1,帰化申請中に転職してはいけませんか?

 帰化申請の審査期間は、申請が受理されてから約1年程度の時間を要します。申請の準備も含めれば、帰化するまでは1年以上の時間がかかります。この間に、転職の話があることもあります。帰化申請中は転職してはいけない、という決まりはありません。もっとも、帰化申請中は申請時点から事情の変更が生じる行動は避けることが望ましいと考えます。申請時点では、帰化の許可要件を満たしていても、事情の変更によって許可要件を充足できなくなる危険性もあります。

 なお、帰化申請が受理される際には、転職や会社を起業する予定があるか、と法務局に必ず聞かれます。予定がないと答えた場合は、帰化申請の結果が出るまで、転職や起業は控えることが望ましいと考えます。

2,帰化申請中に転職したら、どうなりますか?

 帰化申請中に転職した場合は、審査期間が長くなります。まずは、申請した法務局に転職したことを報告しなければいけません。法務局に転職の事実を報告したら、転職先に関する追加書類を要求されます。転職先での業務内容や収入、社会保険の加入の有無などが新たに審査されることになり、これに関する資料が追加書類となります。

3,追加書類は何ですか?

 2で検討した通り、帰化申請中に転職した場合は法務局から追加資料を要求されることになります。個々の事案によって違いはありますが、おおむね以下の資料を要求されます。

①転職先の在勤証明書

帰化申請中に転職した場合は、転職先で再度在勤証明書を発行してもらう必要があります。

②転職先の給与明細書

 給与明細書によって、社会保険や住民税が給与から天引きされていることを確認する必要があります。

③勤務先付近の略図

 帰化申請人が転職先付近の略図を新たに作成し、転職先の住所や電話番号、上司の氏名等を記載する必要があります。

4,無職や個人事業主・会社経営者になった場合は、どうなりますか?

 勤務先の会社が変わった場合以外にも、失職したり独立する場合もあります。この場合は以下の点に注意が必要です。

(1)無職になった場合

 帰化許可要件の1つに生計要件というものがあります。生計要件は、日本で安定継続的に生計を維持できることを要求しています。帰化申請中に失職した場合は、この生計要件との関係で問題が生じます。生計要件は世帯年収で判断されますので、同居の親族が十分な収入を得ている場合は、申請人本人に必ずしも生計要件が備わっている必要はありません。世帯の収入が帰化申請人に依存している場合は、不許可の危険性が高まります。また、保持している在留資格が就労ビザの場合は、失職した場合は在留資格該当性を失います。よって、可能な限り早く新しい仕事を探す必要があります。

(2)個人事業主・会社経営者になった場合

 個人事業主や会社経営者が帰化申請する場合、最低で2年分の確定申告書や決算書の提出が必要です。帰化申請中に独立して個人事業主や会社経営者となった場合は、1期目の確定申告や決算も終わっていない状態です。この場合、2年分の確定申告書や決算書の提出ができません。したがって、事業の安定性や収入面の審査ができないため、帰化申請を取り下げるように要求される可能性が大きいです。この場合は、2期分の確定申告や決算の後に、再度帰化申請をする必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法