1,永住者と離婚した場合、永住者の配偶者ビザはどうなりますか?

 永住者の配偶者ビザを有する外国人が、永住者と離婚した場合でも、ただちに永住者の配偶者ビザが取り消されるということはありません。しかし、在留期限まで永住者の配偶者ビザで在留することが認めらえるわけではありません。また、永住者と離婚した場合は、永住者の配偶者ではなくなるため、永住者の配偶者ビザの更新をすることは出来ません。

 永住者と離婚した後も、日本での生活を希望する場合は、在留資格「永住者の配偶者等」から他の在留資格に変更する必要があります。入管法上は、永住者の配偶者ビザの外国人が永住者と離婚した場合は、6か月以内に他の在留資格に変更する必要があります。6か月以内に在留資格変更の手続きを行わない場合は、永住者の配偶者ビザが取り消される可能性があります。

 「離婚した」とは、日本国内で離婚が成立していることを意味します。つまり日本国内の一自治体の役所で離婚届けを提出し、その役所が離婚届を受理している状態です(民法765条)。

2,永住者と離婚した場合に変更できるビザは何ですか?

 永住者と離婚した場合に、6か月以内にビザ変更を行わない場合は、在留資格が取り消しになる可能性があります。入管法は「正当な理由なく配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合」入管法第22条の4の2の7)は在留資格取消の対象としています。離婚した場合は入管法上の「配偶者としての活動」を行っていないことになります。よって、離婚後6か月以内に在留資格の変更申請を行う必要があります。以下では、離婚後に変更できる可能性のある在留資格について検討します。

(1)離婚定住者ビザ(日本国籍の子供がいない場合)

 永住者の配偶者ビザ外国人が永住者と離婚した場合で在留を希望する場合に、変更を検討する代表的な在留資格は「定住者」ビザになります。もっとも、定住者ビザへの変更を希望すれば当然に変更が許可されるわけではありません。定住者ビザへの変更申請が許可されるか否かは、①永住者との婚姻期間②日本国籍の子供の有無が大きく影響します。日本国籍の子供がいない場合は、①永住者との婚姻期間が大きく影響します。定住者ビザへ変更するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

「離婚定住者ビザへの変更要件」

①独立して生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
 独立生計要件を充足するためには、安定した収入を得る見込みがあることが必要です。定住者は就労制限がないため、職種や業種は問われませんが、会社の正社員として勤務しているなど安定性があることが重要です。
②実態を伴う婚姻期間が3年以上あること
 実態を伴う婚姻と認められるためには、同居を伴う婚姻期間が3年以上あることが必要です。もっとも、別居期間がある場合でも別居に合理的な理由があり、相互扶助の事実(生活費の支払いなど)がある場合は、この限りではありません。
③日本での社会生活が可能な程度の日本語能力を有すること
 具体的に何級以上の日本語能力試験合格といった基準はありません。検定の合格証を有しているのであれば、提出することによって審査に有利に働くことが期待できます。
④納税等の公的義務を果たしていること

(2)日本人の実子扶養定住者ビザ(日本国籍の子供がいる場合)

 例えば前婚において日本人との間に日本国籍の子供がいる場合などは、定住者ビザへの変更が可能です。日本国籍の子供がいる場合の日本人の実子扶養定住者ビザは、上記2(1)の定住者ビザより緩やかな基準で変更が認められます。「日本国籍の子供の保護」という見地から、婚姻期間が3年以上といった要件はありません。日本人の実子扶養定住者ビザへの変更が認められるためには、以下の要件を充足する必要があります。

「日本人の実子扶養定住者ビザへの変更要件」

・日本国籍の実子の親権が外国人にあること
・日本人の子供が未成年者であること

(3)日本人の配偶者ビザ、永住者の配偶者ビザ(再婚した場合)

 永住者と離婚後に永住者と再婚した場合は、永住者の配偶者ビザを更新することができます。もっとも、保有する永住者の配偶者ビザは前婚を前提に許可されています。再婚後に永住者の配偶者ビザを更新する場合は、再婚が実体のある婚姻か否かが審査されます。よって、実質的には新たに永住者の配偶者ビザを取得する場合と審査の内容は異なりません。

 永住者と離婚後に日本人と再婚した場合は、在留資格「日本人の配偶者等」へ変更することが可能です。この場合も、日本人との間に婚姻の実体が認められるか否か厳しく審査されます。

 上記の通り、離婚後に配偶者ビザを取得する場合は、再婚に婚姻の実体が認められるか厳しく審査されます。離婚後に在留を継続しながら再婚に至った場合は、交際期間が短いことが一般的です。また、不倫関係からの再婚の場合もあります。以上のような場合は入管の審査は慎重になりますので、婚姻に至った経緯については詳しく説明することが重要です。なお、不倫関係から婚姻に至った場合でも、絶対に不倫関係にあったことを隠さないで下さい。

(4)就労ビザ

 婚姻期間3年以上ない場合や日本国籍の子供がいない場合は定住者ビザへ変更することはできません。また日本人や永住者と再婚していない場合は、配偶者ビザへ変更することはできません。この場合は、他の就労ビザに変更可能か否か検討する必要があります。

 就労ビザには様々種類があり、各就労ビザによって許可要件が定められています。代表的な就労ビザは在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。技術人文知識国際業務ビザには、学歴要件(大学や日本の専門学校卒業)または実務経験10年といった許可要件があります。また従事する業務は、学歴と関連性のある業務である必要があります。永住者と離婚した外国人が、これ就労ビザの許可要件を満たすことができなかった場合は、就労ビザに変更することはできません。

(5)経営・管理ビザ

 日本で起業した場合は、経営管理ビザへ変更することはできます。もっとも、日本で会社を設立すれば当然に経営管理ビザを取得できるわけではありません。経営管理ビザの許可要件の1つとして、「資本金500万円以上」が求められます。500万円以上の出資ができない場合は、経営管理ビザの取得は難しくなります。また、経営管理ビザを取得するためには、事業の安定性や継続性が認められる必要があります。ペーパーカンパニーや赤字決済が続いているような場合は、経営管理ビザを取得することは難しくなります。

3,離婚後に行わなければならない手続きは何ですか?

 上記2で検討した通り、永住者と離婚した場合は在留資格変更許可申請を行う必要があります。その他にも14日以内に以下の離婚の届出を行う必要があります。この離婚の届出を怠った場合、入管法第19条の16第3号により20万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。また、入管法上の義務を果たしていないため、「在留状況不良」と入国管理局に扱われ、他の在留資格への変更申請が不許可になる危険性があります。

「離婚の届出方法」

①最寄りの地方出入国在留管理局への出頭
②東京出入国在留管理局への離婚届出書の郵送(在留カードの写しとともに)
③出入国在留管理局電子届出システム上での届出手続完了

4,ビザ変更ができなかった場合はどうなりますか?

 上記1で検討した通り、永住者と離婚した場合は、永住者の配偶者という永住者の配偶者ビザの前提を欠くことになるため、永住者の配偶者ビザを更新することはできません。6か月以内にビザを変更できなかった場合は、永住者の配偶者ビザの在留期間の満了をもって帰国するほかありません。また、在留期間満了前に永住者の配偶者ビザを取り消された場合は、その時点で帰国することになります。

5,離婚後定住者ビザへの変更の必要書類は何ですか?

 離婚後に永住者の配偶者ビザから定住者ビザへ変更する際の必要書類は以下の通りです。下記の書類の他にも、審査の過程で追加資料を要求される場合もあります。許可要件を満たしているか判断するために必要という見地から要求されているので、提出期限までに必ず提出してください。

「申請書類」

・在留資格変更許可申請書
・申請理由書

 上記の申請理由書は特に重要となります。「離婚後も日本在留を希望する理由」を説得力ある説明をする必要があります。

「本人確認及び在留資格証明のための書類」

・証明写真(4cm×3cm)
・在留カードの写し ・パスポートの写し

「婚姻・離婚の事実証明のための書類」

・前配偶者の戸籍謄本
・離婚届の受理証明書
・住民票

「独立生計要件を満たすことを証明する書類」

・身元保証書
・履歴事項全部証明書
・雇用契約書
・採用内定通知書
・労働条件通知書
・課税証明書
・給与明細の写し
・給与支払証明書

 上記のように身元保証書の提出を要求されています。よって身元保証人を立てる必要があります。身元保証人は、日本国内に居住している者であれば、国籍は問われません。身元保証人の責任は法的責任ではなく、道義的責任にとどまります。

6,まとめ

 永住者と離婚した場合は、永住者の配偶者ではなくなるため、永住者の配偶者ビザの更新をすることは出来ません。永住者と離婚した後も、日本での生活を希望する場合は、在留資格「永住者の配偶者等」から他の在留資格に変更する必要があります。永住者の配偶者ビザ外国人が永住者と離婚した場合で在留を希望する場合に、変更を検討する代表的な在留資格は「定住者」ビザになります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法