留学生は、どんな就労ビザに変更できますか?

1,留学ビザから就労ビザへの変更はどうなりますか?

 外国人留学生が留学を目的として日本に在留するためには、留学ビザ(在留資格「留学」)を取得している必要があります。そして、学校を卒業した場合は、原則としては帰国しなければなりません。学校を卒業後も日本に在留を希望する場合は、留学以外の何らかの在留資格を取得する必要があります。

学校を卒業後に、日本に所在する企業その他の機関に雇用され、就労を目的として日本に在留の継続する場合には、留学ビザから就労ビザへ変更する必要があります。就労ビザを取得する為には、大前提として日本に所在する会社その他の機関との間に、雇用契約その他の契約関係があることが必要となります。留学ビザから就労ビザへの変更は、おおむね以下のような流れになります。

①外国人留学生の採用・内定

②出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請

(3月卒業者の場合、前年の12月ごろから申請することができます)

③審査期間(約1~3か月)

④結果の通知

⑤出入国在留管理局へ出頭して新しい在留カードの取得

2,外国人留学生は、卒業後どんな就労ビザを取得できますか?

 就労ビザ(在留資格)には、多くの種類があります。そのうち、どの就労ビザを取得できるかについては、申請人となる当該外国人の経歴や学歴、ビザ取得後に従事する予定の業務によって異なってきます。多くの留学生の場合は実務経験がないため、実務経験や実績を必要とする就労ビザ(技能ビザや芸術ビザなど)を取得することは出来ません。以下では、実務経験を有しない留学生が、学校を卒業後に取得する代表的なビザについて検討します。

(1)技術人文知識国際業務ビザ

 技術人文知識国際業務ビザは、一定の学術的基礎を必要とする一定水準以上の専門性を必要とする業務に従事することを認めています。よって、単純労働に従事することは認められません。具体的には、技術の分野ではIT技術者、プログラマー、機械建設の設計者・技術者など理系の仕事が該当します。人文知識の分野では、財務や労務といった管理部門、マーケティングや商品企画といった営業部門など文系の仕事が該当します。国際業務の分野では語学講師や翻訳通訳、国際取引といった仕事が該当します。

(2)特定技能1号ビザ

 特定技能1号ビザは、国内人材確保が困難な人手不足が顕著となっている特定産業分野において外国人を受入れることを認めています。特定産業分野とは次の14分野になります。①介護②ビルクリーニング③素形材産業④産業機械製造業⑤電気・電子情報関連産業⑥建設⑦造船・船用工業⑧自動車整備⑨航空⑩宿泊⑪農業⑫漁業⑬飲食料品製造業⑭外食業。特定技能ビザでは、建設現場の現場作業や飲食店での接客など、これまで就労ビザでは認められてこなかった業務に従事することが認められます。もっとも特定技能ビザを取得するためには、各分野の技能検定試験や日本語検定試験に合格する必要があったり、また受入機関には特に課される要件などをクリアする必要があります。

(3)特定活動46号ビザ

 特定活動46号は、日本の大学又は大学院を卒業した外国人留学生に、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に就労することを認めています。本制度が創設される以前は、外国人留学生が日本で就職を希望する場合、技術人文知識国際業務ビザを取得することが一般的でしたが、技人国ビザでは単純労働に従事することは認められていません。これに対して、2019年に創設された特定活動46号ビザは、単純作業的な要素を含む業務に従事することが認められています。接客ビザと呼ばれたりもしています。

3,技術人文知識国際業務ビザの許可要件は何ですか?

 技術人文知識国際業務ビザを取得する為には、以下の6つの許可要件を充足する必要があります。

①学歴又は実務経験要件

②学歴で学んだ内容や実務経験と従事する業務との間に関連性があること

③本邦の公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること

④会社の継続性・安定性(経営状態)

⑤日本人と同等以上の報酬を受けること

⑥素行善良

(1)①学歴又は実務経験要件

 学歴要件は大学の卒業又は日本の専門学校の卒業を要求しています。卒業する大学は日本の大学・海外の大学を問いません。大学には短大・大学院を含みます。専門学校卒業の場合は日本の専門学校に限られ、また専門士の称号を取得している必要があります。

 実務経験要件は、原則として10年の実務経験を要求しています。もっとも国際業務に限っては3年の実務経験で足ります。実務経験要件の立証には、在職証明書の提出が不可欠です。在籍していた会社が倒産したなどで在職証明書を取得できない場合は、ビザを取得することはできません。

(2)②学歴で学んだ内容や実務経験と従事する業務との間に関連性があること

 学歴で学んだ内容と従事する業務との間の関連性が認められるためには、卒業証明書や成績証明書の履修内容と仕事内容の間に関連性があることが必要です。従事する業務内容を理由書を作成して説明し、学校で履修した科目の知識や技術を必要とする業務であることを説明するとともに卒業証明書や成績証明書を提出して立証していきます。

 実務経験の場合は在職証明書を提出して、理由書で説明した業務内容と一致することを説明します。在職証明書を提出できない場合は、立証は不可能です。

(3)③本邦の公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること

 申請人と会社その他の機関との間に契約関係があることが必要です。代表的な契約な雇用契約ですが、契約には請負契約や委任契約なども含みます。この契約の内容は継続的なものである必要があります。在留資格に係る活動が継続的に行われることが見込まれることが求められます。本邦の公私の機関は、日本に所在する事業所や事務所を有する場合は、外国の機関も含まれます。また、法人に限られず、個人の場合でも含まれます。

(4)④会社の継続性・安定性(経営状態)

 会社の継続性・安定性が認められるためには、会社の経営状態が安定していることが必要です。会社の決算書類の提出が求められ、決算書に基づいて判断されます。赤字決算の場合は、中小企業診断士などの企業評価能力を有する専門家の鑑定評価書や事業計画書を提出して、会社の将来性や継続性を立証していく必要があります。新設会社で決算期を迎えていない場合は、事業計画書を提出する必要があります。

(5)⑤日本人と同等以上の報酬を受けること

 報酬は、同じ仕事に従事する日本人従業員と同等以上である必要があります。報酬とは、労働の対価として受け取る給付を意味します。よって手当などは含みません。外国人であることを理由に給与を低く設定することは認められません。

(6)⑥素行善良

 前科前歴がないことです。交通違反も含みます。オーバーステイやオーバーワークも不利に働きます。該当する方は「反省文」を書きましょう。

4,特定技能1号ビザの許可要件は何ですか?

(1)申請人が具備する要件

 特定技能1号ビザの許可要件として、各特定技能分野の技能検定試験と日本語能力試験に合格することが求められています。もっとも、技能実習2号を良好に修了した技能実習生の場合は、技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との間に関連性が認められる場合は、上記試験は試験が免除されます。

(2)特定技能受入企業の条件

 特定技能制度の創設にあたっては、外国人単純労働者を受け入れる点や技能実習制度で問題が多発したことを受けて、多くの批判や反対が生じました。このような背景を受けて、特定技能制度では、細かく制度設計され、特に特定技能外国人を受入れる企業側の負担が大きくなっています。特定技能外国人を受入れるためは、簡単に説明すると以下のような要件が企業側に課されています。

①外国人と結ぶ雇用契約が適切であること 

 ・特定技能外国人の報酬の額や労働時間などが日本人と同等以上など

②受入機関自体が適切であること 

 ・法令等を遵守し「禁固以上の刑に処せられた者」など欠格事由に該当しないこと

 ・保証金の聴取や違約金契約を締結していないことなど

③外国人を支援する体制があること

④外国人を支援する計画が適切であること

 ・1号特定技能外国人を受入れる受入機関は、当該外国人が「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会活動上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成し、当該計画に基づいて支援を行わなければなりません。

5、特定活動46号ビザの許可要件は何ですか?

(1)学歴要件

 日本の4年制大学の卒業及び大学院を修了している者に限ります。

短期大学及び専門学校の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象になりません。

(2)日本語能力要件

ア、日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語テストで480点以上を有する者

日本語能力試験については、旧試験制度の「1級」も対象となります。  

イ、その他、大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した者についてはアの要件を満たすものとみなされます

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法