派遣社員でも技術人文知識国際業務ビザを取得できるでしょうか?

1,派遣社員の場合、派遣元又は派遣先のいずれを基準に判断すべきでしょうか?

 派遣社員が実際に業務に従事するのは、派遣された先の企業です。したがって、派遣社員の外国人が技術人文知識国際業務ビザを申請する場合、派遣先の企業で従事する業務が技術人文知識国際業務に該当しているか否か、が審査されます。

 一方で、技術人文知識国際業務ビザを申請する外国人と雇用契約を締結するのは、派遣元の企業であり、実際に働く派遣先企業ではありません。よって、技術人文知識国際業務ビザ申請においては、所属機関(会社)に関する資料を提出しますが、提出すべき必要書類は派遣元に関する書類となります。

2,契約には派遣契約も含まれますか?

 入管法別表第1の2の表の下欄は、技術人文知識国際業務ビザで認められている活動内容を規定しています。当該規定は「本邦の公私の機関との「契約」に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」を技術人文知識国際業務ビザで認めています。よって、現業労働や単純労働は含まないと考えられます。

 上記入管の規定にある「契約」の代表例は雇用契約ですが、派遣契約も含まれます。したがって、外国人を派遣契約で採用した場合でも、従事する仕事が技術人文知識国際業務に該当し、その他学歴要件など技術人文知識国際教務の許可要件を充足していれば、技術人文知識国際業務ビザを取得するとは可能です。

3,派遣社員の場合、雇用契約書について注意すべき点は何でしょうか?

 技術人文知識国際業務ビザの申請では、雇用契約書の写しを必要書類として提出する必要があります。派遣社員で外国人を採用する場合も当然に雇用契約を提出する必要がありますが、正社員で外国人を雇用する場合と比較して、雇用契約書の内容に注意を払う必要があります。

 派遣社員で外国人を雇用する場合の雇用契約で注意すべき点は、「雇用期間」と「派遣先企業での業務内容」の記載の2点です。

(1)雇用期間

 雇用契約は継続性が認められる契約であることが必要です。半年にも至らない期間の短期派遣契約では不許可となる可能性は高くなります。短期派遣契約で申請する場合は自動更新条項を契約書に規定するなどの方法で、契約の継続性が認められる必要があると思います。

(2)派遣先企業での業務内容

 雇用契約に記載すべき業務内容について、派遣先企業で従事する予定の職務内容を詳細に記載するとともに、派遣先企業の名称・住所・電話番号を記載してください。技術人文知識国際業務ビザで申請する以上、記載すべき業務内容は技術人文知識国際業務に該当した業務であることが必要となります。雇用契約書に記載した業務内容と、派遣先で実際に従事する業務は必ず一致する必要があります。例えば、雇用契約書には通訳と記載して通訳等の業務でビザ申請し、実際には派遣先の工場で現場作業を行っていた場合は、虚偽申請となります。この場合は、不正取得罪、不法就労罪、不法就労助長罪の構成要件に該当し、逮捕・処罰される危険性があります。したがって、雇用契約書記載の業務内容と、派遣先で実際に従事する業務は必ず一致させて下さい。

4,派遣社員の場合、審査対象はどうなりますか?

 正社員で技術人文知識国際業務ビザを申請した場合、審査の対象となるのは申請人と申請人を採用した企業となります。これに対し、派遣社員で技術人文知識国際業務ビザを申請した場合、審査の対象となるのは申請人と派遣元企業並びに派遣先企業となります。所属機関には事業の適正性が許可要件として要求されていますので、事業に必要な許認可を受けていることが必要となります。したがって、派遣元企業は人材派遣業の許可を取得していることが前提となります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/
  代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法