目次
1,技能ビザとはどんなビザですか?
技能ビザとは在留資格「技能」のことで、熟練技能労働者を外国から受け入れることを目的としています。技能ビザでは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事することが認められています。この熟練した技能を要する業務として認められる仕事は、出入国管理及び難民認定法によって定められています。入管法では1~9号に分けて、技能ビザで就労することが認められる9職種を定めています。このうち料理人は1号に該当し、熟練した技能を要する業務として認められています。
なお、技能ビザで認められる在留期間は、3月、1年、3年、5年のいずれかです。
技能ビザ | 対象職種 |
1号 | タイ料理、中国料理、フランス料理、インド料理、ネパール料理などの調理師 |
2号 | 中国式、韓国式、ゴシック式、ロマネスク式、バロック式などの建築技術者 |
3号 | ペルシャ絨毯、ヨーロッパガラス製品、シューフィッターなどの外国特有製品の製造、修理 |
4号 | 宝石、貴金属、毛皮加工などの技能者 |
5号 | 動物の調教 |
6号 | 石油・地熱等掘削調査 |
7号 | パイロット(航空機操縦士) |
8号 | スポーツの指導者 |
9号 | ソムリエ(ワイン鑑定等) |
2,タイ料理の場合の技能ビザの許可要件は何ですか?
タイ料理の料理人が、技能ビザを取得するために充足しなければならない許可要件は、以下の2点です。
①タイ料理の調理師として5年以上の実務経験を有していること ②日本人の料理人が受ける報酬と同等以上の報酬を受けること |
①タイ料理の調理師として5年以上の実務経験を有していること |
料理人分野で技能ビザを取得する場合は、許可要件として10年以上の実務経験を有していることが要求されます。しかし、タイ料理の場合は、「5年以上の実務経験」を有していれば十分です。日本国政府とタイ政府は経済連携協定を結んでいるため、この協定によって必要とされる実務経験年数が緩和されています。 実務経験年数として認められるのは、タイ料理の料理人として調理業務や食品製造に従事した期間となります。タイ料理店に勤務した期間ではありません。よって、見習時代に会計や接客といった業務に従事していた場合は、実務経験年数に計算することはできません。また、タイ国内の調理師専門学校でタイ料理を学んでいた場合は、この就学期間も実務経験年数に計算することも認められます。もっとも、日本の調理師専門学校の場合は、就学期間を実務経験年数に計算することはできません。 なお、熟練した技能を有すると認めされるためには、コース一式を調理できる技能を有している必要があります。もっとも、実際にコース料理を提供する必要まではありません。特定のメニューしか調理できない場合は、熟練した技能を有するとは言えません。 |
②日本人の料理人が受ける報酬と同等以上の報酬を受けること |
「日本人の料理人が受ける報酬と同等以上の報酬」とは、外国人であることを理由に、賃金や待遇に関し日本人との間に差異を設けてはならない、ということです。また、受入れ機関についても、給与を支払う能力があるのか、タイ料理の料理人を雇用する必要性などについて審査されます。 |
3,タイ料理人の技能ビザ申請の必要書類は何ですか?
タイ料理の料理人が技能ビザ申請をする場合に必要となる書類は、以下の通りです。
申請人本人の必要書類 |
・在留資格認定証明書交付申請書 ・申請人の写真 ・返信用封筒 ・申請人の履歴書 ・5年以上の実務経験を証明する文書 ・熟練した技能を有することを証する文書 ・申請日直前の1年のうち、タイ料理人として妥当な報酬を受けたことを証明する文書 ・パスポートのコピー |
会社の必要書類 |
・本人の履歴書 ・採用理由書 ・登記事項証明書 ・定款のコピー ・会社案内 ・直近年度の決算報告書のコピー ・飲食店営業許可証のコピー ・メニューのコピー ・店舗の平面図 ・店舗の写真(外観、看板、入口、店内、厨房など) ・店舗の不動産賃貸借契約書のコピー ・「四季報の写し」または「日本の証券取引所に上場していることを証明する書類(上場企業)」 ・法定調書合計表(受付印のあるもの)のコピー(前年分の源泉徴収税額が1500万円以上の企業) ・雇用契約書または役員に就任する場合は、役員報酬を決議した株主総会議事録(前年分の源泉徴収税額が1500万円以上の企業) |
4,技能ビザ取得までの手順はどうなりますか?
技能ビザ取得までは、以下のような流れで進んでいきます。
①必要書類の収集と申請書類の作成 ↓ | 上記3に挙げた必要書類を収集し、申請書類を作成します。 |
②ビザ申請 ↓ | ①で作成した申請書類を入管に提出して、在留資格の認定や変更の申請をします。 |
③審査 ↓ | 審査期間は、およそ1~3か月程度です。 |
④結果通知 ↓ | 審査の結果、許可不許可が決定されます。許可不許可の結果は、郵送で通知されます。 |
⑤在留資格認定証明書を申請人もとに郵送 ↓ | 外国から料理人を呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書を申請人のもとに国際郵便で送付してください。 |
⑥査証取得 ↓ | 本国の日本国大使館または領事館に在留資格認定証明書の写しを提出して査証申請してください。 |
⑦入国・在留カード取得 | 査証を取得したら入国してください。来日する際には、必ず在留資格認定証明書を持参してください。また、入国したら在留資格認定証明書を入管に提出して在留カードを取得してください。 |
5,料理人分野の技能ビザの審査は厳しいですか?
料理人分野の技能ビザの審査は、年々厳しくなっています。料理人分野の技能ビザは、不法就労や不法滞在の温床になっている実情があります。実際に、不法就労者を雇用したことによって、会社役員が入管法違反で逮捕されているケースは少なくありません。また、実務経験に関する証明資料の偽造、外国人従業員に対する給与未払いや低賃金といった劣悪な労働環境も報告されています。
このような背景から、料理人分野の技能ビザでは実務経験の立証は難しくなっています。過去にタイで就労していた料理店などに、入管は連絡を入れ調査します。そして、当該料理店が実在しない場合や、閉店などで事実確認が取れなか場合は、不許可とされてしまいます。よって、十分な立証資料を用意して事実を証明していくことが不可欠です。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |