1,永住許可要件の素行善良要件とは何でしょうか?

 永住許可要件の1つに素行善良要件というものがあります。出入国管理局のホームページには、「永住許可に関するガイドライン」が掲載されています。このガイドラインの素行善良要件に関する事項には、以下のように記載されています。

永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

・素行が善良であること

・法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること

・その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

・罰金刑や懲役刑などを受けていないこと

 そこで、交通違反ある場合、いかなる場合に素行善良要件に抵触し影響を及ぼすでしょうか?

2,軽微な交通違反の場合、永住申請に影響を及ぼすでしょうか?

 軽微な交通違反とは、「白切符」や「青切符」を渡された場合です。

 「白切符」とは正式には「告知票」といいます。例えば、シートベルトの装着義務違反やチャイルドシートの使用義務違反などが、この場合に該当します。この場合は、違反点の処分のみで、反則金や罰金の支払いを科されることはありません。

 「青切符」とは正式には「交通反則告知書」といいます。駐車違反や免許不携帯運転や時速30km以下のスピード違反などが、この場合に該当します。この場合は、違反点の処分と反則金の支払が科されます。なお、刑事罰である罰金と反則金は制度上異なります。よって、反則金は上記1にある罰金刑には該当しません。

 上記「白切符」や「青切符」に該当する軽微な交通違反の場合は、素行善良要件に直ちに抵触し永住申請に影響を及ぼすことはありません。しかし、軽微な交通違反の場合でも同じようなことを繰り返している場合には悪質と判断されます。この場合、素行善良であるとは認められず永住申請に影響を及ぼしてきます。何回までの違反ならセーフといった明確な基準はありませんが、過去5年間で5回以上の違反があった場合、永住申請に影響を及ぼすと実務上考えられています。過去5年間の「運転記録証明書」というものを警察署で取得することができます。交通違反がある方は運転記録証明書を取り寄せ、違反の確認や入管への提出が必要になると思います。

3,重大な交通違反がある場合はどうなりますか?

 重大な交通違反とは「赤切符」を渡された場合です。「赤切符」とは正式には「告知票・免許証保管証」といいます。例えば、飲酒運転や無免許運転などが該当します。「赤切符」の処分として、違反点が6点以上なので免許の停止又は免許取り消しとなってしまいます。また、刑事責任に問われることになります。懲役刑や罰金刑が科され前科がつくこととなります。このような重大な交通違反を犯してしまった場合、素行善良であるとは認められません。よって永住申請が許可されることはありません。

 しかし、永久に素行善良要件を否定される訳ではなく、相当期間の経過によって素行善良要件を満たすことができます。相当期間経過とは、以下の期間の経過が必要です。

 懲役・禁固刑の場合:出所後10年経過

 執行猶予の場合:猶予期間の満了から5年経過

 罰金刑の場合:刑の執行から5年経過

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法