飲食店向け|技能ビザで外国人料理人を雇う場合の注意点と実務チェックリスト
概要
在留資格「技能」は、日本で専門性の高い技術を持つ外国人が働くための在留資格です。特に「外国料理の調理師(外国料理専門シェフ)」はこの資格での代表的な雇用対象ですが、企業側には多くの注意点があります。本記事では、法律・ビザ要件、雇用契約・労務管理、コンプライアンス、実務上の注意まで詳しく解説します。
目次
1|在留資格「技能」とは?(基礎知識)
在留資格「技能」の定義
在留資格「技能」は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行われる産業上の特殊分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」です。
該当職種として、**外国料理の調理師(シェフ)**のほか、スポーツ指導者・航空機操縦士・特殊技能職人などが含まれます。
外国料理シェフとしての要件
主に外国料理専門のシェフが対象ですが、その料理が「外国で考案され、日本では特殊とされる調理技術」である必要があります。例として中華・フレンチ・スペイン料理などがあります。
2|技能ビザで外国人料理人を雇用する際の主な注意点
以下は、企業が押さえておくべきポイントです。
① 法務要件・審査基準
専門性のある料理であること
単に「飲食店で料理人を雇う」だけでは不十分です。「熟練した技能を要する外国料理」であることが審査で重視されます。単純調理や日本でも一般的な業務は技能ビザの対象外となる可能性があります。
例: ラーメン、カレーなど、日本国内でも一般的な料理は対象外とされる。
経験要件(実務経験年数)
原則として10年以上の関連実務経験が必要で、教育機関での学習時間も含めて評価されます。タイ料理のみEPAにより5年以上で認められる特例があります。
報酬の基準
給与は「日本人が同等業務をする場合と同等以上の報酬」でなければなりません。過度な低賃金雇用は審査不許可のリスクになります。
② ビザ申請・実務書類の準備
在留資格認定証明書(COE)の手配
外国人を海外から呼ぶ場合、まず「在留資格認定証明書(COE)」が必要です。これは会社側が地方出入国在留管理局に申請します。
提出書類の整理
必要書類は多岐にわたり、実務経験の証明、雇用契約書、日本国内での業務内容が詳細にわかる資料などが必要です。不備があると審査遅延や不許可リスクが高まります。
社側の事業内容証明
地方出入国在留管理局には、会社の事業内容や財務状況などを証明する資料が求められる場合があります。特に中小企業や新規事業の場合は丁寧な説明が必要です。
③ 雇用契約と労務管理
適切な雇用契約書
外国人料理人には、労働条件や就労範囲が明記された雇用契約書が必須です。業務内容がビザの許可範囲に合致しているか明確に記載しましょう。
雇用条件の継続監査
在留カードの有効期限管理、給与明細、社会保険の加入手続きなど、日本人社員と同様の労務管理を行います。雇用形態が不適切だと、行政指導や罰則対象になる可能性があります。
就労業務の限定
技能ビザで許可された「調理技能」以外の単純作業(ホール業務、皿洗い等)は主たる業務として認められないケースが多いです。これが理由で在留資格取消しとなる事例も報告されています。
④ コンプライアンス(労働法・出入国法)
労働法令の遵守
労働基準法、最低賃金、時間外労働、休暇制度など、日本の労働法令は全て適用されます。外国人であるからといって特別扱いはできません。
出入国在留管理庁への届出義務
外国人を採用・離職させる際には、適切な届出を行います。虚偽の届け出や届出漏れは罰則対象になる場合があります。
3|技能ビザ雇用でよくあるトラブルと対策
ケース①:職務内容が許可範囲外になった
例: ベトナム料理シェフが漢堡店での一般ホール業務に配属→在留資格取消し。
対策: ビザ許可された業務範囲外の仕事はさせず、業務内容を常に確認する。
ケース②:申請書類の不備・経験証明不足
対策: 経験証明(長年の勤務証明書・推薦状・実績写真など)を詳細に準備。専門の行政書士に相談することも有効です。
4|外国人料理人雇用におけるQ&A
Q1|技能ビザで外国料理店の経営はできますか?
✖ いいえ。調理人として雇用する在留資格であり、営業経営は「経営管理ビザ」が必要です。
Q2|日本語能力は必要ですか?
必須要件ではありませんが、日常的なコミュニケーション能力は職場での安全・品質管理上重要です。
Q3|技能ビザで家族帯同できますか?
原則可能です(在留期間等により異なります)。
Q4|技能→永住権取得は可能ですか?
可能ですが、永住要件として長期間の在留や安定収入・納税等の条件が別途必要です。
5|まとめとおすすめ対応
・ 必須確認: 外国料理が「特殊技能」と認められるか(審査基準)
・ 実務準備: 丁寧な実務証明書類の作成
・ 労務管理: 労働契約・法律遵守
・ 継続コンプライアンス: 在留カード管理と業務範囲の遵守
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参考リンク
![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |
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