1,技能ビザとはどんなビザですか?

(1)技能ビザの概要

 技能ビザとは在留資格「技能」のことで、就労ビザの1つです。技能ビザは、熟練技能労働者を外国から受け入れることを目的としています。よって、技能ビザでは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事することが認められています。料理人も熟練した技能を要する業務の1つとして認められています。

(2)料理人分野の技能ビザ

 技能ビザの許可要件の1つとして、10年の実務経験を有することが入管法上求められます。つまり「熟練した技能を要する業務に従事する活動」を10年以上行っていることが必要です。

 「熟練した技能を要する業務に従事する活動」とは、日本より外国の技能水準が高い分野や、外国特有の文化に基づく分野、日本には熟練技能労働者が少ない分野を意味します。料理人分野では、外国特有の料理、日本より技能水準が高い料理、日本では料理人が少数しか存在しない料理となります。中華料理やフランス料理、イタリア料理、タイ料理、韓国料理など専門とする料理人が該当します。料理人には、デザートなどの菓子類を製造するパティシエも含まれます。これに対して、ラーメンや餃子など一般大衆化した料理を提供する店舗での料理人は「熟練した技能を要する業務に従事する活動」には含まれません。

2,料理人分野の技能ビザで外国料理店を経営できますか?

 料理人分野の技能ビザで認められる活動は、外国料理店での料理人としての活動です。よって、料理人分野の技能ビザで外国料理店を経営することはできません。外国料理店を経営する場合には、技能ビザから経営管理ビザへ変更する必要があります。

 外国人が日本で外国料理店を経営する場合は、在留資格「経営・管理」を取得する必要があります。経営管理ビザ以外の就労ビザで、外国人が飲食店を経営することは認められません。経営管理ビザは外国人が日本で企業経営を行うことを認めています。また、経営する飲食店は、中華料理やイタリア料理など料理の種類や料理店やカフェなどの飲食店の形態などに制限はありません。外国料理店はもちろん、外国料理店以外の飲食店も経営することができます。また、法律に違反しない事業である限りは、海外からの食品輸入といった事業を行うことも問題ありません。

 技能ビザの外国人が経営管理ビザへ変更することなく、飲食店経営を行った場合は資格外活動となります。入管法は、罰則をもって資格外活動を禁止しています。これに違反した場合は、最悪の場合は退去強制処分に処せられる可能性もあります。

3,経営管理ビザとはどんなビザですか?

 経営管理ビザとは、在留資格「経営・管理」のことで、就労ビザの1つです。入管法は経営管理ビザについて「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」(入管法別表1の2)と定め、外国人が日本で事業の経営や管理を行うことを認めています。経営管理には、新規事業を立ち上げる場合のみならず、既存の事業に参画する場合も含まれます。

4、飲食店の場合の経営管理ビザの許可要件は何ですか?

 経営管理ビザを取得するためには、概ね以下の3つの許可要件を充足する必要があります。

「経営管理ビザの許可要件」

①事業の事業所を確保していること
②資本金が500万円以上であること(若しくは、2人以上の常勤職員が従事していること)
③事業の継続性があること

①事業の事業所を確保していること

 経営管理ビザを取得するためには、独立した事業用の事業所を確保する必要があります。新規事業を立ち上げる場合は、事業所の確保必要となります。バーチャルオフィスや自宅兼オフィスの場合は、独立した事業所として認められません。申請の際には、独立した事業所を確保していることを証明するため、事業所の賃貸借契約書の写しなどの書類を提出する必要があります。
 飲食店経営の場合の店舗の賃貸借契約は、事業用物件であること、法人名義の契約であること、が必要です。 飲食店の場合は、事務所の他にもホールや調理場など、飲食店を経営するために必要な設備も備えていることを証明していく必要があります。
 経営管理ビザの申請前に、営業できる状態にしておく必要があります。内装や看板、調理場、イスとテーブル、メニューなどが用意され、飲食店経営ができる状態であるか否かが、入管の審査官によって審査されます。開業できる状態を整えないで経営管理ビザを申請しても、事業を行うことができないと判断され不許可になります。

②資本金が500万円以上あること(もしくは、2人以上の常勤従業員が従事していること)

 経営管理ビザを取得するためには、経営する事業が一定規模以上のものであることが要求されます。その一つの基準として、経営する会社の資本金が500万円以上あることが必要です。資本金が500万円以上ない場合は、2人以上の常勤職員がいる事業であることが要求されます。常勤職員として認められるためには、日本人・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の職員であることが必要です。
 資本金500万円以上は、事業資金として500万円以上あることが必要です。経営管理ビザ申請の際に、入管に見せるためだけに資金を要したような「見せ金」は通用しません。そこで、資本金500万円はその出所証明も必要になります。借入によって500万円を用意した場合は金銭消費貸借契約書、自分で貯めたのであれば預金通帳の写しなどを提出します。なお、500万円には、開業準備で支出した金額も含まれます。支出した店舗の賃貸料その他設備の購入費用も500万円に含まれるため、これらの領収書を提出する必要があります。
 飲食店経営の場合は、従業員の確保が不可欠になります。経営管理ビザで認められる活動は、経営と管理です。よって、飲食店での調理や接客といった業務に、経営管理ビザの外国人が従事することは認められません。したがって、調理や接客といった業務に従事する従業員を確保していることを証明していく必要があります。これらの業務に従事する予定の従業員を確保していない場合は、申請人が行うことを意味し、経営管理ビザの許可を取得することはできません。

③事業の継続性があること

 経営管理ビザを取得するためには、経営する事業に継続性が認められることが要求されます。新規事業の場合は、「事業計画書」の提出は必須となります。「事業計画書」ではビジネスモデルや経営方針を詳細に説明していくことが必要です。
 飲食店経営の場合は、飲食店営業許可を取得している必要があります。飲食店営業許可を取得せずに、飲食業を営むことはできません。経営管理ビザ申請前に飲食店営業許可を取得して、その写しを入管へ提出し証明する必要があります。飲食店営業許可は保健所に申請し、施設の検査確認後に問題がない場合は、許可証が交付されます。

5,まとめ

 技能ビザは、熟練技能労働者を外国から受け入れることを目的としています。料理人も熟練した技能を要する業務の1つとして認められています。料理人分野の技能ビザで認められる活動は、外国料理店での料理人としての活動です。よって、料理人分野の技能ビザで外国料理店を経営することはできません。外国料理店を経営する場合には、技能ビザから経営管理ビザへ変更する必要があります。

「記事監修」
 加納行政書士事務所
 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
 特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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