目次
1,技能実習制度とは何ですか?
(1)技能実習制度の概要
技能実習制度とは、外国人技能実習生が、本国において習得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を日本で達成することを目的としています。技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行わることになります。外国人技能実習生は、日本の企業や個人事業主などの技能実習者と雇用契約を結び、在留が認められる期間は最長5年間とされています。
(2)技能実習制度の趣旨目的
技能実習法には、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と規定されています。この基本理念は、我が国で養われた技能、技術又は知識(以下、技能等)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済的発展を担う「人づくり」に寄与し国際協力を推進するという、技能実習制度の目的・趣旨に基づいています。この基本理念は、1993年に技能実習制度が創設されて以来、一貫したものとなっています。このように、技能実習制度は、技能移転を通じた開発途上国への国際協力を目的としています。
(3)技能実習の類型
技能実習制度には、「企業単独型」と「団体監理型」の2類型があります。
「企業単独型」
日本の企業等が、海外の子会社など外国企業等の職員を受入れて技能実習を実施する方式
「団体監理型」
組合など非営利団体である監理団体が技能実習生を受入れて、傘下の企業等で技能実習を実施する方式。監理団体では、技能実習の適正な実施及び技能実習生を保護するために必要なサポートを監理団体が行います。
(4)技能実習生に必要な在留資格
技能実習生として日本で外国人を受入れるためは、在留資格「技能実習」1号~3号を取得する必要があります。
・第1号技能実習:入国後1年目の技能等を修得する活動 ・第2号技能実習:2,3年目の技能等の習熟するための活動 ・第3号技能実習:4年目、5年目の技能等に熟達する活動 |
2,フィリピンのMWO(旧POLO)申請とは何ですか?
(1)MWO申請の概要
フィリピンのMWO申請とは、フィリピン人が「海外雇用許可証」(OEC(Overseas Employment Certificate))を取得するために必要な手続きのことです。フィリピン人を雇用する際には、フィリピン人がOECを取得している必要があります。海外で働くフィリピン人がOECを取得していない場合は、フィリピン人はフィリピンを出国することができません。
このMWO申請は、フィリピン人を本国から採用する場合に限らず、留学ビザなど何らかの在留資格をもって日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も必要となります。フィリピン人がOECを取得していない場合でも、適切な就労ビザを取得している場合は、日本で就労しても日本の法律上は何ら問題ありません。しかし、OECを取得しないで日本で就労しているフィリピン人がフィリピンに一時帰国した場合は、フィリピンから出国することができなくなります。日本の法律上は問題がない場合でも、フィリピンの法律がフィリピンでは適用されます。
OECを取得するためには、雇用主がDMW(フィリピン移住労働省(Department of Migrant Workers))システムへ登録されている必要があります。そして、雇用主がDMWシステムへ登録されるためには、MWO申請を事前に行い承認される必要があります。
(2)関係用語
①DMW(移住労働者省):フィリピンの国内機関、フィリピン国外で働くフィリピン人の権利を守るため、送出し機関の認定、受入企業と求人情報の登録などの活動を行う。 |
②MWO(DMWの出先機関):日本では東京のフィリピン大使館と、在大阪フィリピン総領事館に拠点を持つ。 |
③OEC(海外雇用許可証):DMWが発行するフィリピン人の海外雇用を許可する証明書 |
3,MWO(旧POLO)とは何ですか?
MWO(旧POLO)とは移住労働者事務所のことで、上記DMWの海外出先機関のことです。日本にはMWO東京(在東京フィリピン共和国大使館 移住労働者事務所)とMWO大阪(大阪フィリピン総領事館 移住労働者事務所)の2つがあります。
DMWの日本出先機関であるMWO東京・大阪は、日本で働くフィリピン人の権利保護を目的としています。したがって、日本企業がフィリピン人を雇用する際には、原則としてMWOに申請することが必要です。
①MWO東京:東京都港区六本木5-15-5フィリピン大使館フィリピン海外労働局 管轄:北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、静岡、山梨、沖縄 |
②MWO大阪:大阪府中央区淡路町4-3-5アーバンセンター御堂筋7階在大阪フィリピン共和国総領事館労働部門 管轄:富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、鳥取、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島 |
4,OECとは何ですか?
(1)OEC概要
OECとは、海外雇用許可証(Overseas Employment Certificate)のことで、フィリピン人はこのOECがない場合は、フィリピン国外で働くことが出来ません。このOECを取得するためには、上記2のMWOへ申請が必要になります。
OEC申請には、DMWのシステムに適正な雇用主として、日本企業の情報が登録されている必要があります。そして、DMWシステムに登録されるためには、MWOに登録の申請をする必要があります。
日本企業がフィリピン人を雇用するためには、OECを取得するために、これらの手続きが不可欠となっています。なお、OECの有効期限は60日です。
(2)OECを取得していない場合は出国不可
フィリピン人が就労目的でフィリピンを出国する場合は、空港でOECを提示する必要があります。そして、このOECを取得していない場合はフィリピンを出国することができません。日本で適切な就労ビザを取得し、日本の法律上は問題ない場合でも、OECを取得していない場合は出国できません。
5,どんな場合にMWO申請が必要になりますか?
基本的には、フィリピン人を雇用する会社や団体は全てMWO申請を行うことが必要となります。以下では、既に日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合とフィリピン在住のフィリピン人を雇用する場合とに分けて検討します。
(1)既に日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合
フィリピン人留学生など、何らかの在留資格をもって日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も、在留資格によってはMWO申請とOEC取得が必要になります。以下の在留資格のフィリピン人を雇用する場合は、MWO申請が必要になります。
例えば、フィリピン人留学生を通訳翻訳などで採用した場合は、技術人文知識国際業務への在留資格変更許可申請とMWOへの申請が必要になります。MWOへ申請していない場合は、フィリピンに一時帰国したら出国することが出来なくなります。
「MWO申請が必要となる在留資格」
就労が認められる在留資格(活動制限あり) ・外交 ・公用 ・教授 ・芸術 ・宗教 ・報道 ・高度専門職 ・経営・管理 ・法律・会計業務 ・医療 ・研究 ・教育 ・技術・人文知識・国際業務 ・介護 ・興行 ・技能 ・特定技能 ・技能実習 ・就労が許可された特定活動 |
「MWO申請が不要な在留資格」
①就労が認められる在留資格(活動制限あり) ・企業内転勤 ②身分・地位に基づく在留資格 ・永住者 ・日本人の配偶者等 ・永住者の配偶者等 ・定住者 ③就労の可否は指定される活動によるもの ・就労が許可されていない特定活動 |
(2)フィリピン在住のフィリピン人を雇用する場合
「原則として送出し機関から雇用」
フィリピン政府は、原則として外国企業によるフィリピン人の直接雇用を禁止しています。よって、フィリピン人を採用する場合は、フィリピン政府の許可を受けた現地の送出し機関を介することがほとんどです。
このフィリピン政府公認の送出し機関のことを、PRA(Philippine Recruitment Agency)といいます。日本企業がフィリピン人を雇用する際には、まずPRAを探して契約することから始まります。このPRAはDMWの公式ホームページから検索することが出来ます。
このRPAと契約を締結した後にMWO申請を行い、DMWシステムに登録されるとPRAがフィリピン人の募集活動を行うことになります。
6,フィリピン人技能実習生を受け入れる場合もMWO申請が必要ですか?
上記5で検討した通り、フィリピン人技能実習生を受け入れる場合はMWO申請が必要になります。MWO申請による承認をいずれの機関が受ける必要があるかは、技能実習の類型が企業単独型か団体監理型かによって異なります。以下の機関は、新規の技能実習生を受け入れるたびに、MWO申請を行う必要があります。
「MWO申請を行う機関」
・企業単独型:受入企業 ・団体監理型:監理団体 |
7,フィリピン人技能実習生を受け入れる手順はどうなりますか?
フィリピン人技能実習生を受け入れる場合は、以下の手続きを踏むことになります。
(1)手順1 送出し機関との契約
①送出し機関の選定
DMWのウェブサイトからフィリピン政府公認の認定送出し機関(PRA)を検索する
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②送出し機関との間で、募集取決め(Recruitment Agreement)の契約を締結
フィリピン政府公認の送出し機関(PRA)とRecruitment Agreement(RA)を締結。締結したRAは、日本の公証役場で手続きが必要(アポスティーユは不要)。
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(2)手順2 MWO申請
①MWOへ申請書類の提出(書類審査)
求人票(MANPOWER REQUEST/JOB ORDER)、雇用契約書のひな型などを郵送すると、MWOで書類審査が行われます。
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②MWOで面接を実施
書類審査経過後、英語によるMWOの面接を受けます。この際、受入企業や管理団体の代表者または従業員がMWO面接を受ける必要があります。第三者が面接を受けることは認められていません。
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③MWOの承認
MWOによる書類審査の結果、フィリピン人技能実習生を受け入れる企業または監理団体として適正であると判断された場合のみ、MWOの承認印が押印された提出書類一式が雇用主に返送される。
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(3)手順3 DMW登録
①送出し機関に書類の転送
MWOで承認された提出書類一式をフィリピン政府公認の認定送出し機関(PRA)に転送します。
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②送出し機関がDMWに受入企業を登録申請
DMWに受入れ企業の情報及び求人情報の登録を申請します。
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(4)手順4 受入企業の人材募集
DMWシステムへMWO承認情報が反映された後、PRAはフィリピン技能実習生の募集活動を開始することが出来ます(DMWシステムへの反映が確認できるまで募集活動を行うことが出来ません)。雇用主は、候補者が集まり次第、現地に赴くもしくはオンラインにて面接を実施します
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(5)手順5 在留資格認定証明書交付申請手続き
面接内定者の在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局へ行う。在留資格が認定されると、在留資格認定証明書(COE)が交付される。
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(6)手順6 査証(ビザ)発給申請
在留資格認定証明書(COE)の原本をフィリピンに転送。就労者本人がフィリピン日本大使館に出向き、在留資格認定証明書(COE)の原本とパスポートを提出することで査証(ビザ)発給申請を行う。査証(ビザ)が発給されると、パスポートに捺印が行われる。
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(7)手順7 OEC取得
①OEC発行申請
査証(ビザ)が発給され、出発前オリエンテーション及び健康診断を終えた後、就労者本人がBM Onlineからアカウントを作成し、OEC(海外雇用許可証)発行申請を行います。DMWにOEC発行手数料(オンライン決済が可能)を支払うことにより、BM OnlineからOECをPDFで出力することが可能になります。発行されたOECは、フィリピン出国時の出国審査で提示する
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②OEC発行
OEC発行手数料の納付が確認されると、BM OnlineからOECの印刷が可能になります。出国審査のカウンターでプリントアウトいたOECを提示すれば就労を目的としてフィリピンから出国することが出来ます。なお、OECの有効期限は60日間となっているため、60日以内にフィリピンを出国する必要があります
8,技能実習の場合のMWO申請の必要書類は何ですか?
フィリピン人技能実習生を受け入れる場合に、MWO申請で必要となる書類は以下の通りです。なお、会社の登記簿謄本や会社案内など、日本語で記載されている書類には、すべて英訳が必要になります。
「必要書類」
①監理団体許可書 ②監理団体許可条件通知書 ③厚生労働省が定める技能実習計画審査基準の写し ④監理団体の登記簿謄本 ⑤監理団体及び送出し機関の協定書(公証役場による公証が必要) ⑥技能実習実施計画のドラフト ⑦技能実習求人通知(職種、求人数、給料の詳細を記したもの) ⑧実習実施機関の従業員人数の証明書 ⑨雇用契約書の補遺文書 ⑩技能実習生のための雇用契約書 ⑪雇用条件書および賃金支払い書 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |