1,永住者の配偶者ビザとはどんなビザですか?

 永住者の配偶者ビザとは、永住者又は特別永住者と結婚した外国人や、永住者の子供として日本で出生した外国人を対象としている在留資格になります。永住者の配偶者ビザは、就労に制限がないなど、活動制限がなく自由な活動が認められています。このように、永住者の配偶者ビザは家族滞在ビザと比較して自由な活動が認められています。夫婦の一方が永住者と認められた場合は、その配偶者は永住者の配偶者となるため、家族滞在ビザから永住者の配偶者ビザへ変更することが好ましいといえます。

2,永住者とは何ですか?

 永住者は、一般永住者と特別永住者に分かれます。以下では、各々について検討します。

(1)一般永住者

 永住者は在留期限が定められることなく、永続的に日本に在留が認められている在留資格になります。この永住者の在留資格を取得するためには、以下の要件と充足している必要があります。このような永住者を一般永住者といいます。

・原則10年以上継続して日本に在留していること
・素行に問題がないこと
・独立生計を営むのに必要な資産や技能を有していること
・対象となる者が永住することにより、日本国に対し利益をもたらすことが認められること。

(2)特別永住者

 特別永住者とは、第二次大戦終結以前から日本国民として日本に居住していた外国人で、サンフランシスコ講和条約により日本国籍を喪失した者とその子孫が該当します。サンフランシスコ講和条約によって日本国籍を喪失した者は、韓国・朝鮮人と台湾人に限られているため、特別永住者はこれらの国籍を有しています。

 特別永住者は、「入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)」が、1991年(平成3年)11月1日に施行され認められた在留資格です。

3,在留資格「永住者の配偶者等」の対象者は誰ですか?

 在留資格「永住者の配偶者等」の対象となる者は、永住者の配偶者と子供です。以下各々検討していきます。

(1)永住者の配偶者

 永住者の配偶者と認められるためには、現に婚姻関係にあることが必要です。この婚姻は法律婚、つまり法的に有効な婚姻関係です必要があります。内縁などの事実婚や同性婚は、法的に有効な婚姻関係とは認められません。

 永住者とその配偶者は同居している必要があります。合理的な理由なく別居している場合は、夫婦として日本国内において共同生活を営んでいるとは認められません。永住者と死別や離婚した場合は、永住者の配偶者とはならないため、永住者の配偶者ビザの対象とはなりません。

(2)永住者の実子

 永住者の配偶者等の「等」には、永住者の実子も含まれます。永住者の子供として認められるためには、永住者の子供として日本で出生している必要があります。また子供は永住者の実子であり、嫡出子と認知された非嫡出子に限られます。よって、実子であっても母親が外国で出産している場合は、永住者の配偶者等ビザの対象となりません。また養子も対象となりません。さらに、永住者の子供が永住者の配偶者ビザの対象となるためには、以下の要件のいずれかを満たしている必要があります。

・出生時に父親あるいは母が永住者として日本で暮らしていたこと。
・出生以前に父親が死亡したが、その父親の死亡の際に永住者ビザを持っていたこと

4,永住者の配偶者等ビザの在留期間はどれくらいですか?

 永住者の配偶者ビザでは、5年、3年、1年、6月のいずれかの期間日本に在留することが認められます。この認められる在留期間は、配偶者との婚姻期間や安定性、申請書記載の滞在予定期間などを総合的に考慮し、入管の裁量によって決定されます。よって、希望する在留期間が当然に認められるわけではありません。5年、3年という長期の在留期間が認められるためには、日本で長期間継続的かつ安定的に永住者との婚姻生活を維持している必要があります。

5,永住者の配偶者等ビザの許可要件は何ですか?

 永住者の配偶者ビザを取得するためには、許可要件を充足している必要があります。永住者の配偶者と子供では、それぞれ許可要件は異なってくるため、以下では各々検討します。

(1)永住者の配偶者の許可要件

 永住者の配偶者と認められるためには、法律婚である必要があります。よって事実婚の場合や婚約段階にある場合は、永住者の配偶者とは認められません。また、日本の民法は同性婚を認めていないため、母国において法律上有効に成立している同性婚の場合でも、日本では法律上有効な婚姻関係とは認められません。

 婚姻関係は、実態のある婚姻である必要があります。よって合理的な理由がない限り同居していない場合は、実態のある婚姻関係とは認められません。

 永住者の配偶者ビザを取得するためには、日本で生計を維持できることが必要となります。よって、原則として永住者は生計を維持できる収入を得ている必要があります。もっとも、永住者が被扶養者となる場合もあります。この場合は、永住者の配偶者の収入や貯蓄など勘案し、世帯として生計を維持できると認められる必要があります。

(2)永住者の子供の許可要件

 永住者の子供が、在留資格「永住者の配偶者等」を取得するためには、永住者の子供として日本で出生し、出生後も継続して日本に在留していることが必要です。永住者の子供が未成年の場合は、扶養者の扶養を受けて生活していることが条件となります。

 もっとも、永住者の子供として日本で出生した場合でも、出生から30日を経過すると永住者の配偶者等ビザを申請できなくなるので注意が必要です。また、以下のような場合は、永住者の子供であっても、永住者の配偶者ビザを取得することはできません。

・日本国外で出生した後に来日した場合
・日本で出生していても、出生後、長期間海外に滞在していた場合
・日本で出生はしているものの、出生時点で両親が永住者でない場合

 上記のような場合で、永住者の子供であっても在留資格「永住者の配偶者等」に該当しない場合は、在留資格「定住者」に該当します。

(3)生計要件について

 永住者の配偶者等ビザの許可要件の1つに生計要件というものがあります。この生計要件は、日本で安定継続的に生計を維持できることを要求しています。生計要件を充足するための目安としては、夫婦2人の場合は永住者に年収300万円以上あることが好ましいといえます。また子供がいる場合には、被扶養者1人につき+80万円を上乗せして考える必要があります。つまり、夫婦2人子供1人の3人家族の場合は、年収380万円以上あることが好ましいといえます。この一人80万円の根拠は、生活に最低限必要な金額である国民年金の年間支給額に求められます。

6,永住者の配偶者ビザ申請で不利益に働く事情は何ですか?

 永住者の配偶者の場合は、活動内容に真実性が認められるか、つまり「婚姻の信ぴょう性」について厳格に審査されます。永住者の配偶者ビザは就労制限がないため、不正にビザを取得する事例も少なくありません。よって、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じた場合には不許可にあります。その他、納税義務その他公的義務を果たしていない場合や素行不良があった場合なども不利に働きます。以下では、永住者の配偶者ビザ審査に不利益に働く事情について検討します。

(1)年齢差がある場合や交際期間が短い場合

 永住者とその配偶者との間に年齢差がある場合は、婚姻の信ぴょう性という観点から入管の審査は慎重になります。年齢差のある婚姻の場合は、ビザ取得後に婚姻の実態がなくなるという傾向が多いという実情があります。よって、具体的には年齢差が15歳以上の場合は注意が必要です。さらに20歳以上の年齢差の場合は、審査は非常に厳しくなることを念頭に置いておく必要がります。

 交際期間が短い場合も、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなります。具体的には、結婚に至るまでの交際期間が3か月未満といった場合は、婚姻の信ぴょう性という観点から審査が非常に厳しくなります。

(2)結婚相談所で出会った場合

 結婚相談所には、偽装結婚をあっせんする悪質なブローカーであることもあります。実際に、結婚相談所を介した偽装結婚の事例も少なくありません。よって、結婚相談所を介した結婚の場合は、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなります。

(3)離婚歴が多い場合

 永住者又は永住者の配偶者の離婚歴が多い場合は、婚姻の信ぴょう性に関し疑義が生じやすくなります。特に、離婚歴が3回以上の場合や婚姻期間が短い場合は、偽装結婚との疑義が生じやすくなり審査が非常に厳しくなります。

(4)出会いが外国人パブ

 出会いが外国人パブやスナックの場合は、婚姻の信ぴょう性に関し疑義が生じやすくなります。過去には、外国人材の斡旋業者などが虚偽の履歴を申請していたこともあります。興行ビザから永住者の配偶者ビザへの変更などの場合は、注意が必要です。

(5)結婚後風俗関連で就労予定

 永住者の配偶者ビザでは就労制限がないため、風俗関係で就労することも認められています。しかし、就労制限のないビザを除き、外国人が風俗関係で働くことは原則として禁止されています。申請書には、「入国後の職場について」という記載項目があります。この欄に、風俗関係で就労する予定であることを記載すると、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなります。

(6)住居が狭い

 永住者の配偶者ビザでは、婚姻の実態があること必要です。よって、夫婦は同居することが前提です。この場合に住居が1Kといった、夫婦の同居という観点からあまりに狭い場合は、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなります。家族構成に見合った住居の広さがあるか否かが審査されます。

(7)上記不利益事項への対策

 婚姻の信ぴょう性の立証責任は、申請者側にあります。つまり、真摯な婚姻意思による婚姻であることを証明できなかった場合は、申請は不許可になります。その証明のためには、提出書類の1つである質問書の質問事項である婚姻に至った経緯の質問では、出会いの経緯や交際に至った経緯、交際から結婚に至った経緯を、具体的に説明していくことが重要です。そして、それを裏付ける写真やメール、通話記録などの立証資料を提出していくことが重要です。

7,永住者の配偶者ビザ申請の必要書類は何ですか?

 上記で検討した在留資格「永住者の配偶者等」の許可要件を充足していることの証明は、証明資料を提出して証明します。永住者の配偶者と子供では、許可要件が異なっているため、必要とされる書類も異なってきます。以下では、各々の必要書類を検討します。以下の他にも、審査の過程で追加資料を要求されることもあります。

(1)永住者の配偶者の場合

①在留資格認定証明書交付申請書
②写真1葉
 申請前の3か月以内に正面から撮影されたもの。無帽、無背景で鮮明なもの。サイズは縦4cm×横3cm。
③簡易書留用返信用封筒
 審査結果は郵送で通知。404円分の切手を貼付。
④婚姻届受理証明書
 婚姻届を日本の役所に提出している場合に必要。
⑤配偶者となる永住者の住民税課税証明書あるいは非課税証明書、または納税証明書
 1年間の総所得と納税状況が記載され、かつ配偶者となる永住者が申請人から扶養を受けているといった場合は、申請人のものが必要。
⑥身元保証人
  原則として身元保証人は日本に居住する配偶者となる永住者。
⑦配偶者となる永住者の住民票
 世帯全員の記載があるもの。
⑧質問書
 入国管理局の指定した用紙。
⑨スナップ写真
  配偶者となる永住者と二人で撮影したものや結婚式や双方の親族の食事会などで撮影したもの3枚以上

(2)永住者の子の場合

①在留資格認定証明書交付申請書
②写真1葉
  申請前の3か月以内に正面から撮影されたもの。無帽、無背景で鮮明なもの。サイズは縦4cm×横3cm。
③簡易書留用返信用封筒
  審査結果は郵送で通知。404円分の切手を貼付。
④出生届受理証明書
 出生届が受理されていることを証明するもの。
⑤親となる永住者の住民税課税証明書あるいは非課税証明書、または納税証明書
  1年間の総所得と納税状況が記載されているもの。
⑥身元保証書
  原則身元保証人となる者は日本に居住する親である永住者。
⑦親となる永住者の住民票
  世帯全員について記載が必要。
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法