帰化申請の税金支払いに関する審査対象の範囲は同居の家族も含まれる?
— 国籍取得の可否を左右する「納税状況」の実務ポイントを専門家が徹底解説 —
目次
1. 帰化申請における「納税状況の審査」とは
帰化申請は、日本国籍を取得する手続きであり、
「素行善良要件」 と 「生計要件」 の両方から、納税状況が厳格に確認されます。
帰化許可基準(法務省)では、申請者が法律を遵守し、社会生活上の義務を果たしているかがチェックされます。
納税はその代表的な判断基準であり、以下の内容が重視されます。
審査のポイント
- 所得税・住民税の納付状況
- 国民健康保険料の納付状況
- 国民年金の加入・納付状況
- 会社員の場合:社会保険料が給与天引きされているか
- 過去の滞納・分納の履歴
- 直近3〜5年間の継続的な納付の有無
2. 審査対象はどこまで?同居家族も含まれるのか
結論:
同居家族(生計を同一にする家族)の納税状況も審査対象になります。
なぜ同居家族が審査対象に含まれるのか?
帰化申請では「世帯単位」の生活状況が審査されるため、
本人だけでなく 同じ家計で生活している家族の納税状況も信用力の判断材料 となります。
特に影響するのは以下の家族:
審査に含まれる家族
- 配偶者
- 同居している子
- 同居している親
- 扶養家族
審査に含まれにくい家族
- 別居している親・子(別生計)
- 海外に住む家族
ただし、別居していても家計を支援している場合は例外として確認されることがあります。
3. 同居家族の税金未納がある場合の影響
基本的な考え方
同居家族の税金・社会保険料の未納は
帰化不許可の大きな理由になり得ます。
特に影響が大きいケース
- 配偶者が住民税を長期間滞納している
- 配偶者の国民年金未加入・未納がある
- 家族の国民健康保険料に滞納がある
- 納税証明書に「未納」または「未申告」がある
同居家族の納税は、家庭全体の「素行善良」や「経済的信頼性」の判断材料とされるため、
一家に1名でも滞納があると、原則は不許可のリスクが高い と考えてください。
4. 審査で特に重視される税金の種類
帰化審査は税金の中でも、以下を重視します。
1. 住民税(市県民税)
最も重要。未納・未申告は即アウト級。
2. 所得税(自営業者)
確定申告漏れ・過少申告は大幅マイナス。
3. 国民健康保険料
自営業・無職世帯のチェックが厳しい。
4. 国民年金
未加入・未納は近年特に重点確認されている。
5. 固定資産税
持ち家がある場合にチェックされる。
5. 年金(国民年金・厚生年金)の未加入・未納の扱い
年金は国の制度であり、加入義務があるため、
未加入・未納は税金と同じレベルで審査されます。
会社員の場合
- 厚生年金が給与天引き → 問題なし
- 自営業の配偶者が国民年金未加入 → 大きなマイナス
注意:年金は遡って加入できる?
- 未加入期間は遡って納付できません(法律上不可能)
- ただし「未納」期間は2年以内なら追納可能
※帰化申請前に2年間の未納を全て納付することが推奨されます。
6. 扶養家族や配偶者が無職の場合の扱い
配偶者や家族が無職の場合でも、
年金未加入・未納があると審査に影響します。
配偶者が無職 → 国民年金の加入義務あり
「収入がないから払わない」は認められず、
免除申請をしていなければ未納扱いになります。
国民年金の免除制度を使えばOK?
免除申請が適正に行われていれば問題ありません。
「免除=未納」ではないため、審査に悪影響はありません。
7. 納税状況を示すための提出書類
帰化申請では以下の書類が求められます(自治体により多少異なります)。
本人・同居家族 全員分
- 住民税課税(非課税)証明書
- 住民税納税証明書
- 国民健康保険料の納付証明
- 国民年金の加入記録・納付記録
- 所得税の確定申告書控え(自営業)
注意点
同居していれば全員分必要なため、
配偶者が納税証明書を出せない場合は、申請が進みません。
8. 過去に未納があった場合の対処方法
未納歴があっても、以下の対策を取れば申請可能です。
対処法1:すべて完納する
現時点で未納がある場合は、必ず完納してから申請する。
対処法2:納付計画書(分納)も要注意
分納中は「未納」と見なされ、不利です。
完納してから1〜2年経過後に申請する方が安全。
対処法3:年金免除制度を適用
免除済み期間は問題なし。
未納期間は2年以内なら追納できるため、追納が望ましい。
対処法4:証明書に「未納」が残っていないか確認
自治体で取得した証明書に未納表記があるとアウトの可能性。
9. 審査で不利になるケース・有利になるケース
不利になるケース
- 配偶者や家族に長期間の住民税未納がある
- 自営業で確定申告をしていない
- 国民年金に未加入期間がある
- 申告漏れ(副業・アルバイトなど)がある
- 分納中で完納していない
有利になるケース
- 3年以上連続で税金を期日通り納付している
- 年金もしっかり納付している(免除含む)
- 配偶者・同居家族の納税状況も完璧
- 社会保険加入・給与天引きが確実
- 自営業の場合、適切な帳簿・確定申告を継続している
10. よくあるQ&A
Q1:同居している家族の税金未納があります。申請できますか?
A:申請は可能ですが、原則不許可の可能性が極めて高いです。
完納後、1〜2年様子を見て申請することが推奨されます。
Q2:配偶者だけ住民税未納があります。私だけ申請すれば良い?
A:不可です。
世帯単位での審査のため、配偶者の未納も審査対象です。
Q3:家族が無収入なので年金に加入していません。問題ありますか?
A:問題あります。
国民年金は無収入でも加入義務があります。
免除申請をしていればマイナスではありません。
Q4:別居中の親の税金も審査されますか?
A:通常は審査されません。
同一生計でなければ対象外です。
Q5:過去の未納を追納すれば審査に通りますか?
A:追納はプラスになります。
ただし、直近で未納があると評価は低いため、1年程度の期間を空ける方が安全です。
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12. 参考リンク
13. まとめ
帰化申請における納税状況の審査は、
申請者本人だけでなく、同居家族の納税状況まで厳格にチェックされます。
特に重要なのは以下の点:
- 同居家族の税金未納でも不許可になり得る
- 住民税・国民年金・国保の未納は致命的
- 年金未加入は大幅に不利
- 未納がある場合は必ず完納+一定期間の経過が必要
帰化申請を成功させるためには、
世帯全員の納税・年金状況を整えることが必須条件 です。
納税や年金の状況で不安がある場合は、できる限り早めに対処し、
必要であれば専門家のサポートを活用することをおすすめします。
![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |
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