コンビニで働ける就労ビザはあるのか?—外国人就労者向け完全ガイド
目次
1. はじめに
日本で外国人として就労する際、「ビザ(在留資格)」の取得・変更・更新は極めて重要です。単に「働きたい仕事を見つけた」というだけでは、適切な在留資格を取得できず、在留資格違反となるリスクもあります。
とりわけ、身近な就労の場として人気のある“コンビニ勤務”ですが、果たして「コンビニで働くための就労ビザ」はあるのでしょうか?
本記事では、法律・行政実務・採用側の実態を整理し、「コンビニで働ける就労ビザの可能性」と「そのために知っておくべきポイント」を解説します。
2. コンビニ勤務と在留資格(ビザ)制度の理解
在留資格とは
日本では、外国人が就労・在留を行うためには「在留資格(Status of Residence)」を取得し、それに応じた活動を行わなければなりません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などがあります。
コンビニ勤務という仕事の特徴
コンビニエンスストア(以下「コンビニ」)の勤務では、店舗接客、レジ打ち、商品補充、清掃、夜勤対応など“比較的簡易・非専門”な作業が中心となることが多いです。
そのため「専門的・技術的知識・高度な技能」を条件とする在留資格とのマッチングにギャップが生じるケースがあります。実務的には、以下のような指摘があります。
- 「コンビニの顧客応対」は、いわゆる“専門的知識・技術”とは言い難いという見解。
- 採用情報としても「ビザ変更支援あり」など「在留資格が既に就労可能なもの限定」という記載があります。
3. 「一般の就労ビザ」と「コンビニ勤務」のギャップ
一般的な就労系在留資格の概要
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、外国人が「専門的な知識・技術・国際性を有し、それを用いて業務に従事する」ことが求められます。
また、一般的な“就労ビザ”と言える在留資格申請では、「大学卒以上」「相当の職務経験」「仕事内容が在留資格の範囲内であること」「日本人と同等以上の給与」などが要求される場合があります。
コンビニ勤務が就労ビザに適さない理由
上記を踏まると、コンビニ勤務(レジ・補充・清掃・簡易接客など)は以下の点で“就労ビザ”として認められにくいとされています。
- 専門性・技術・知識が明確に定義されておらず、「単純労働」に近いと判断されることが多い。
- 求められる資格・経験が少ないことが多いため、在留資格変更の審査上、要件を満たしていないと見なされるケースがあります。
- 採用側でも「在留資格を既に就労可能なものに限る」「ビザ変更不可」と明示されているケースがあります。
結果として、「コンビニ勤務で新たに就労ビザ(在留資格)を取得」することは、非常にハードルが高いと言えるでしょう。
4. 例外的な在留資格・可能性があるケース
ただし、完全に「コンビニ勤務では就労ビザ取得はできない」と断言できるわけではなく、次のような例外・可能性があります。
(1) 既に就労可能な在留資格を持っている場合
例えば、以下のような在留資格を既に持っている外国人であれば、コンビニ勤務をすることが可能です。
- 「日本人の配偶者等」「永住者」「定住者」など、就労制限がない在留資格。
- 学生ビザ・家族滞在ビザ等で「資格外活動許可(アルバイト等)」を受けている場合。たとえば学生であれば「1週間28時間以内(長期休暇は1日8時間まで)」。
この場合、就労ビザを新たに取得するわけではなく、既存の在留資格の範囲内で働く形です。
(2) 管理・複数店舗管理・高度な業務を伴う場合
実務として、「ただレジを打つ」「商品を補充する」といった勤務では難しいですが、例えば以下のようなケースでは可能性が検討されることがあります。
- 企業本部/フランチャイズ本部が、複数店舗を統括・マネジメントするポジションとして採用する。つまり「店舗運営管理」「人材教育」「品質管理」など高度な業務を含む。実際、ある行政書士ブログでは「店舗の “顧客サービス係” では在留資格認められにくいが、複数店舗管理・本社業務に転換される形なら可能性が高い」と指摘されています。
(3) 例外的な「資格外活動」制度
「学生」の在留資格などで、「資格外活動許可」を受けてアルバイトを行うという形で、コンビニで働くことは可能です。ただしこれは「就労ビザを取得」して働くという形ではなく、あくまでも在留資格が別にあって、その中の活動として許可されているという注意が必要です。
5. 外国人がコンビニ勤務をする上での法律・運用上のポイント
在留資格違反のリスク
不適切な在留資格・許可なしに就労した場合、在留資格違反となり、最悪の場合「強制退去」「再入国拒否」の対象となる可能性があります。
たとえば、「単純労働」の範疇と判断されるコンビニ勤務を、専門職向けの在留資格で行うことは非常にリスクが高いです。
雇用側の注意点
コンビニ運営の視点から、外国人を採用する際には以下の事項が重要です。
- 採用予定の外国人が「就労可能な在留資格」を既に持っているか、または「就労許可(資格外活動)」を受けているかを必ず確認する。
- 在留資格を変更または取得しなければならない場合、審査に時間がかかることを見込む。
- 求人広告で「在留資格変更支援あり」「ビザサポートあり」と記載があっても、実際には審査要件を満たさないケースも多いため、専門家(行政書士)による事前確認が望ましい。
- 就労内容が「専門性のある業務」に該当しているかどうか(例えば店舗マネジャー・複数店舗統括・本部業務)など、仕事内容の明細を整理する。
6. 企業・店舗側が採用時に注意すべき点
採用・在留資格確認の流れ
- 勤務希望の外国人が在留カードを提示し、「就労可能な在留資格」か、あるいは「資格外活動許可」かを確認。
- 求人票・雇用契約書に仕事内容・就業時間・給与等を明記し、「在留資格の範囲内の業務であるか」を検討。
- もし「在留資格の変更」が必要な場合、専門家と相談しながら「申請書類」「雇用契約」「業務説明書」「給与体系」などの整備。
- 雇用開始後も、在留資格範囲外の業務を行っていないか(例:単純労働以外の専門業務を行う・反対に専門的業務なのに在留資格が単純労働用など)を継続して確認。
採用後フォロー・リスク削減
- 日本語教育・業務マニュアルの整備:外国人スタッフが業務に慣れるようフォロー体制を構築。
- 夜勤・早朝・休日時の勤務という特性から、健康・安全面の配慮。
- 在留資格更新時・変更時のサポート:在留期限・職務内容が変わる際には、店舗側も状況を把握し、必要に応じ行政書士等の協力を得る。
- 求人広告の表現に注意:「ビザサポートあり」などの表記だけで安心せず、実際に在留資格変更可能かどうかを慎重に判断。
7. まとめ:コンビニ勤務で就労ビザを取るための道筋
- 結論として、「コンビニ勤務=一般的な就労ビザ(専門職系)を取得して働く」ことは、非常に難しいです。多くの場合「単純労働」に該当すると判断されるためです。
- しかしながら、以下のような道筋・可能性はあります:
- 既に就労可能な在留資格(配偶者等・永住者・定住者など)を持っており、コンビニ勤務を行う。
- 企業側が「マネジメント業務」「複数店舗統括」「本部業務など専門性を伴う業務」に位置づけ、その在留資格を得る。
- 学生等が「資格外活動許可(アルバイト)」の範囲内で、コンビニでアルバイトを行う。
- 就労ビザの取得(在留資格の変更・新規申請)を目指すには、仕事内容・求人条件・給与・勤務時間・日本語能力などを含めて慎重な準備が必要であり、専門の行政書士等に相談することが望ましいです。
- 求人側・応募者側双方が在留資格の条件を理解し、適切な体制を整えることが、トラブル回避・安心就労の鍵となります。
8. Q&A よくある質問
Q1. 「コンビニの店員」で在留資格を変更できますか?
A1. 原則として「就労ビザ(専門職系)=コンビニ店員」のような単純労働を目的とした変更は難しいです。参考に「仕事として不適格」とされる例として「コンビニ店員・清掃員・配達ドライバー」が挙げられています。
ただし、上記「既に就労可能な在留資格を持っている」「マネジメント職・複数店舗管理等の専門性を伴う業務である」といった例外的なケースもあります。
Q2. 学生でもコンビニで働けますか?
A2. はい、学生ビザ(「留学」など)を持っている場合、「資格外活動許可」を得て「週28時間以内」でアルバイトとして勤務することが法令上認められています。
ただし、これは「アルバイト」であり、「新たに就労ビザを取得して正社員として働く」という意味ではありません。
Q3. 「ビザサポートあり」と書いてある求人であれば安心ですか?
A3. 求人に「ビザサポートあり」「就労可能な在留資格支援」という文言がある場合もありますが、必ずしも在留資格変更が確実に許可されるわけではありません。仕事内容・雇用条件・在留資格適合性などが審査されるため、求人企業が専門家に相談しているか・実績があるかを確認すると安心です。
Q4. 採用側の店舗にとって外国人を雇うリスクはありますか?
A4. はい、下記のようなリスクがあります:
- 在留資格違反になった場合、採用側に監督義務違反等の責任が生じる可能性。
- 応募者の在留資格が就労不可・変更不可だった場合、契約的・法的トラブルとなる可能性。
採用前に「在留資格確認」「雇用契約書・就業内容の整備」が重要です。
Q5. 今後、コンビニ勤務でも就労ビザが取得しやすくなりますか?
A5. 現時点では、矛盾する報道もありますが、少子高齢化・労働力不足の観点から外国人労働者の受け入れ拡大の議論はあります。例えば「特定技能」制度で16分野への拡大が進んでいます。
ただし、「コンビニでのレジ・補充業務」が明確に就労ビザ対象になるという法令改正・運用変更が公式に発表されているわけではないため、現時点では“可能性があるが確実ではない”という状況です。
最後に
「コンビニで働く」という身近な目標であっても、外国人が日本で安定的に就労するためには「自身の在留資格・勤務地・雇用条件」が適法かどうかを丁寧に確認することが不可欠です。
もし「新たに就労ビザを取得してコンビニで働きたい」「採用側として外国人をコンビニで雇用したい」とお考えの場合は、専門家による個別相談を強くお勧めします。
本記事が、外国人就労・採用を検討されている皆様の理解を深める一助となれば幸いです。
ご不明な点があれば、どうぞお気軽にご質問ください。
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参考リンク
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |

