永住者の子供は、どうすれば永住権を取得できますか?

1,永住者の子供には永住権が付与されるでしょうか?

 外国籍の親が永住権を有しているからといって、当然にその子供に永住権は付与されるわけではありません。永住者の子供が永住権を取得する為には、別途に子供の永住申請をする必要があります。永住者の子供が永住申請する場合として、次の2類型が考えられます。①子供が既に出生していて永住権以外の何らかの在留資格で日本に在留している子供の永住申請をする場合、②現在は胎児でこれから出生する子供の永住権を申請する場合。

2,出生している子供の永住申請はどうすれば良いでしょうか?

 永住者の子供が永住申請する場合、「原則10年在留に関する特例」が認められます。永住許可要件の1つに住居要件というものがあります。この要件は、引き続き10年以上日本に在留している在留実績を求めています。これに対して、永住者の実子の場合は、引き続き1年間日本に住所又は居所を有していれば、永住申請することが認められています。このように、永住者の子供が永住申請する場合は、通常の永住申請と比較して大幅に要件が緩和されています。

 永住者の子供が永住申請する場合、生計要件などの他の永住許可要件は親を基準に審査されます。以下では、永住者の子供が永住申請する場合の注意点について検討します。

(1)生計要件

 永住者の子供の永住申請の場合でも、生計要件を充足する必要があります。この場合は親の収入を基準に判断されます。生計要件をクリアするための年収の目安としては、単身者の場合は年収300万円が必要と考えられています。また、扶養者がある場合、扶養者一人につき30万円程度を上乗せして考える必要があります。この生計要件は、市区町村が発行する課税証明書を基準に判断されます。直近1年間の課税証明書を提出する必要があります。子供の親が永住権を取得した時は、十分な収入があり生計要件をクリアできたとしても、子供の永住申請の時点で収入が下がり扶養者を考慮した生計要件をクリアできなかった場合は、子供の永住権取得は難しくなります。

(2)納税や年金その他社会保険料

 納税や年金その他社会保険料の支払いについても、永住申請する子供の親を基準に審査されます。これらの公的費用に未納がある場合は、永住権の許可は出ません。また、既に支払いを行っている場合でも、納付期限に遅れて滞納があった場合も永住権の許可は出ません。これらの公的費用は適正な時期に支払いを行っていることが必要です。自身の永住申請の時点では適正に支払っていた場合でも、子供の永住申請の時点で適正に支払っていない場合は不許可になってしまいます。住民税については直近1年分、年金と社会保険については直近2年分が審査の対象となりますので、最低でもこの期間は適正な支払いをしている必要があります。

(3)素行善良要件

 永住許可要件の1つである素行善良要件についても親を基準に判断されます。親が永住権を取得してから子供の永住申請までの期間の素行が問題となります。永住権を取得している以上、親の永住権取得前の素行は問題ありません。問題があれば、親の永住権は不許可になっています。親が永住権を取得した以降に、懲役刑や罰金刑を科されている場合は子供の永住権取得は難しくなります。交通違反も素行善良要件の判断に影響を及ぼします。飲酒運転などの重大な交通違反の場合は刑事罰に該当するので、1回の交通違反でも素行善良であるとは認められなくなります。一時停止違反といった軽微な交通違反の場合は行政罰に該当するので、直ちに素行善良要件に抵触することはありません。しかし、軽微な交通違反でも違反を繰り返している場合は、悪質とみなされ素行善良であるとは認められなくなります。実務上は、軽微な交通違反でも、直近5年間で5回以上の違反がある場合は、素行善良とは認められなくなる、と考えられています。 

3,これから出生する子供の永住申請は、どうすれば良いでしょうか?

 永住者の子供が胎児の場合、子供の出生時に永住申請することが認められています。もっとも、永住者の実子として出生した場合に、出生してから30日以内に永住申請をする必要があります。かなり期間が短いので、出生する以前から永住申請の準備をしていく必要があります。子供が生まれてから永住申請の準備をしていたのでは、間に合いません。この申請は、子供が出生した時点で親が永住権を保有している場合に限られます。親の永住申請中に子供が出生した場合は、上記2の永住申請を行うことになります。なお、生計要件などの居住要件以外の永住許可要件については、上記2と変わりはありません。

4,必要書類は何ですか?

 ①在留資格取得許可申請書

 ②子供の出生届記載事項証明書

 ③子供を含めた世帯全員の記載のある住民票の写し

 ④子供のパスポート原本(申請中で手元にない場合は、理由書を提出します。入国管理局に用紙があります)

 ⑤永住者の親の在留カード及びパスポートの写し

 ⑥永住者の親の住民税の課税証明書・納税証明書(直近1年分)

 ⑦永住者の親の在職証明書

 ⑧永住者の親の年金ネットの印刷画面(直近2年分)

 ⑨親と子供の健康保険証の両面の写し

 ⑩質問書(入国管理局に用紙があります )

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法