外国人を雇用する場合の注意点は何ですか?
目次
1,外国人雇用に必要な手順は何ですか?
外国人を雇用する場合の手順は以下の流れとなります。ここで注意すべき点は、就労可能な在留資格の有無、就労ビザを取得できるか否か、就労ビザの取得の確認を怠らないという点になります。就労資格のない外国人就労させたり、就労ビザで許容されていない業務に従事させた場合は、当該外国人は不法就労罪、企業側の責任者は不法就労助長罪で摘発される可能性があります。
①就労可能な在留資格の有無の確認
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②就労ビザを取得できるか否かの確認
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③雇用契約の締結
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④就労ビザの取得
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⑤就労開始
2,①就労可能な在留資格の有無の確認は、どうすれば良いですか?
外国人が日本に滞在する場合は、なんらかの在留資格を付与されています。まずは、その在留資格の有無を確認する必要があります。在留資格の有無は在留カードやパスポートによって確認することができます。よって、在留カードやパスポートの提示を求め、在留資格を確認してください。
外国人が就労可能か否かは、取得している在留資格によって決せられます。就労ビザとは就労可能な在留資格のことをいいます。代表的な就労ビザは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。在留カードを確認し、在留資格の種類を確認してください。なお、「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」「永住者の配偶者等」の在留資格は就労制限がないため、日本人と同じように雇用することができます。
3,②就労ビザを取得できるか否かの確認は、どうすれば良いですか?
外国人が就労可能な在留資格を保有していない場合は、就労ビザの申請をする必要があります。就労ビザを取得したら、どんな仕事でも従事することができるわけではありません。各就労ビザによって、許容されている業務の範囲が定められています。そこで、雇用する外国人が従事する予定の業務が、就労ビザによって許容されているか否かを確認する必要があります。就労ビザで許容されていない業務の場合は、就労ビザを取得することはできません。
また、各就労ビザには、法律上の許可要件が定められています。例えば、技術人文知識国際業務ビザでは、学歴要件や学歴と業務内容の関連性など、6つの許可要件があります。これらの許可要件を充足しているか否かを確認することも必要です。
ここで注意すべき点は、以下の2点です
①従事予定の業務が、各就労ビザで許容された範囲内か否か
②各就労ビザの許可要件(学歴や実務経験など)を充足しているか否か
4,③雇用契約の締結で注意すべき点は何ですか?
就労ビザの申請では、雇用契約書や労働条件通知書の写しは、必須の書類として入管に提出する必要があります。外国人と雇用契約を結ぶ場合に注意すべき点は、就労ビザの取得が雇用契約の効力発生要件とすることです。効力発生に関する条項を定めていないと、就労ビザを取得できなかった場合でも、雇用契約は有効となってしまう危険性があります。例えば、「本契約の効力は、適法な就労可能な在留資格の取得並びに在留期間の更新許可を条件として、発効する」といった、特別の効力発生条項を雇用契約書に規定してください。また、採用面接の際には、当該外国人本人に口頭で説明してください。
5,④就労ビザの取得は、どうすれば良いですか?
就労ビザの申請は、当該外国人が現在置かれている状況によって、どの手続きを取っていくべきか、が異なってきます。以下に、代表的な場合を検討します。
(1)外国に在住する外国人を招聘して採用する場合
外国に在住する外国人を招聘して採用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。この申請は、会社側から当該外国人が勤務する予定の就業場所を管轄する地方出入国在留管理局に申請する必要があります。許可が下りた場合、在留資格認定証明書が会社に送付されてきます。この在留資格認定証明書は、原本を外国にいる外国人に郵送してください。在留資格認定証明書を受け取った外国人は、当該認定証明書とパスポートを持参して、母国の在外日本国大使館又は領事館で査証申請をして、査証を取得してください。査証を取得し入国した後は、入管に認定証明書を提出して、在留カードを受け取ってください。
(2)外国人留学生を採用する場合
外国人留学生は留学ビザ(在留資格「留学」)をもって日本に在留しています。留学ビザは原則として就労が認められていません。よって就労可能な在留資格に「在留資格変更許可申請」を行います。入管法の条文では、在留資格変更は「法務大臣が在留資格の変更を適当と認めるに足りる理由があるときに限り、法務大臣の裁量により許可される」と規定しています。よって、当然に変更が許可されるわけではないので、就労ビザの許可要件を充足している点に関する立証の準備が必要です。
(3)家族滞在ビザ等の就労が認められていない外国人を採用する場合
家族滞在ビザなどの就労が認められていないビザに基づき在留している外国人を採用する場合は、就労可能な在留資格に「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。入管法の条文では、在留資格変更は「法務大臣が在留資格の変更を適当と認めるに足りる理由があるときに限り、法務大臣の裁量により許可される」と規定しています。よって、当然に変更が許可されるわけではないので、就労ビザの許可要件を充足している点に関する立証の準備が必要です。
(4)就労ビザを保有する外国人を採用する場合
就労ビザを保有する外国人を採用する場合は、従事予定の業務が外国人の保有する就労ビザで許容された範囲内か否かによって、行うべき手続きが異なってきます。
当該外国人が保有する就労ビザで許容された範囲外の業務に従事する予定の場合は、適切な就労ビザに「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。適切な就労ビザへの変更を怠って、保有する就労ビザで許容された範囲外の業務に従事した場合は、不法就労罪や不法就労助長罪に問われる危険性があります。
当該外国人が保有する就労ビザで許容された範囲内の業務に従事する予定の場合は、就労資格証明書交付申請を行っておくべきです。就労資格証明書を取得しておくことによって、従事する業務が保有する就労ビザで許容された範囲内であることが証明されます。また、就労資格証明書を取得することによって、資格外活動の防止や転職後の在留期間更新許可申請が容易になります。
6,⑤就労開始で注意する点は何ですか?
就労開始は就労ビザ取得後になります。就労ビザ申請中は働いてはいけません。申請中に働いていた場合は不法就労となり、就労ビザの申請は必ず不許可になります。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |