を維持できる収入が必要となります。そして、この収入は課税証明書に記載された年収によって判断されます。永住申請においては、直近5年分の課税証明書の提出が必要となります。この課税証明書を提出する直近5年間は、独立生計要件をクリアできる程度の十分な収入を得ている必要があります。2019年7月までは、提出する必要のある課税証明書は、直近3年分でした。これが直近5年分の課税証明書の提出が必要となり、永住申請の審査が厳しくなっています。

2,いくらの年収が必要となりますか?

 独立生計要件をクリアするために必要な年収について、入管から公表されているわけではありません。しかし、実務上は、年収300万円以上が最低必要で、課税証明書を提出する直近5年間は300万円以上の年収を得ている必要があると考えられています。この独立生計要件に係る年収は、市区町村発行の課税証明書に記載された年収によって判断されます。上記1の通り、課税証明書は直近5年分の提出が求められています。よって、提出する直近5年間の課税証明書には毎年300万以上の年収が記載されている必要があります。

3,現在の年収が高くても、5年間毎年、年収300万円以上が必要ですか?

 転職等によって年収が増加し、現在年収700万円以上の収入を得ていたとしても、課税証明書を提出する直近5年間のうち、1年でも年収300万円以下だった場合は、永住申請が許可される可能性は低くなります。生計要件をクリアするためには、安定継続的に十分な収入を得ている必要があります。収入が不安定な場合は、現在の年収が高くても、許可の可能性が低くなります。課税証明書を提出する直近5年間は、毎年年収300万円以上の収入を得ている必要があります。

4,扶養者がいる場合いくらの年収が必要ですか?

 上記2で検討した生計要件をクリアするために必要な年収300万円以上は、単身者を基準とした金額になります。配偶者や子供その他の親族を扶養している場合は、独立生計要件をクリアするために必要な年収は高くなります。入管が公表しているわけではありませんが、実務上は扶養者1人が増えるにつき最低でも20万円から30万円をプラスした年収を得ている必要があると考えられています。

 直近5年間に扶養者が増減している場合は、各年度によって扶養者を考慮して年収の基準が判断されます。課税証明書には、当該年度の扶養者の人数に関する記載があります。よって、現在は扶養を外し単身であった場合、現在の年収は300万円以上あればクリアしますが、前年に2人扶養している場合は、前年の年収は最低でも340万円から360万円の年収を得ている必要があります。よって、扶養を外したとしても過去5年間に遡って毎年年収300万円以上の基準に下がるわけではありません。課税証明書を提出する各年度毎に、扶養者を考慮して独立生計要件は判断されます。

5,独立生計要件は世帯年収で判断されますか?

 独立生計要件は世帯年収を基準に判断されます。よって、配偶者や成人した子供が十分な収入を得ている場合は、必ずしも申請人本人に独立生計要件が備わっている必要はありません。配偶者や同居の家族の年収も、独立生計に必要な年収に考慮することができます。この場合は、配偶者などの課税証明書を提出することが必要となります。しかし、資格外活動で得た収入やアルバイトで得た収入の場合は、独立生計要件の判断の基準となる年収に考慮することはできません。

6,生計要件が緩和される場合はありますか?

 以下の場合は、永住申請の独立生計要件が緩和されます。生計要件を充足するために必要な年収が下がるわけではありませんが、審査の対象となる期間が5年以下になります。課税証明書の提出が必要な年数が短くなります。

①申請人の方が、日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者のいずれかである場合。直近3年分に緩和

②申請人の方が、日本人の実子(特別養子縁組を含む)、永住者の実子、特別永住者の実子である場合。直近1年分に緩和

③申請人の方が「高度人材外国人」である場合。高度人材ポイント計算で80点以上ある場合は直近1年分。70点以上の場合は直近3年分に緩和

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法