経営管理ビザに業種の制限はあるのか?|外国人起業・投資家向け完全ガイド
目次
1. はじめに
外国人が日本で会社を設立したり、既存企業の経営を担うために必要な在留資格が「経営・管理(いわゆる“経営管理ビザ”)」です。
この在留資格を取得する際、最も多く寄せられる質問は次の通りです。
- 「どの業種でも申請できるのか?」
- 「飲食業やオンラインビジネスは対象になるのか?」
- 「風俗・特殊業種は認められるのか?」
結論として、制度上は業種の制限はありません。ただし、実務上は業種ごとに注意点や許認可要件があり、申請書類に反映できる事業計画・運営体制が求められます。
本記事では、経営管理ビザの業種制限の有無を中心に、申請時のポイント、業種ごとの注意点、Q&Aまで丁寧に解説します。
2. 経営管理ビザの業種制限に関する制度的背景
2-1. 法令上の原則
法務省・出入国在留管理庁(以下「入管庁」)の公的資料では、経営・管理ビザの申請にあたり「業種の限定はない」と明記されています。
「日本国内で適法に行われる事業であれば、業種・業態の制限はありません」
(参考:出入国在留管理庁『在留資格「経営・管理」』)
つまり、法律上は「業種自由」が原則です。ただし、違法な事業や許認可を要する業種で未取得の場合は対象外となるため、注意が必要です。
2-2. 実務上の解釈
行政書士実務でも次のように整理されています。
- 「業種に制限はないが、事業が適法であることが前提」
- 「事業の規模や実態、継続性が審査上重要」
- 「申請者が現場業務に偏っていないことを確認される」
つまり、業種自由=何でもOKではなく、事業として成立する体制・法令遵守・経営・管理の実態が重要です。
3. 「業種制限なし」の実務上の意味と注意点
3-1. 適法性の確認が必須
業種自由とはいえ、法律で禁止される業種(麻薬取引、無認可風俗営業など)は申請できません。
- 適法事業であること
- 許認可が必要な場合は取得済または申請予定であること
これらが審査の最低条件となります。
3-2. 許認可や業種特有の要件
業種によっては、申請前に許認可や営業体制を整えておく必要があります。
- 飲食業:保健所の飲食店営業許可
- 風俗営業:風俗営業許可
- 医療・福祉・旅行業:各種登録・届出
- オンライン/ECビジネス:事務所確保、資金投入、売上見込み
これらが整っていない場合、申請が不許可となるリスクがあります。
3-3. 現業従事との線引き
申請者が現場業務(接客・調理・販売など)に偏ると、「経営・管理」と認められず不許可になることがあります。
- 申請者は経営判断・管理業務を主に行う体制が必要
- 従業員を雇用し、役割分担を明確化することが望ましい
3-4. 規模・事業実態の確認
近年の制度改正で、申請時の資本金・常勤職員・事務所要件が厳格化されています。
- 資本金3,000万円以上・常勤職員1名以上が望ましい
- 事業計画書に売上見込み、採算計画、事業の継続性を記載
業種の大小に関わらず、事業の実態があることが最重要です。
4. 業種選定時に押さえるべきポイント
- 事業モデルと収益性・継続性
- 継続的に利益が見込める事業か
- 売上・費用・人員体制を具体的に示す
- 許認可・法規制の確認
- 飲食、風俗、医療、旅行業などは許可必須
- 海外取引や金融事業は法令遵守が求められる
- 経営・管理活動の明確化
- 申請者が現場業務に偏らない
- 経営判断や社員管理などを中心とする
- 規模・体制が業種に見合うか
- 事務所・資本金・常勤職員の体制を整備
- 「ペーパーカンパニー」と判断されないこと
5. 業種別の実務ヒント
5-1. 飲食業・店舗型サービス
- 店舗・事務所の明確化(自宅兼用不可)
- 保健所許可の取得
- 従業員を雇用し、申請者は管理業務に専念
- 立地・客数・収支見込みを具体化
5-2. オンライン・ECビジネス
- 物理的な事務所・倉庫・物流体制を用意
- 事業の継続性・実態を示す売上データ
- 資本金・従業員体制を明確化
5-3. 不動産・投資関連
- 賃貸契約・管理体制を具体的に提示
- 経営管理業務に重点を置いた体制説明
- 収益モデルの明確化
5-4. 風俗営業・特殊業種
- 法令上の許可取得が必須
- 社会的信用・実務体制が厳しく審査される
- 適法であっても継続性・体制の明確化が重要
6. よくあるQ&A
Q1:業種に制限はありますか?
A1:原則ありません。ただし、違法事業や許可未取得業種は対象外です。
Q2:飲食店を開きたい場合は?
A2:可能ですが、店舗営業許可取得、事務所・従業員体制の整備、申請者の経営専念が必要です。
Q3:オンラインビジネスは対象になりますか?
A3:対象になりますが、事務所・資本金・雇用・売上見込みなど、事業の実態を示す必要があります。
Q4:バーチャルオフィスだけで申請できますか?
A4:原則不可。専有区画のある事務所、または店舗の実態が求められます。
Q5:申請前に押さえるべきポイントは?
A5:許認可、事業モデル、従業員・事務所体制、経営・管理専念、業種の社会的信用などを確認してください。
7. まとめ
- 経営管理ビザに業種制限はありません。
- 重要なのは業種に応じた許認可・事業規模・従業員・資金・事務所体制です。
- 申請者が現業従事ではなく、経営・管理業務に専念する体制を明確化することが成功の鍵です。
- 最新の制度改正(2025年10月)により、審査基準が厳格化されています。申請前に専門家に相談することを推奨します。
経営管理ビザの取得は、業種選択以上に「事業としての実態と管理体制」が最も重視されます。
業種にこだわるだけでなく、事業計画・運営体制を整え、審査官に「この事業は日本で継続的に運営可能」と納得してもらうことが成功への近道です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |

