1,外国人プロ野球選手に必要なビザは何ですか?

 外国人プロ野球選手を日本に招聘する場合に必要なビザは、興行ビザになります。興行ビザは興行活動の内容によって1~4号に分けられています。そして、プロ野球選手の場合は興行ビザ3号が必要になります。

 興行ビザ3号は、プロスポーツやサーカスその他、演劇・演芸・舞踊・演奏以外の興行活動を、外国人が日本で行う場合に必要となるビザです。日本でプロスポーツ団体と契約する場合や、賞金のある大会に出場するなど、プロスポーツ活動によって報酬を得る場合は興行ビザ3号が必要になります。プロ野球選手やプロサッカー選手、外国人力士などが該当します。

 プロ野球は、日本野球機構(NPB)が運営するプロ野球12球団と地区独立リーグに分かれます。12球団に所属する1軍・2軍の外国人選手、地区独立リーグに所属する外国人選手のいずれも興行ビザ3号の取得が必要です。なお、実業団野球の場合はプロ野球には含まれないため、興行ビザに該当しません。この場合は、特定活動ビザが必要になります。

2,興行ビザとはどんなビザですか?

 興行ビザとは在留資格「興行」のことで、外国籍の方が日本で興行活動を行う場合に必要とされるビザのことです。興行とは「特定の施設において、公衆に対して映画、演劇、スポーツ、演芸又は見世物を見せ、または聞かせる」こと、と定義されます。このように、興行ビザは外国人が日本で芸能活動やスポーツなどのエンターテイメント業界で興行活動を行うことを認めています。このうち興行ビザ3号は、プロスポーツやサーカスその他、演劇・演芸・舞踊・演奏以外の興行活動を、外国人が日本で行う場合に必要となるビザです。

 興行ビザは、審査基準が厳しくまた申請方法も難解なので、日本の在留資格の中でも取得が難しいビザとなります。法務省の統計では、興行ビザを有している外国人は、1500~2000人程度とされています。興行ビザを申請する際には、活動する種類や興行規模、取得要件に注意を払って申請することが重要です

 なお、興行ビザで認められる在留期間は15日・3か月・6か月・1年・3年のいずれかとなります。

3,興行ビザ3号の許可要件や必要書類は何ですか?

(1)興行ビザ3号の許可要件

 興行ビザ3号を取得するためには、以下の許可要件を充足する必要があります。興行ビザ1,2,4号の基準に該当しない興行活動が、興行ビザ3号の興行活動となります。

①申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事すること

 興行ビザ3号を取得するためには、日本で行う興行活動が興行ビザ3号に該当する活動である必要があります。興行ビザ3号に該当する活動として、法は、演劇・演芸・歌謡・舞踏・演奏以外の興行活動と定めています。このように、興行ビザ3号に該当する活動について、法は抽象的に定めていますが、興行ビザ1,2,4号に該当しない興行活動が、興行ビザ3号に該当するとなります。

②日本人が従事するときと同等若しくはそれ以上の報酬が支払われること

 出演者に限らず、制作・運営・同伴スタッフも日本人と同等以上の報酬を受ける必要があります。

(2)外国人プロ野球選手の「興行」ビザ申請に必要な書類

 外国人プロ野球選手の興行ビザ申請に必要となる書類は以下の通りです。

「外国人プロ野球選手の興行ビザの必要書類」

①在留資格認定証明書交付申請書
②写真(縦4cm×横3cm)
※申請前3か月以内に撮影されたもの
③返信用封筒
※定型封筒に宛先を明記の上、送料分の切手(簡易書留用)を貼付したもの
④申請人の経歴書及び活動に係る経歴を証する文書
⑤招聘機関の概要を明らかにする次の資料
・登記事項証明書
・直近の決算書(損益計算書・貸借対照表など)の写し
・従業員名簿
⑥興行を行う施設の概要を明らかにする資料
・営業許可書の写し
・施設の図面
・施設の写真
・従業員名簿
・登記事項証明書
・直近の決算書(損益計算書・貸借対照表など)の写し
⑦招聘機関が興行を請け負っているときは、請負契約書の写し
⑧次のいずれかで、申請人の日本での具体的な活動の内容・期間・地位・報酬を証明する文書
・雇用契約書の写し
・出演承諾書の写し
⑨その他参考となる資料
・滞在日程表
・興行日程表
・興行内容を知らせる広告・チラシ等
⑩身分を証する文書(会社の身分証明書等)
※日本で発行される書類についてはすべて、発行日より3か月以内のものを提出

4,興行ビザ取得までの手順は、どうなりますか?

 興行ビザ取得までの流れは、以下のように進みます。

手順1 在留資格認定証明書交付申請

 まずは、在留資格認定証明書交付申請を行います。申請は、招聘機関や契約機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。日本で行う手続きとなるため、代理人が申請する場合は、申請の際に代理人の身分を証明する書類(会社の身分証明書など)が必要となります。多くは、招聘機関が代理人となって申請しています。

 興行ビザの審査期間は、およそ1~2か月程度の時間を必要とします。よって、申請の準備には、必要書類の作成や収集に加えて、この審査期間も考慮に入れる必要があります。来日予定の3か月前から申請が可能となります。来日スケジュールに合わせて、申請の準備を行うことが大切です。

 なお、在留資格認定証明書の有効期間は3か月です。3か月を過ぎた場合は、在留資格認定証明書は失効してしまいます。よって、在留資格認定証明書の交付が早すぎた場合は、来日までに在留資格認定証明書が失効してしまう危険があるので注意が必要です。

 審査の結果、許可されると在留資格認定証明書が交付されます。許可要件を充足し必要書類に不備がない場合は、イベントのスケジュールを考慮して、早めに在留資格認定証明書を交付してもらえる場合もあります。しかし、時間的余裕を持って申請準備を行うことが重要です。

手順2 査証申請

 申請が許可された場合は、在留資格認定証明書が入管から代理人の下に郵送されてきます。代理人は、この在留資格認定証明書を外国在住の申請人の下に郵送してください。来日スケジュールには、この郵送に必要な時間を考慮に入れることも重要です。

 査証の申請は、申請人が在住する国の日本国大使館又は領事館で行います。在留資格認定証明書交付申請と異なり、査証は申請人本人が行う必要があります。よって、申請人は日本から送られてきた在留資格認定証明書を持参して、査証の申請を行ってください。

 大使館の審査に必要な期間は、問題がない場合は1週間程度です。許可が下りた場合は、パスポートが「興行」のシールは貼られた状態で、返還されます。

「必要書類」

・在留資格認定証明書の原本
・パスポート
・写真
・その他の身分証明書
・ビザの申請書

手順3 入国       

 在留資格認定証明書の有効期間は3か月です。よって、3か月以内に入国する必要があります。在留資格認定証明書と「興行」と書かれたシールが貼られたパスポートを持参してください。

 なお、入管法第5条に「上陸の許否」が定められています。そして、外国人に薬物犯罪歴がある場合は上陸拒否事由に定められています。そのため、申請人に過去の薬物犯罪歴がある場合は、日本に入国することができません。上陸許可の特例が認められた場合に入国できているケース(人気ミュージシャン)もありますが、あくまでも例外的なケースです。薬物犯罪は、原則として上陸拒否の対象となります。例外は、認められることは無いと考えたほうが良いと考えます。上記特例は、例外が認められるまで、何度か申請し不許可とされて、ようやく例外が認められています。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法