中小企業でも技人国ビザは取れる?不許可を回避する実務ポイントを徹底解説
外国人採用で不許可を防ぐ実務ガイド
中小企業が外国人を採用する際、最も多く利用される在留資格が 技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国ビザ」) です。しかし、中小企業は人材要件を満たしていても、「会社側の体制」で不許可となるケースが少なくありません。
本記事では、入管実務に基づき 中小企業が技人国ビザを取得するために必ず注意すべきポイント を、専門家レベルで詳しく解説します。
目次
1.技人国ビザとは?
技術・人文知識・国際業務ビザ は、大学・専門学校の専攻と関連した業務に従事するための就労ビザで、次のような職種で利用されます。
- ITエンジニア
- 事務・総務・経理
- 営業・マーケティング
- 翻訳・通訳
- デザイナー
- 貿易・海外営業
現場作業(単純労働)は認められないため、採用時の職務内容の整理が非常に重要です。
2.中小企業が審査で不利になりやすい理由
入管は、応募者本人だけでなく 企業の経営・雇用環境 を厳しく確認します。
とくに中小企業で多い不利要素は以下の通りです。
中小企業が指摘されやすいポイント
- 決算書の赤字が続いている
- 社会保険未加入
- 実体の不明確な事務所
- 求人内容と実際の業務が曖昧
- 従業員規模が小さく「教育・管理体制」に不安
- 業務内容が単純労働と判断される
つまり、中小企業は 「企業の信頼性」や「業務内容の専門性」 を書類で丁寧に説明しないと、本人が優秀でも不許可になり得るということです。
3.中小企業が注意すべき10のポイント(最重要)
① 事業の継続性・安定性の説明が必須
赤字決算だから必ず不許可というわけではありませんが、
- 売上推移
- 事業計画書
- 契約書
を添付し、事業が継続することを説明する必要があります。
② 社会保険加入は100%必須
社会保険未加入の場合、ほぼ不許可になります。
加入していない会社は、まず整備が必要。
③ 専門性のある業務内容で申請する
単純労働(倉庫作業・接客メイン・レジ打ち)は技人国ビザの対象外です。
業務の 「専門性」「学歴・職歴との関連性」 を明確化する必要があります。
④ 実態のあるオフィスかどうか
自宅兼オフィス、シェアオフィスは許可率が下がりやすいので注意。
写真・賃貸契約書・図面の提出が求められます。
⑤ 適切な給与設定(最低でも日本人同等以上)
給与が低すぎると、
「本当に専門職として採用しているか?」
と疑われます。
目安として 月給22〜25万円以上 は必要です(業種により異なる)。
⑥ 会社規模が小さい場合は「採用理由書」が必須
従業員数が少ないほど、
「なぜ外国人が必要なのか?」
を説明しなければいけません。
例:海外クライアント対応、言語業務、IT技術など。
⑦ 求人票や面接記録を整備
入管は「採用の経緯」を重視します。
- 求人票
- 応募者の履歴書
- 面接記録
などを整備しておきましょう。
⑧ 雇用契約書の内容は専門職らしく明確に
特にチェックされる項目:
- 業務内容
- 勤務時間
- 給与
- 社会保険加入
- 職種名(総務、システムエンジニアなど)
⑨ 会社のWebサイトの整備
入管は 会社のHPを必ずチェック しています。
業務内容と申請内容が一致しているかが重要。
⑩ 提出書類に矛盾がないか
給与台帳・源泉徴収簿・決算書など、数字の矛盾があると不許可になります。
特に小規模企業は注意。
4.許可率を高める「会社側チェックリスト」
- 社会保険に加入している
- 会社のHPが整備されている
- 実態のある事務所を持っている
- 業務内容が単純作業になっていない
- 採用理由を明確に説明できる
- 決算が悪い場合は事業計画書を添付
- 雇用契約書の内容が専門職らしい
- 給与が日本人と同等以上である
5.技人国ビザの必要書類(企業側・本人側)
企業側書類
- 雇用契約書
- 登記事項証明書
- 会社案内(HPでも可)
- 決算書(直近1〜2期)
- 事業計画書(必要に応じて)
- 社会保険加入証明書
- 源泉徴収簿
- 仕事内容説明書
- 採用理由書
本人側書類
- 卒業証明書/成績証明書
- 履歴書
- 職務経歴書
- パスポート・在留カード(在留者の場合)
6.中小企業でよくある不許可理由と対策
| 不許可理由 | 対策 |
|---|---|
| 業務内容に専門性がない | 業務説明書を詳細に作成し関連性を示す |
| 経営状態が不安定 | 契約書や受注見込みを提出 |
| 社会保険未加入 | 加入後に申請 |
| 給与が低い | 日本人同等以上に設定 |
| 事務所実態が不明 | 写真・契約書・レイアウトを提出 |
| 採用理由が弱い | 外国人が必要な理由を文書化 |
7.採用から申請までの流れ(中小企業向け)
- 仕事内容を明確化する
- 学歴・職歴との関連性を確認
- 雇用契約書作成
- 必要書類を収集
- 在留資格認定証明書(COE)申請
- 許可後、海外の本人がビザ申請
- 来日・入社
8.【Q&A】技人国ビザに関するよくある質問
Q1.赤字会社でも技人国ビザは取れますか?
取得可能です。
ただし、継続性・安定性の説明資料(事業計画書・受注資料)が必須です。
Q2.従業員3名の小さな会社でも許可されますか?
可能です。
ただし、採用理由や教育体制を丁寧に説明する必要があります。
Q3.専門学校卒でもビザは取れますか?
可能です。
専攻と業務内容が一致していることが条件です。
Q4.翻訳や通訳は技人国ビザの対象ですか?
対象です。
国際業務に該当し、学歴要件も緩やかです。
Q5.給与はいくら必要ですか?
原則、日本人と同等以上。
目安として 月22万円〜 と考える企業が多いです。
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10. 参考リンク
まとめ
中小企業が技人国ビザを取得する際は、
「本人の要件」よりも「会社側の体制」 が審査で大きな影響を与えます。
- 社会保険加入
- 業務内容の専門性
- 採用理由の明確化
- 給与設定
- 経営の安定性を示す資料
これらをしっかり準備すれば、中小企業でも十分に許可されます。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |

