短期滞在で一緒に帰国して日本で生活を始めたい夫婦へ|配偶者ビザ申請の注意点まとめ


目次

はじめに

海外在住の日本人配偶者と外国人配偶者のご夫婦が、「一緒に帰国して日本で暮らしたい」「まず短期滞在ビザ(観光・親族訪問)で帰国して、その場で配偶者ビザを申請できるか?」というご相談をよく伺います。この記事では、こういったケースがどこまで可能か、注意すべき点、実務上のリスク、そして代替手段までを詳しく解説します。


1. 法制度の整理:まず「日本人の配偶者等」ビザとは

まず、在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる「配偶者ビザ」)の制度を整理します。

  • この在留資格は、「外国人(申請人)が日本人の配偶者(夫または妻)である場合」に該当します。
  • 在留期間は、6月、1年、3年、5年などがあります。
  • 申請に際しては、婚姻が法律上有効に成立しており、また信頼できる婚姻関係と日本での生活基盤があることが求められます。
  • 外国に住んでいる場合でも、海外から申請をして日本に移住するか、日本に一時帰国して申請をする方法があります。

このビザを取得すれば、日本で就労も可能であり、長期滞在・同居を目的とした制度設計です。


2. 短期滞在ビザ(「短期滞在」の在留資格)制度概要

次に、短期滞在ビザ(在留資格「短期滞在」)について整理します。

  • 「短期滞在」は、観光、親族・知人訪問、出張、会議等を目的として、最長90日以内の滞在を前提とする在留資格です。
  • この在留資格は、就労や長期滞在を目的とはしておらず、短期間の滞在を前提としています。
  • このため、短期滞在で入国した外国人が滞在中に「長期在留ビザ」に切り替えることは、制度上ハードルが高く、原則認められていません。

理解すべきポイントとして、「入国目的と滞在内容が異なると判断されると、不許可・却下のリスクがある」という点があります。


3. 原則として「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への変更・申請不可の理由

では、なぜ「短期滞在」から「配偶者ビザ」への変更・申請が原則認められないのでしょうか。制度的・実務的な理由を整理します。

3-1 法令上の根拠

  • 出入国在留管理庁(入管)が運用するところ、入管法第20条3項ただし書きには以下の趣旨が明記されています: 「短期滞在」の在留資格をもって在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。
  • したがって「短期滞在からの在留資格変更(長期在留目的)は原則として認められません」。

3-2 実務的な理由

  • 短期滞在で入国したという事実(観光・親族訪問等)を前提としているにもかかわらず、実際には「配偶者ビザを取得して長期滞在・就労を目的」としていたと判断されると、入管は入国時の申告と実態が異なるとみなします。
  • 短期滞在の在留期間が比較的短く、審査期間中に結果が出ない、在留期限を越えて滞在せざるを得ない、といったリスクがあります。実務上「90日」の滞在がなんとか目安とされるケースもあります。
  • また、申請手続きや書類審査において「信頼できる婚姻」「日本での生活基盤」「収入・住居等の実態」が重視されるため、短期間入国してから急に手続きをするとなると「準備不足」とみなされる可能性があります。

以上の理由から、短期滞在からの変更・申請は「例外的にしか認められない」ことを念頭に置く必要があります。


4. 例外的なケース:短期滞在から配偶者ビザへの変更が認められる「やむを得ない特別な事情」

それでも、全く不可能というわけではありません。例外として認められるケースがありますので、その内容とポイントを整理します。

4-1 「やむを得ない特別な事情」が鍵

  • 「短期滞在から配偶者ビザへの変更許可申請が受理されたケースもある」「やむを得ない事情がある場合には例外的に認められる」場合もあります。
  • 「やむを得ない事情」とは、例えば出産・病気・急な親族の介護など、人道的・必要性がある状況が想定されています。

4-2 短期滞在から変更を申請する際の実務要件

  • 短期滞在が 90日 程度であること。15日・30日では審査の期間が足りず、変更許可申請が受理されないケースが多いです。
  • 来日後すぐに申請準備・手続きを行い、在留期限を超えない範囲で処理を終えられる見込みがあること。
  • 入国目的・滞在内容・婚姻実態・日本での生活基盤など、一貫性・信頼性が示せること。
  • 変更申請を出しても許可が下りないリスクを理解しておくこと。許可が下りなければ、滞在目的に合わないまま不法滞在のリスクも出てきます。

4-3 海外在住夫婦の帰国に際しての適用可否

海外在住のご夫婦が一緒に日本に帰国してから配偶者ビザを申請する場合、上記の例外的な変更申請に該当する可能性がありますが、下記のような点で慎重な対応が必要です。

  • 入国目的を「短期滞在(観光・親族訪問)」等で申請・入国している場合、実際には「日本での同居・長期滞在目的」であると入管が判断すると不可となる可能性が高まります。
  • 一緒に帰国した際、日本での住居確保・生活基盤・収入・婚姻実態などをしっかり説明できる書類があれば却下リスクを下げられます。
  • 万が一、変更が認められない場合には、帰国から再び出国し、海外から通常の「在留資格認定証明書交付申請」をして改めて配偶者ビザを取得するルートに切り替えることも検討すべきです。

5. 海外在住夫婦が一緒に帰国して配偶者ビザ申請を検討する際の実務ポイント

この章では、実務の流れ・注意点・準備資料などを整理します。海外在住、かつご夫婦で一緒に帰国して申請というケースに特化しています。

5-1 検討すべき2つの申請ルート

海外在住のご夫婦が「まず日本に一緒に入国してから手続きを始めたい」と考える場合、主に以下2ルートが考えられます。

ルート概要長所短所
A:短期滞在で入国 → 日本国内で「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への変更申請短期滞在ビザ(90日)で帰国し、その滞在中に入管で変更申請を行う。夫婦一緒に帰国できる・すぐ日本に入れる可能性がある原則不可・拒否リスクが高い・審査期間が滞在期間を超える可能性あり
B:海外から通常ルートで「在留資格認定証明書交付申請」 → 外国人配偶者がビザ取得して来日海外にて申請・許可を得て、外国人配偶者がビザを持って来日。日本人配偶者は日本から受け入れ手続きをする。 原則的に制度通り・リスクが低い夫婦が離れた状態になる期間あり・手続き・時間がかかる

実務上は Bルートが安全で確実 だと言われていますが、時間的・精神的理由から Aルートを検討するご夫婦もいます。短期帰国を希望する場合はAルートの注意点を十分理解した上で準備を進めるべきです。

5-2 Aルートを選ぶ場合の具体的な準備・注意事項

(1) 短期滞在ビザをどのように取得するか

  • 短期滞在ビザを申請する際、入国目的は「親族訪問」「知人訪問」「観光」など、長期滞在を前提としないものとして申請する必要があります。
  • 滞在期間は 90日以内 が望ましく、30日・15日など短期間では変更申請が認められる可能性がさらに低くなります。
  • 招へい理由書、身元保証書、滞在予定表など提出書類も慎重に作成しましょう(短期滞在ビザ申請用)

(2) 入国後速やかに準備を整える

  • 入国したら、すぐに必要書類(婚姻証明、日本人配偶者の住居・収入証明、外国人配偶者の出入国記録等)を準備し、申請できる体制を整えておく。
  • 在留資格変更許可申請を出す場合、審査期間は数週間から数か月かかることもあり、滞在期限(短期滞在期間)を過ぎてしまうと滞在資格を失うリスクがあります。
  • 入国目的と実態の整合性が問われるため、「観光・親族訪問」として入国しながら「生活・同居目的」に変換するというストーリーが入管に納得される必要があります。やむを得ない事情であることを示す資料があると有利です。

(3) やむを得ない事情の有無を検討

  • 出産・急病・親族介護など、帰国・同居を早期にしなければならない明確な事情がある場合、例外として変更が認められた実例があります。
  • ただし「できれば早く一緒に帰国したいから」というだけでは、事情として十分とは認められない可能性が高いです。

(4) 代替案を準備しておく

  • もし変更許可が下りなかった場合、滞在期限切れ・不法滞在のリスクを避けるため、あらかじめ海外に戻る予定を立てておくなどのバックアッププランが必要です。
  • また、帰国後すぐに「在留資格認定証明書交付申請」を行い、いったん出国してから外国人配偶者がビザ取得後に来日する方法(Bルート)に切り替える選択肢も検討しておきましょう。

5-3 日本人配偶者側の準備・留意点

  • 日本人配偶者は、安定した収入があり、納税・住民票があることが望ましいです。入管では、外国人配偶者が日本で長期に生活できる基盤があるかを重視します。
  • 日本国内での住居確保、生活費の裏付け、婚姻実態の証明(婚姻届の提出、交際からの経緯)なども整えておく必要があります。
  • 海外在住から日本に帰国後すぐ生活をスタートする場合、引越・住民登録・銀行口座開設などスムーズな手続きを考えておくと信頼性が上がります。

5-4 手続きフロー(Aルート想定)

  1. 日本人配偶者・外国人配偶者が一緒に帰国(短期滞在ビザまたは査証免除国ならノービザ)
  2. 日本入国・滞在(90日以内が望ましい)
  3. 日本人配偶者が住居・収入・生活基盤を整える
  4. 外国人配偶者(またはご夫婦)で、管轄の地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請(短期滞在→日本人の配偶者等)」を提出
  5. 審査 ※許可が下りるか否かは「やむを得ない事情」・資料・整合性次第
    6a. 許可されれば在留カード交付・配偶者ビザスタート
    6b. 不許可なら、滞在期間を越えないように出国し、海外から正規申請(在留資格認定証明書交付申請)に切り替え

5-5 リスクとその回避策

  • リスク①:変更申請が却下される → 滞在目的が変更目的と整合しないと判断される。
    回避策:入国目的・滞在予定表・生活基盤等を丁寧に示す。
  • リスク②:滞在期間(短期滞在)を越えてしまう → オーバーステイ/在留資格喪失の恐れ。
    回避策:審査が長引く可能性を見込んで、90日以内滞在を守る。代替案(Bルート)も視野に。
  • リスク③:就労・活動制限 → 変更許可が下りるまで就労不可。配偶者ビザ取得前に就労すると違法となる可能性。
    回避策:許可下りるまで活動制限を守る。
  • リスク④:将来の永住・帰化に影響 → 入国回数・在留期間等の履歴が将来的な審査に影響する可能性あり。
    回避策:帰国・出国の記録を整備し、長期出国を避ける。

6. よくあるQ&A形式での確認

ここでは、海 外在住ご夫婦が短期滞在で帰国し配偶者ビザ申請を検討する際によく頂く質問とその回答を整理します。

Q1:海外在住で、まず日本に帰国して一緒に暮らしたい。短期滞在ビザで入国して配偶者ビザに申請できますか?

A1: 原則として難しいです。短期滞在から「日本人の配偶者等」への在留資格変更は、法律・運用上「やむを得ない特別な事情」がある場合に例外的に許可されるのみです。
ただし、例外的に許可された実例もあり、準備を十分に整えたうえでチャレンジは可能です。

Q2:申請をするために、短期滞在ビザの種類・期間に条件はありますか?

A2: はい。実務的には「90日程度の短期滞在」が変更申請を受理される目安となっています。15日・30日しか許可されていない場合、審査期間を考慮すると変更申請が受理されないことが多いです。

Q3:もし申請が却下された場合、どうすればいいですか?

A3: 申請却下後も滞在期限を守った上で、海外に一旦出国し、通常ルート(在留資格認定証明書交付申請)から改めて配偶者ビザを申請することが現実的な代替策です。

Q4:日本人配偶者が海外在住ですが、それでも短期滞在で一緒に帰国して申請できますか?

A4: 海外在住であっても方法としては可能なケースがありますが、入管が「日本に居住している」「日本で生活基盤がある」と判断できることが重要です。配偶者が海外在住の場合、申請側・受入れ側双方の説明・資料がより慎重に求められる傾向にあります。

Q5:短期滞在で入国して申請中に在留期限が切れそうですが、大丈夫でしょうか?

A5: 在留期限を過ぎてそのまま滞在してしまうと、オーバーステイとなり非常に大きなリスクです。申請を出すタイミング・審査期間・滞在期限をきちんと見通しておくことが欠かせません。極力、許可が出る見込みが立ってから動くか、代替案を構えておくことをお勧めします。


7. まとめ・おすすめの進め方

海外在住ご夫婦が短期滞在ビザで帰国して配偶者ビザを申請することは「可能性ゼロではない」が、「原則として認められていない」ルートです。以下のように整理すると良いでしょう。

  • 安全・確実を重視するなら: 海外から通常ルート(在留資格認定証明書交付申請)で配偶者ビザを申請 → 外国人配偶者がビザを取得して来日。
  • 「すぐに一緒に帰国したい」「時間・離別がネック」という事情があるなら: 短期滞在で入国 → その滞在中に変更申請を検討。ただし、例外的な事情を整え、リスクを理解し、代替案も用意しておく。
  • 日本人配偶者側の収入・住居・生活基盤整備、婚姻実態・書類整備を丁寧に行う。
  • 入国目的・滞在目的・申請時期・滞在期限などを入管に疑義を持たれないよう整合性を保つ。

非常に慎重な対応が求められる手続きです。専門家(行政書士)への相談を強くお勧めします。


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  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法