外国人従業員と社会保険|加入義務・対象者・企業が直面するトラブル防止策
目次
はじめに
グローバル化が進む日本社会において、外国人従業員の雇用は年々増加しています。厚生労働省の統計によれば、2024年時点で日本で働く外国人労働者数は約200万人を超え、企業にとって外国人雇用はもはや特別なことではなくなりました。
そこで多くの企業が疑問に思うのが 「外国人従業員も社会保険に加入させなければならないのか?」 という点です。本記事では、法律上のルール、加入対象者の範囲、注意点を徹底解説します。
1. 外国人従業員と社会保険の基本
社会保険とは?
社会保険とは、以下の4つを指します。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険(労働者災害補償保険)
これらは、外国人であっても日本で働く以上、原則として日本人と同じ条件で加入する義務があります。
外国人も加入義務があるのか?
結論から言えば、外国人従業員も加入義務があります。出入国在留管理庁や厚生労働省も明確に定めており、「国籍を理由に社会保険加入を拒否することはできない」とされています。
参考: 厚生労働省「外国人雇用対策」
2. 社会保険の加入対象となる外国人従業員
健康保険・厚生年金保険
次の条件を満たす場合、外国人従業員も健康保険・厚生年金に加入が必要です。
- 正社員(フルタイム勤務)の場合 → 無条件で加入
- 契約社員・パート・アルバイトの場合 → 週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合
雇用保険
雇用保険は、次の条件に該当すると加入が必要です。
- 週20時間以上働く
- 31日以上の雇用見込みがある
※短期滞在や観光ビザでの就労は認められていないため、対象外です。
労災保険
労災保険は、雇用形態に関わらず 全ての労働者が対象 です。外国人であっても、アルバイトや技能実習生などを含め、自動的に適用されます。
3. 社会保険未加入のリスク
外国人従業員を社会保険に加入させなかった場合、企業には以下のリスクが生じます。
- 法令違反による罰則
- 未加入が発覚すると、追徴金や遡及して保険料を支払う義務が発生。
- ビザ更新・永住申請への影響
- 社会保険未加入は「適法な雇用環境が整っていない」と判断され、従業員本人の在留資格更新や永住申請が不許可になる可能性があります。
- 労務トラブル
- 労働災害や病気発生時に保障が受けられず、企業が損害賠償責任を問われるリスク。
4. 特殊なケース
留学生のアルバイト
留学生が資格外活動許可を得てアルバイトをしている場合でも、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険加入対象になります。
関連記事: 留学生をアルバイトで雇用する場合の注意点と資格外活動許可【完全ガイド】
技能実習生・特定技能外国人
技能実習生や特定技能外国人も「労働者」であるため、社会保険加入の対象です。
関連記事: 特定技能外国人との雇用契約のポイントと注意点|企業が守るべきルール完全ガイド
5. 企業が取るべき対応
外国人従業員を雇用する際は、以下を徹底することが重要です。
- 雇用契約締結時に「在留カード」を確認
- 在留資格が「就労可能」か確認
- 社会保険・雇用保険の適用要件を満たす場合は必ず加入手続き
- 保険加入証明はビザ更新・永住申請時にも役立つため、きちんと管理
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 短期滞在ビザの外国人も社会保険に加入する必要がありますか?
A. いいえ。短期滞在ビザは就労不可のため、そもそも労働契約を結ぶことができません。
Q2. 留学生のアルバイトでも労災保険は適用されますか?
A. はい。雇用契約に基づき働く以上、労災保険は自動的に適用されます。
Q3. 社会保険料の負担割合はどうなりますか?
A. 日本人と同様に、従業員と会社が折半して負担します。
Q4. 加入していない外国人従業員がビザ更新を申請した場合は?
A. 社会保険未加入が理由で「安定的な生活基盤がない」と判断され、不許可になるケースがあります。
まとめ
- 外国人従業員も、日本人と同様に社会保険への加入義務がある
- 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険のルールを満たす場合は必ず加入
- 未加入は法的リスクだけでなく、従業員のビザや永住申請にも悪影響
- 企業は在留カードの確認・適正な手続きを徹底することが重要
外国人雇用は日本社会の持続的な成長に不可欠です。そのためにも、社会保険加入は「義務」であると同時に、企業と従業員双方を守るための 最低限のルール であることを理解しておきましょう。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |