目次
1,留学生が卒業した場合留学ビザはどうなりますか?
外国人留学生は、留学ビザ取得して日本に在留しています。留学ビザには在留期間が付与されており、在留期限満了の日まで日本に滞在することが認められます。留学ビザの目的は、日本の教育機関で教育を受けることです。よって、学校を卒業した場合、つまり日本の教育機関で教育を受けなくなった場合は、留学ビザで日本に滞在を続けることはできません。留学生が学校を卒業した場合で、日本に在留し続けるためには、適切な在留資格に変更する必要があります。
留学生の卒業後の進路として考えられる場合は、以下が考えられます。学校を卒業したらそれぞれの進路に応じた手続きを行うことが必要です。
・卒業後、母国に帰国する ・日本の会社に就職する ・日本で起業する ・日本の大学や大学院など進学する |
2,卒業後母国に帰国する場合に必要な手続きは何ですか?
日本の大学や専門学校などを卒業した後、母国に帰国して就職や起業その他進学などする外国人は少なくありません。学校を卒業した後に帰国する場合には以下の手続きをとる必要があります。
(1)手続不要
卒業後すぐに帰国する場合は、在留資格の変更や更新などの手続は基本的に必要ありません。出国の際に、空港で在留カードを入管に返却してください。もっとも、卒業直前に在留期限が到来する場合は、卒業までの期間の在留期間更新手続きが必要になります。
(2)卒業後、出国準備期間が必要な場合
学校を卒業して後に、出国準備にための在留が必要な場合もあります。学校を卒業した場合は、留学ビザの在留期間が残っていても、留学ビザで在留を継続することはできません。卒業後はすぐに帰国することが原則です。しかし、学校を卒業後すぐに在留期限が到来し、出国準備が間に合わない場合もあります。このように、出国準備ために日本滞在が必要な場合は、短期滞在ビザに変更する必要があります。
(3)短期滞在ビザに変更した場合の注意点
短期滞在ビザに変更した場合は、留学ビザで資格外活動許可を取得していたとしても、アルバイトすることは認められません。資格外活動許可は、本来の在留資格に基づく活動を行っていることを前提に許可されているものです。よって、学校を卒業した場合は、アルバイトをすると不法就労となります。
短期滞在から他の中長期の在留資格への変更は、原則として認められていません。短期滞在ビザの更新も原則として認められていません。また短期滞在ビザへ変更した場合は、中長期在留者でなくなります。この場合、自治体の給付などは受けられなくなります。
3,日本の会社に就職する場合の手続きは何ですか?
(1)日本の会社に就職が決まっている場合
学校を卒業後、日本の会社に就職することが決まっている場合は、適切な就労ビザに変更する必要があります。日本の就労ビザ、つまり就労可能な在留資格は19種類あります。卒業後に従事する業務内容に応じた就労ビザに在留資格変更許可申請を行ってください。
代表的な就労ビザは在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。この場合は、大学や専門学校での専攻と関連した業務を行うことができます。また、介護福祉士の国家資格を取得して、介護福祉施設に就職する場合は在留資格「介護」、日本の小学校・中学校・高等学校で語学教師をする場合は在留資格「教育」に変更します。
卒業後に就職が決まっていたとしても、留学ビザのままでは就労することは認められません。留学ビザから適切な就労ビザへの変更が許可されるまでは、就労が認められないので注意が必要です。就学ビザから就労ビザへの変更許可申請の審査期間は、1~3か月程度です。就労開始までに就労ビザへ変更できるように、1~3か月逆算して変更許可申請を行うことが好ましいと考えます。多くの日本の学校は3月に卒業し4月に入社することが一般的です。そして、入管は前年の12月頃から就労ビザの変更許可申請を受け付けています。
(2)日本の会社に就職が決まっていない場合
日本の学校を卒業後に日本の会社に就職することを希望しているが、卒業後まだ就職先が決まっていない場合は、「就職活動特定活動ビザ」に変更する必要があります。就職活動特定活動ビザでは、6か月の在留が認められます。そして、1回だけ更新することが認められています。したがって、合計で1年間就職活動を目的として在留することが認められます。就職活動特定活動ビザを取得するためには、以下の4つの許可要件を充足している必要があります。
①学校を卒業する以前から就職活動をしていること |
就職活動特定活動ビザは、留学生が在学中から就職活動をしているが卒業までに就職先が決まらなかった場合に許可されます。したがって、在学中から就職活動を行っていたことを証明する必要があります。立証資料としては、会社説明会のパンフレットや、面接を受けた企業とのメールなどの交信履歴などを提出します。 |
②卒業した学校からの推薦状 |
卒業した学校から推薦状を取得することが要件です。日本で就職活動を行う為に在留資格を変更申請することがふさわしい人物であることを推薦してもらいます。推薦状の様式は出入国在留管理庁のホームページに掲載されています。 https://www.moj.go.jp/isa/content/930002543.pdf |
③専門学校卒業の場合は「専門士」の称号取得 |
日本の専門学校を卒業している場合は、技術人文知識国際業務ビザへ変更申請することが可能ですが、専門士の称号を取得していることが必要です。よって、就職活動特定活動ビザを取得する際も専門士の称号を取得していることが要件となります。 |
④日本語学校卒業の場合は、外国の大学卒業者であること |
日本語学校卒業の場合は、原則として就職活動特定活動ビザを取得することはできません。もっとも、日本語学校以前に外国の大学や大学院を卒業している場合は、変更が可能です。 |
4,日本で起業する場合に必要な手続きは何ですか?
学校を卒業した留学生が日本で起業することも進路の1つとして考えられます。学校を卒業した後、会社を設立してビジネスを始める場合には、経営管理ビザへ変更する必要があります。
また、学校卒業後に会社設立の準備など、起業準備の為に日本に在留する必要がある場合もあります。この場合は、スタートアップビザ(在留資格「特定活動」)に変更することも可能です。スタートアップビザは、起業準備を進めている優秀な留学生を対象としている制度です。よって、スタートアップビザは、特定活動の在留期間中に起業準備を完了し、経営管理ビザを取得する見込みのある留学生に許可されます。
5,日本の大学や大学院に進学する場合に必要な手続きは何ですか?
日本の学校を卒業後に、大学や大学院その他専門学校など他の学校に進学する場合は、現在の留学ビザを変更する必要はありません。学校が変わったとしても、日本の教育機関で教育を受けるという留学ビザの活動内容に変更がありません。もっとも、所属機関の変更の届出を行う必要があります。
「所属機関等に関する届出」には、所属機関の変更の内容に応じて、「活動機関に関する届出」「契約機関に関する届出」「配偶者に関する届出」の3種類あります。必要な届出は在留資格によって異なってきます。この届出の期限は、所属機関に変更があった日から14日以内です。留学ビザの留学生が転校した場合に必要な手続きは、「活動機関に関する届出」になります。転校して所属機関である学校の移籍や離脱などの変更があった場合に提出してください。
別の学校に進学した後に留学ビザの在留期限が到来した場合は、留学ビザの更新許可申請を行う必要があります。
別の学校に進学する直前に在留期間が満了する場合は、在籍学校の成績証明書、卒業証明書、在学証明書に加え、卒業(見込)証明書と進学先の入学許可証を更新申請時に提出してください。卒業後は進学することを前提として更新の審査がされます。
別の学校に進学した直後に在留期間が満了する場合は、進学先の在学証明書に加えて、卒業した学校の出席証明書、成績証明書、卒業証明書も更新申請時に提出してください。更新申請の審査では、卒業した学校での勉学状況を評価してもらえます。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |