永住申請の特例:法律で定められた活動による日本への貢献とは?【3年在留で申請可能】


はじめに

日本に在留する外国人が 永住許可(永住ビザ) を申請する際、通常は 10年の在留実績 が要件になりますが、特別なケースではこの要件が 大幅に緩和される制度 があります。その一つが、 「法律で定められた一定の活動によって我が国への貢献があると認められる者」 に対する永住許可の特例です。

この記事では:

  1. この制度がどのような根拠・背景を持つか
  2. 特例に該当する活動(告示36号・37号)の内容
  3. 永住申請時の要件とポイント
  4. よくある Q&A(申請者が疑問をもつ点)

を、最新のガイドラインと制度を踏まえて詳しく解説します。


1. 背景と法的根拠

1.1 永住許可の基本制度

  • 日本の在留資格「永住者」(永住ビザ)は、入管法(出入国管理及び難民認定法)第22条に基づく制度です。
  • 永住許可を得るためには、主に以下の要件が求められます。
    • 素行善良要件(法令遵守、社会的に非難される行為がないこと)
    • 独立生計の要件(資産・技能が将来にわたって安定しており公共負担にならない)
    • 国益適合要件(永住が日本の利益に合致する、と認められること)
    • 在留実績(在留期間)(原則10年など)

1.2 特例としての「貢献者」の扱い

  • 法務省は 永住許可に関するガイドライン を公表しており、「我が国への貢献があると認められる者」に対して特例を設けています。
  • この特例には大きく二つがあり、短縮要件が異なります:
    1. 外交・経済・文化等の分野における貢献者 → 在留実績が原則 5年 に短縮。
    2. 法律で定められた一定の活動を行う者 → 条件を満たせば在留実績が 3年 に短縮される。
  • ガイドライン改訂(令和7年10月30日)でもこの制度は明記されており、永住許可の緩和措置として 特定活動告示36号・37号 の該当者に対して 3年在留要件を適用する趣旨が示されています。
  • また、地域再生法に基づき 地域再生計画 の区域内で活動する機関が行う特定活動であることが前提です。

2. 特定活動告示 36号・37号とは

「法律で定められた一定の活動」として永住許可の特例対象となる 特定活動告示36号および37号 ですが、それぞれの内容には以下のような特徴があります。

2.1 特定活動告示36号

  • 「特定研究等活動」 に該当。高度な専門知識を要する研究を行う外国人が対象。
  • 単なる短期滞在や学術目的の滞在ではなく、就労資格としての特定活動として認められているもの。
  • 実際には 地域再生法 に基づき認定された 地域再生計画 の区域内に所在する機関(公的・私的)で研究を行っている必要があります。これは、地域の振興や活性化を目的とした政策と連動しているためです。

2.2 特定活動告示37号

  • 「特定情報処理活動」 に対応。主に情報処理(IT・ソフトウェア開発等)分野で、高度なスキルを持つ外国人が対象。
  • 告示37号も 就労資格 に該当する特定活動とみなされており、在留更新などの運用ルールがあります。
  • 36号と同様、地域再生計画の区域内にある機関での活動が前提で、地域振興を通じた「国益適合性」が重視されます。

3. 永住申請における要件とポイント

特定活動36号・37号に該当する外国人が永住を申請する場合、通常よりも在留年数要件が厳格緩和されるとはいえ、審査は厳しく、高い基準が設けられています。

3.1 在留年数要件

  • 3年以上継続して在留:法律上、この特例を使うには指定の活動を 3年連続で日本国内で行っていること が必要です。
  • 継続性が重要で、活動の中断や長期の出国には注意が必要です。

3.2 その他永住許可の基本要件

特例による在留短縮があっても、他の許可要件は依然重要です:

  1. 素行善良
      - 犯罪歴や社会的非難行為がないこと。
  2. 独立生計
      - 所属機関からの報酬、契約、研究資金などが安定していること。
  3. 公的義務の履行
      - 納税、公的年金・医療保険の加入等も審査対象。改訂ガイドラインで明記されています。
  4. 国益適合性
      - 特定活動を通じた「貢献」が、日本の国益または地域再生で重要と評価されること。
  5. 身元保証(身元保証書)
      - 必要書類として、申請書・身元保証書・了解書など。
  6. 証明資料
      - 卒業証明書、在職証明書、給与・資金証明、研究実績の証明など。

3.3 特例のメリットとリスク

メリット

  • 在留年数が 3年 に短縮されるため、通常の10年に比べて永住申請までの道のりが大幅に短くなる。
  • 地域再生政策と結びついた活動であれば、地域社会や自治体からの支援・評価を得やすい。

リスク・注意点

  • 所属機関や活動内容が 地域再生計画 の要件を満たしているか厳しく審査される。
  • 活動が中断されたり、条件が外れたりした場合、永住申請が困難になる可能性あり。
  • 提出する書類や疎明資料(資金証明、活動実績など)を 丁寧に準備 する必要がある。
  • 永住許可は慎重審査の対象となり、必ずしも申請=許可ではない。

4. 実務的なステップ:申請の流れ

  1. 在留資格の確認
      現在、自分の在留資格が 特定活動(36号または37号) であるかをまず確認する。
  2. 3年以上の継続活動
      3年継続という要件をクリアできる見通しを立てる。
  3. 書類準備
      - 永住許可申請書
      - 理由書(貢献内容、今後のビジョンなど)
      - 身元保証書・了解書
      - 在職証明書、給与・資金証明、活動実績(研究論文、プロジェクト報告など)
      - 住民票、納税証明、保険証・年金保険料の納付記録など
  4. 申請
      所轄の地方出入国在留管理局に提出。
  5. 審査対応
      追加資料の提出、面談(必要に応じて)、不許可リスクに対する備え。
  6. 許可・不許可の連絡
      許可の場合は永住許可証交付、不許可の場合は理由確認・再申請検討。

5. Q&A(よくある質問)

Q1. この特例は誰でも使えますか?
A1. いいえ、この特例は 特定活動告示36号または37号 に該当する活動を、かつ 地域再生計画の区域内 にある機関で行っている外国人に限定されます。


Q2. 在留期間が「3年連続」とありますが、中断しても大丈夫ですか?
A2. 中断があると「継続性」を問われる可能性が高く、審査上リスクになります。できるだけ 活動の継続性を証明する 書類(在籍証明、契約書、活動報告など)を準備しておきましょう。


Q3. 所属機関(企業・研究所等)が地域再生計画に参加しているか確認するには?
A3. 所属機関に 地域再生法 に基づく認定があるかを確認します。具体的には、自治体や地域再生計画の公表資料、または機関自身に「その事業が計画区域内であるか」「地域再生計画に明示されているか」を問い合わせましょう。自治体の「地域再生政策課」や「地域振興部門」が情報を持っていることが多いです。


Q4. 永住申請が不許可になる主な理由は何ですか?
A4. 以下のような理由が考えられます:

  • 書類の不備や疎明資料の不足
  • 活動が「貢献」とみなされない(地域再生との関係性が弱いなど)
  • 所得または資金が不安定、または独立生計要件を満たしていない
  • 納税、年金、保険料の未納がある
  • 過去の素行に問題がある(犯罪歴など)

Q5. 永住が許可されたらどんなメリットがありますか?
A5. 永住ビザを取得すると、以下のような大きな利点があります:

  • 在留期限の制限がなくなる(更新不要、または非常に長期)
  • 就労ビザの制限がなくなる(職種・勤務先の制限がなくなる)
  • 公的サービスへのアクセスが安定する(住宅ローン、社会保障制度、子どもの教育などで有利)
  • 将来的な家族呼び寄せや継続居住がしやすくなる

7. 専門家からのアドバイス

  • 行政書士への相談:永住申請は書類準備・戦略立案が複雑なので、永住申請に実績のある行政書士や弁護士に相談するのが非常に有効。
  • ガイドライン精読:法務省の 永住許可に関するガイドライン(令和7年改訂版) を熟読し、自身の活動が特例の対象になるかどうかを正確に判断する。
  • 自治体との協力:地域再生計画との連携が鍵になるため、所属機関だけでなく自治体とも協働関係を築き、制度趣旨に合致した活動を行う。
  • 長期ビジョン設計:永住申請だけでなく、将来的なキャリア設計(研究・開発・地域貢献など)を見据え、申請書の「理由書」や活動報告に具体性を持たせる。

8. まとめ

  • 「法律で定められた一定の活動によって我が国への貢献があると認められる者」 は、永住許可において 3年在留要件 という大きな特例がある。
  • 対象となる活動は、地域再生計画の区域内で行われる 特定活動告示 36号(研究)または 37号(情報処理)
  • しかし、特例といえども 審査は厳格。継続性、資金・報酬、地域との関係性、証明資料などがすべて重要になる。
  • 成功には 専門家のサポート自治体との協働明確なビジョンと丁寧な書類作成 が鍵となる。

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      「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
    「記事監修」
    加納行政書士事務所
    運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

    代表
    特定行政書士 加納 裕之  
    「学歴」
     同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
     明治大学法科大学院修了
    「資格」
     行政書士(特定付記)、TOEIC805点
    「専門分野」
     入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法