海外企業が日本法人を設立する際のビザ(在留資格)の完全ガイド

海外企業が日本に進出する場合、法人設立と同時に外国人取締役や駐在員の在留資格(ビザ)手続きが重要です。令和7年8月に出入国在留管理庁が公表した省令案により、在留資格「経営・管理」の基準が強化され、資本金や常勤職員、申請者の学位・経験などが厳格化されました。本記事では、最新の制度改正を踏まえ、経営管理ビザや企業内転勤ビザのポイントを詳しく解説します。


1. 日本法人設立時に必要な在留資格とは

海外企業が日本に法人を設立し、外国人役員や駐在員を派遣する場合、主に以下の在留資格が必要です。

  • 経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)
    日本法人の経営や管理業務を行う外国人に必要です。改正により資本金や常勤職員の要件が強化されています。
  • 企業内転勤ビザ(在留資格「企業内転勤」)
    海外本社から日本法人に転勤する外国人従業員向けで、業務内容や給与条件が要件となります。

2. 経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の改正ポイント

令和7年8月公表の省令案では、以下の改正が行われます。

2-1. 常勤職員と資本金の要件

従来は「常勤職員1人以上」かつ「資本金500万円以上」または「事業規模が同等」とされていましたが、改正後は以下が必須となります。

  • 常勤職員:外国人経営者を除き1人以上
  • 資本金:3,000万円以上
  • 事業規模:資本金と常勤職員の両方が要件を満たすこと

ポイント: これにより、事業の安定性・実態を示す基準が厳格化されます。

2-2. 申請者の学位・職歴要件

申請者は以下のいずれかを満たす必要があります。

  1. 学位要件
    • 博士、修士、専門職学位を取得し、経営管理または業務に必要な技術・知識を有すること
  2. 職歴要件
    • 事業の経営・管理に従事した経験が3年以上あり、特定活動(貿易や事業準備行為を含む)での滞在実績を有すること

2-3. 提出書類の改正

  • 事業計画書
    経営に関する専門的知識を有する者の評価を受けたものが必要
  • 事業規模の証明
    • 常勤職員の人数を示す資料
    • 該当職員の賃金支払資料、住民票、在留カードまたは特別永住者証明書
    • 資本金の額や出資総額を示す資料
  • 申請者の経歴証明
    • 学位証明書または職歴・経歴証明書

更新申請時も同様の資料提出が求められます。


3. 企業内転勤ビザの概要

海外本社から日本法人に派遣される駐在員には「企業内転勤ビザ」が必要です。

  • 要件
    • 海外本社で1年以上の勤務実績
    • 日本法人で本社と同様の業務に従事
    • 十分な報酬が支払われること
  • 特徴
    • 一時的な派遣に適しており、経営権を持たない従業員向け
    • 経営管理ビザとの併用も可能(代表者は経営管理、駐在員は企業内転勤)

4. 日本法人設立とビザ手続きの関係

日本法人設立の基本的な手続きは以下です。

  1. 会社名・事業内容の決定
  2. 定款作成と公証役場での認証
  3. 法務局での登記申請
  4. 資本金払込みと銀行口座開設
  5. 税務署・社会保険・年金手続き

在留資格申請は法人設立後が基本ですが、事前に計画書や契約書を準備すれば申請可能な場合があります。


5. 在留資格選定のポイント

  1. 業務内容の明確化
    経営権の有無、業務範囲で経営管理か企業内転勤か判断
  2. 在留期間の設定
    • 経営管理:1~5年
    • 企業内転勤:1~3年
  3. 将来の永住を見据えた滞在
    経営管理ビザの滞在実績は永住申請に有利
  4. 複数ビザの併用
    代表者は経営管理、駐在員は企業内転勤の組み合わせが多い

6. よくあるQ&A

Q1. 経営管理ビザの資本金要件は3,000万円以上が必須ですか?
A1. 改正後は3,000万円以上が必須です。小規模事業は経営計画の補足資料で認可される場合もあります。

Q2. 常勤職員は何人必要ですか?
A2. 外国人経営者を除き1人以上必要です。

Q3. 事業計画書にどの情報を含めるべきですか?
A3. 事業目的、運営方針、収支計画、マーケティング戦略など、事業の実現可能性を示す具体的内容。

Q4. 申請者の学位・職歴は必須ですか?
A4. はい。博士・修士・専門職学位のいずれか、または経営管理の3年以上の職歴が必要です。

Q5. 更新申請時の提出書類は?
A5. 常勤職員の資料、資本金証明、経営者の経歴証明書が必須です。


7. まとめ

海外企業が日本法人を設立する際には、在留資格「経営・管理」の改正内容を理解し、資本金・常勤職員・申請者資格・提出書類を正確に準備することが重要です。企業内転勤ビザとの使い分けも検討し、将来的な永住申請も視野に入れた計画が求められます。事前に行政書士など専門家への相談もおすすめです。


8. 参考リンク

関連記事

無料相談

まずは、無料相談に、お気軽にお申込み下さい。ご相談の申し込みは、「お問い合わせページ」から承っております。なお、無料相談は事前予約制とさせて頂いています。
  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法