単純労働できるビザはありますか?
目次
1,単純労働とは、どんな労働ですか?
単純労働とは、ビザ取得との関係では学術的基礎や専門的な知識や技術を必要としない労働を指します。例えば、飲食や小売りの店員や現場作業員、工場のライン工など、短期間の反復作業で従事できる業務は単純労働に分類されます。専門的な知識や技術を要する場合でも、ビザとの関係では現場作業(ブルーカラー)も単純労働に分類されます。このような単純労働に外国人が従事する場合に必要なビザに関し、以下では検討します。
2,就労ビザで単純労働できますか?
(1)技能実習ビザ
技能実習では、工場や建設現場での現場作業を行うことが認められています。技能実習では、単純労働に分類される業務に従事することができますが、技能実習生を労働力と捉えることは認められていません。
技能実習法3条2項は「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と規定されています。法がこのように規定している趣旨は、「我が国で培われた技能等の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与する」という技能実習制度の基本理念に求められます。このように技能実習制度は、国際協力を目的とした制度です。したがって、単純労働をさせることを目的として、技能実習を口実に外国人を働かせることはできません。
(2)特定技能ビザ
特定技能ビザでは、法律で定められた14の特定産業分野において、単純労働に従事することが認められています。特定技能外国人は、上記14分野において現場作業に従事することができます。もっとも、特定技能外国人が従事する業務は、「特定技能1号」では「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」、「特定技能2号」では「熟練した技能を要する業務」となります。単純労働といっても、特定技能ビザを取得するためには、各分野の技能試験に合格する必要があり、最低限の専門的技術が求められます。
特定技能制度は、深刻化する日本社会の人手不足状況に対応するために、各分野において外国人を受入れることによって、14分野の存続・発展を図り、日本の経済社会の持続可能性を維持することを目的としています。特定技能制度の創設にあたっては、技能実習制度の問題点や外国人単純労働者の受入れといった観点から批判があり、厳格な制度設計がされています。特に特定技能外国人を受入れる企業側の負担は大きなものとなっています。
(3)その他の就労ビザ
技能実習や特定技能ビザ以外の、就労可能な在留資格(就労ビザ)では単純労働に従事することは認められていません。就労ビザで従事することが認められる業務は、一定の学術的基礎を必要とする専門性が要求される業務であることや、高度の技能を必要とする業務であることが必要です。
「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「経営・管理」といった代表的な就労ビザは、いわゆるオフィスワークのビジネスマンでホワイトカラーと呼ばれるような分野の業務が認められます。これ以外の就労ビザでも、熟練した技能や技術を必要とする業務であることが要求されます。
「技能」ビザは、外国料理のコック、スポーツトレーナー、パイロットなどが該当します。「興行」ビザは、スポーツ選手、演劇員、ダンサー、オーケストラなどが該当します。「芸術」ビザは、作曲家、画家、写真家などが該当します。「教授」ビザは、大学教授などが該当します。「研究」ビザは、研究所の研究員などが該当します。「教育」ビザは、学校の教員などが該当します。「宗教」ビザは、僧侶、司教などが該当します。「報道」ビザは、記者、報道カメラマンが該当します。「法律・会計業務」ビザは、弁護士、公認会計士などが該当します。「医療」ビザは、医師、看護師などが該当します。「介護」ビザは、介護士などが該当します。
上記の就労ビザを有する外国人に単純労働をさせた場合は、不法就労罪や不法就労助長罪で処罰される可能性があります。
3,配偶者ビザ、永住権、定住者は単純労働できますか?
2で検討した通り、原則としては就労ビザで外国人が単純労働に従事することは認められていません。技能実習や特定技能は例外となります。以下で検討する身分系ビザ(身分等に応じて付与される在留資格)は就労制限がありません。よって、身分系ビザを有する外国人は、違法な業務でない限り、いかなる仕事に従事することも認められ、単純労働に従事することも可能です。
(1)配偶者ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)
配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)には就労制限はありません。よって、飲食店や小売店の店員、現場作業などの単純労働に従事することも認められます。また、パチンコ屋等の風営関係の業務に従事することも可能です。
(2)永住者
永住権(在留資格「永住者」)には就労制限がありません。よって、飲食店や小売店の店員、現場作業などの単純労働に従事することも認められます。また、パチンコ屋等の風営関係の業務に従事することも可能です。
(3)定住者
定住者(在留資格「定住者」)には就労制限がありません。よって、飲食店や小売店の店員、現場作業などの単純労働に従事することも認められます。また、パチンコ屋等の風営関係の業務に従事することも可能です。
4,資格外活動許可を取得することで単純労働できますか?
留学ビザや家族滞在ビザ、特定活動ビザは原則として就労が認められていません。もっともこれらのビザを保有している場合でも、資格外活動許可を取得することによって、週28時間までは就労することが認められています。
(1)留学ビザ
留学ビザ(在留資格「留学」)は、留学を目的としたビザです。日本の大学や専門学校などに通学することを前提とした在留資格で、就労は原則として認められていません。
もっとも、資格外活動許可を取得することによって週28時間以内の就労が認められています。この資格外活動許可を得た場合は、飲食やコンビニなどでのアルバイトも可能です。資格外活動許可では、風俗営業(パチンコ屋やキャバクラなど)や性風俗関連特殊営業に係る仕事に従事することは禁止されています。資格外活動許可を得て所定の時間を超えて働いたり、禁止されている業務に従事した場合は、不法就労罪や不法就労助長罪に問われます。
(2)家族滞在ビザ
家族滞在ビザ(在留資格「家族滞在」)は、就労ビザなど家族の帯同が認められているビザで日本に在留する外国人の配偶者や子供に付与される在留資格です。家族滞在ビザでは、原則として就労は認められていません。
もっとも、資格外活動許可を取得することによって週28時間以内の就労が認められています。この資格外活動許可を得た場合は、飲食やコンビニなどでのアルバイトも可能です。資格外活動許可では、風俗営業(パチンコ屋やキャバクラなど)や性風俗関連特殊営業に係る仕事に従事することは禁止されています。資格外活動許可を得て所定の時間を超えて働いたり、禁止されている業務に従事した場合は、不法就労罪や不法就労助長罪に問われます。
(3)特定活動ビザ
特定活動ビザ(在留資格「特定活動」)では、外国人に日本で特定活動を行うことが認められ、特定活動とは「法務大臣が個々の外国人に指定する活動」を意味します。特定活動ビザでは、原則として就労は認められません。
もっとも、資格外活動許可を取得することによって週28時間以内の就労が認められています。この資格外活動許可を得た場合は、飲食やコンビニなどでのアルバイトも可能です。資格外活動許可では、風俗営業(パチンコ屋やキャバクラなど)や性風俗関連特殊営業に係る仕事に従事することは禁止されています。資格外活動許可を得て所定の時間を超えて働いたり、禁止されている業務に従事した場合は、不法就労罪や不法就労助長罪に問われます
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |