外国人スポーツ選手やスポーツ指導者に必要なビザ(在留資格)は何ですか?プロスポーツ選手の場合は興行ビザ何号ですか?
目次
1,外国人スポーツ選手に必要なビザは何ですか?
外国人スポーツ選手を日本に招聘する場合に必要なビザは、滞在期間や活動内容によって、興行ビザ、特定活動ビザ、短期滞在ビザに分かれます。
このうち、興行ビザは興行活動の内容によって1~4号に分けられています。そして、プロスポーツ選手の場合は興行ビザ3号が必要になります。興行ビザ3号は、プロスポーツやサーカスその他、演劇・演芸・舞踊・演奏以外の興行活動を、外国人が日本で行う場合に必要となるビザです。
(1)プロスポーツの場合(興行ビザ3号)
日本でプロスポーツ団体と契約する場合や、賞金のある大会に出場するなど、プロスポーツ活動によって報酬を得る場合は興行ビザ3号が必要になります。プロ野球選手やプロサッカー選手、外国人力士などが該当します。
(2)アマチュアスポーツの場合(特定活動ビザ)
実業団野球などアマチュアスポーツの場合は、興行収入によって報酬を得ているわけではないので、興行ビザには該当しません。この様なアマチュアスポーツ選手の報酬は企業収入から支払われるため、特定活動ビザを取得する必要があります。
(3)短期間の滞在で報酬を伴わない場合(短期滞在ビザ)
賞金のない大会に出場するために、短期間の滞在を目的として滞在する場合は、短期滞在ビザを取得する必要があります。興行を目的としないスポーツ大会に出場するスポーツ選手が該当します。
2,外国人スポーツ指導者に必要なビザは何ですか?
外国人スポーツ指導者を日本に招聘する場合に必要なビザは、プロスポーツ選手を指導するのか否かによって、興行ビザ、技能ビザに分かれます。
(1)プロスポーツ選手を指導する場合(興行ビザ3号)
プロスポーツ団体の指導者の場合は、興行ビザ3号を取得します。例えば、プロサッカーチームの監督やトレーナー、コーチなどが該当します。プロスポーツ選手の指導者といえるためには、プロスポーツ選手の活動との「一体性」や「必要性」が認められる必要があります。よって、原則としては、プロスポーツ選手と同じチームに所属して、プロスポーツ団体と一体となって活動することになります。
(2)プロ以外でスポーツ指導をする場合(技能ビザ)
プロスポーツ団体以外でスポーツ指導をする場合は、技能ビザを取得することになります。スポーツの概念は、競技スポーツと生涯スポーツの二つに分けられますが、技能ビザとの関係では、どちらも含まれます。
「技能ビザのスポーツ指導者の要件」
技能ビザとの関係でスポーツ指導者と認められるためには、以下の①又は②の要件を充足している必要があります。
①スポーツ指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む)を有するもの。 |
技能ビザを取得するためには、申請人はスポーツの指導に係る技能について従事していた期間が3年以上必要になります。「報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間」とは、報酬(賞金を含む)を得てプロスポーツ選手としてプロスポーツ競技団体に所属していた外国人が該当します。 3年以上の実務経験を有するとみとめられるためには、学校や企業等に雇用され、仕事としてスポーツの指導者として指導を行っていたことが認められる必要があります。指導する生徒が10人以上いるなど、一定以上の規模が認められるスポーツ指導を日々行っているような活動である必要があります。地域の子供を集めてボランティアや趣味などでスポーツ指導を行っていたような場合は、実務経験として考慮することはできません。 |
②スポーツ選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことのある外国人で、当該スポーツの指導に係る技能を要する従事するもの |
オリンピックや世界選手権に出場経験のある外国人は、それだけで技能ビザの要件を充足します。「その他の国際的な競技大会」とは、地域または大陸規模の総合大会(ヨーロッパ大会など)や競技別の地域または大陸規模の競技会(チャンピオンズリーグなど)が該当します。もっとも、二国間や特定国間の親善試合は含まれません。 |
3,興行ビザ3号とはどんなビザですか?
興行ビザとは在留資格「興行」のことで、外国籍の方が日本で興行を行う場合に必要とされるビザのことです。興行とは「特定の施設において、公衆に対して映画、演劇、スポーツ、演芸又は見世物を見せ、または聞かせる」こと、と定義されます。このように、興行ビザは外国人が日本で芸能活動やスポーツなどのエンターテイメント業界で興行活動を行うことを認めています。このうち興行ビザ3号は、プロスポーツやサーカスその他、演劇・演芸・舞踊・演奏以外の興行活動を、外国人が日本で行う場合に必要となるビザです。
興行ビザは、審査基準が厳しくまた申請方法も難解なので、日本の在留資格の中でも取得が難しいビザとなります。法務省の統計では、興行ビザを有している外国人は、1500~2000人程度とされています。
4,興行ビザ3号の許可要件は何ですか?
興行ビザ3号を取得するためには、以下の①②の許可要件を充足する必要があります。
①申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事すること
興行ビザ3号を取得するためには、日本で行う興行活動が興行ビザ3号に該当する活動である必要があります。興行ビザ3号に該当する活動として、法は上記の通り、演劇・演芸・歌謡・舞踏・演奏以外の興行活動と定めています。このように、興行ビザ3号に該当する活動について、法は抽象的に定めていますが、興行ビザ1,2,4号に該当しない興行活動が、興行ビザ3号に該当するとなります。
②日本人が従事するときと同等若しくはそれ以上の報酬が支払われること
出演者に限らず、制作・運営・同伴スタッフも日本人と同等以上の報酬を受ける必要があります。
5,興行ビザ取得までの手順は、どうなりますか?
興行ビザ取得までの流れは、以下のように進みます。
手順1 在留資格認定証明書交付申請
まずは、在留資格認定証明書交付申請を行います。申請は、招聘機関や契約機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。日本で行う手続きとなるため、代理人が申請する場合は、申請の際に代理人の身分を証明する書類(会社の身分証明書など)が必要となります。多くは、招聘機関が代理人となって申請しています。
興行ビザの審査期間は、およそ1~2か月程度の時間を必要とします。よって、申請の準備には、必要書類の作成や収集に加えて、この審査期間も考慮に入れる必要があります。来日予定の3か月前から申請が可能となります。来日スケジュールに合わせて、申請の準備を行うことが大切です。
なお、在留資格認定証明書の有効期間は3か月です。3か月を過ぎた場合は、在留資格認定証明書は失効してしまいます。よって、在留資格認定証明書の交付が早すぎた場合は、来日までに在留資格認定証明書が失効してしまう危険があるので注意が必要です。
審査の結果、許可されると在留資格認定証明書が交付されます。許可要件を充足し必要書類に不備がない場合は、イベントや撮影のスケジュールを考慮して、早めに在留資格認定証明書を交付してもらえる場合もあります。しかし、時間的余裕を持って申請準備を行うことが重要です。
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手順2 査証申請
申請が許可された場合は、在留資格認定証明書が入管から代理人の下に郵送されてきます。代理人は、この在留資格認定証明書を外国在住の申請人の下に郵送してください。来日スケジュールには、この郵送に必要な時間を考慮に入れることも重要です。
査証の申請は、申請人が在住する国の日本国大使館又は領事館で行います。在留資格認定証明書交付申請と異なり、査証は申請人本人が行う必要があります。よって、申請人は日本から送られてきた在留資格認定証明書を持参して、査証の申請を行ってください。
大使館の審査に必要な期間は、問題がない場合は1週間程度です。許可が下りた場合は、パスポートが「興行」のシールは貼られた状態で、返還されます。
「必要書類」 |
・在留資格認定証明書の原本 ・パスポート ・写真 ・その他の身分証明書 ・ビザの申請書 |
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手順3 入国
在留資格認定証明書の有効期間は3か月です。よって、3か月以内に入国する必要があります。在留資格認定証明書と「興行」と書かれたシールが貼られたパスポートを持参してください。
なお、「上陸の許否」が入管法第5条に定められています。そのため、申請人に過去の薬物犯罪歴がある場合は、日本に入国することができません。上陸許可の特例が認められた場合に入国できているケース(人気ミュージシャン)もありますが、あくまでも例外的なケースです。薬物犯罪は、原則として上陸拒否の対象となります。例外は、認められることは無いと考えたほうが良いと考えます。上記特例は、例外が認められるまで、何度か申請し不許可とされて、ようやく例外が認められています。
6,興行ビザ3号申請の必要書類は何ですか?
興行ビザ3号申請に必要な書類は、以下の通りです。
(1)申請人の必要書類
・在留資格認定証明書交付申請書 1通 |
・証明写真 1葉 縦4cm、横3cm |
・返信用封筒 定型封筒に宛先を記名の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付します。 |
・申請人の経歴書及び活動に係る経歴を証する文書 適宜 申請人の経歴がわかる書面や、活動実績を証明する文書を用意します。実物ではなく、書面で用意する必要があります。 |
(2)招聘機関・契約機関の必要書類
・登記事項証明書 1通 |
・直近の決算書(損益計算書、貸借対照表など)の写し 1通 |
・従業員名簿 1通 |
・請負契約書の写し(招聘機関が興行を請け負っているときのみ) 1通 |
・申請人の日本での具体的な活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書 以下のいずれか ①雇用契約書の写し 1通 ②出演承諾書の写し 1通 ③上記①又は②に準ずる文書 適宜 |
・その他参考となる資料 適宜 滞在日程表・興行日程表・興行内容を知らせる広告・チラシなど |
(3)施設に関する必要書類
興行を行う施設に関する書類を提出することが必要です。
・営業許可書の写し 1通 |
・施設の図面 1通 |
・施設の写真 適宜 |
・従業員名簿 1通 |
・登記事項証明書 1通 |
・直近の決算書(損益計算書、貸借対象表など)の写し 1通 |
7,興行ビザ3号が必要となるスポーツの例
(1)野球
プロ野球は、日本野球機構(NPB)が運営するプロ野球12球団と地区独立リーグに分かれます。12球団に所属する1軍・2軍の外国人選手、地区独立リーグに所属する外国人選手のいずれも興行ビザ3号の取得が必要です。
(2)サッカー
プロサッカーは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が運営するJ1およびJ2に所属するサッカー選手が、興行ビザ3号に該当します。また、プロサッカーチームに所属するホぺイロと呼ばれる練習の準備や選手の世話をする役職がありますが、この場合も外国人ホぺイロは興行ビザ3号の対象となります。
これに対し、日本フットボールリーグ(JFL)はアマチュアスポーツとみなされています。JFLに所属するチームの外国人選手は、特定活動ビザを取得することになります(プロ契約を結んでいる場合を除く)
(3)相撲
財団法人日本相撲協会から力士として証明されている外国人力士は、興行ビザ3号の対象となります。同協会から力士として認定されていれば、番付は問題となりません。
(4)バスケットボール
日本プロバスケットボールリーグ(BJリーグ)所属するチームの外国人選手は興行ビザ3号の対象となります。また、チームに所属するチアリーディングも興行ビザの対象となりますが、この場合は演芸や舞踏に該当するため興行ビザ2号の対象となります。
(5)ゴルフ
プロゴルファーの場合は、賞金が出るゴルフトーナメントに出場する場合は、興行ビザ3号を取得する必要があります。他方、プロゴルファーでも賞金が出ないゴルフトーナメントに出場する場合は、短期滞在ビザとなります。
(6)フットサル
フットサル団体である日本フットサルリーグ(Fリーグ)は、プロリーグと評価されていません。したがって、Fリーグに所属するフットサル選手は興行ビザ3号の対象となりません。
(7)その他興行ビザ3号が必要なプロスポーツ
・プロボクシング選手 ・総合格闘技選手 ・プロレス選手 ・プロテニス選手 ・プロゲーマ― ・ダンス選手(興行のダンス選手権の場合) など |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |