帰化申請する場合に、年金支払での注意点は何ですか?

1,帰化申請で、年金支払状況について審査されますか?

 帰化申請の審査では、税金の支払い状況と共に、年金の支払い状況を審査されます。年金は、会社員、個人事業主、法人経営者、無職、大学生など個々人の状況によって、支払うべき年金の種類は異なってきます。年金は、大別して厚生年金と国民年金に分類されます。いずれの年金にしても、年金の支払い状況に関し審査される期間は直近1年分です。同居している家族がいる場合には家族全員分の年金の支払い状況が審査されます。以下では、会社員や個人事業主など個々人の状況に応じて支払うべき年金の種類や証明方法を検討していきます。

2,会社員の場合に注意すべき点は何ですか?

 株式会社などの法人は、法律上、社会保険の加入義務が課されています。よって、会社員の場合は、給与から天引きされるので特に問題となることは少ないです。特に支払いの証明をする必要もないことが多いです。しかし、勤務先が社会保険に加入していない場合もあります。この場合は、国民年金に加入し国民年金保険料を支払う必要があります。勤務先が社会保険に加入しているか分からない場合は、給与明細書を確認してください。給与明細書には厚生年金の項目があり、給与から天引きされていれば社会保険に加入しているということなので、問題ありません。天引きされていない場合は、社会保険に加入していないので、国民年金に加入してください。

 国民年金に加入している場合は、年金定期便(ハガキ)や年金事務所で発行される国民年金支払領収書を法務局に提出して、年金の支払い状況を証明します。会社員の場合でも、直近1年以内に転職をしている場合は、退職後入社までの間は厚生年金に加入していないため、この間は国民年金に加入している必要があります。この転職期間中の年金の支払い状況も証明しなければいけません。転職期間中の国民年金の支払状況の証明方法も、年金定期便や国民年金支払領収書になります。

3,個人事業主の場合に注意すべき点は何ですか?

 個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人以上か以下かにより、厚生年金に加入するか、国民年金に加入するかが異なってきます。

 常時雇用する従業員が5人以下の個人事業主の場合は、国民年金に加入します。ほとんどの個人事業主の場合が、この場合に該当すると思います。国民年金の支払い状況に関する証明方法は、上記2と同様に年金定期便や国民年金支払領収書になります。

 常時雇用する従業員が5人以上の個人事業主の場合は、法律上、社会保険の加入義務が課されています。この場合は、個人事業主として社会保険に加入し、また従業員も含めて社会保険に加入する必要があります。この場合の年金の支払い状況に関する証明方法として、厚生年金保険料領収書を法務局に提出する必要があります。

4,法人経営者の場合に注意すべき点は何ですか?

 上記2で説明した通り、法律上、法人には社会保険の加入義務が課されています。よって、自身が経営する会社は、必ず社会保険に加入する必要があります。経営する会社が社会保険に加入していない場合は、帰化の許可は絶対に出ません。なぜなら、経営する会社が、法律上の義務を怠っているからです。

 社会保険に加入していない場合で、帰化申請したい場合は、経営する会社が社会保険に加入することが不可欠です。そして、直近1年分を遡って、まとめて社会保険料を支払う必要があります。従業員を雇用している場合は、従業員の分も含めてまとめて支払う必要があります。この場合は、100万円程度の加入費用がかかると思います。

 厚生年金の支払い状況に関する証明方法として、上記3と同様に厚生年金保険料領収書を法務局に提出する必要があります。

5,無職の場合に注意すべき点は何ですか?

 20歳以上の者は、国民年金の加入義務があります。よって、税金と異なり、収入の有無にかかわらず国民年金保険料を支払う必要が生じてきます。無職の場合でも、国民年金保険料は支払わなければなりません。国民年金保険料を支払えない場合は、免除や猶予申請をすることが認められています。この免除や猶予申請の手続きを取っていない場合は、年金を滞納していることになります。この場合は、帰化申請することは出来ません。滞納があった場合は、過去に遡って支払いをするか、免除若しくは猶予申請をする必要があります。

 国民年金の支払い状況の証明方法として、上記2,3と同様に、年金定期便や国民年金支払領収書を法務局に提出します。免除または猶予を受けている場合は、国民年金保険料免除・納付猶予申請承認通知書を法務局に提出します。

6,大学生や専門学校生の場合に注意すべき点は何ですか?

 20歳以上の者は、国民年金の加入義務があります。よって大学生や専門学校生も、20歳になったら国民年金の被保険者となります。もっとも、学生の場合は「学生納付特例制度」が設けられています。これは、在学中の保険料の納付が申請により猶予されるというものです。この制度を利用し支払いを猶予されている場合は、納付猶予承認通知書を法務局に提出して、猶予されていることを証明します。国民年金を支払っている場合は、年金定期便や国民年金支払領収書を提出します。

7.既に年金を受給している場合の注意点は何ですか?

 既に年金を受給している場合には、年金振込通知書を法務局に提出します。同居の家族に年金受給者がいる場合も、同様に必要となります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法