1,短期滞在ビザの180日ルールとは何ですか?

 短期滞在ビザの180日ルールとは、短期滞在ビザでの日本在留は年間で合計180日を超えて在留することが認められないという180日の制限のことです。つまり、短期滞在ビザでは最大90日間滞在することが認められますが、短期滞在ビザを何度も取得して出入国を繰り返しても年間合計180日を超えて日本に滞在することはできません。

 もっとも、この180日ルールには法的根拠はありません。つまり、出入国管理及び難民認定法に180日ルールに関する根拠条文はありません。180日ルールは、入管審査の実務で運用されているルールとなります。

 180日ルールは根拠法令があるわけではないので、「絶対に180日を超えて短期滞在ビザで滞在できない」という絶対的なものではありません。しかし、180日ルールは入管行政実務において運用されているため、180日を超えた場合は、例え「特別の事情」があったとしても、短期滞在ビザの審査は非常に厳しくなります。なお、特別の事情とは以下のような場合を指します。

「特別の事情例」
・重篤な病気で治療の必要があり帰国が困難
・妊娠している場合で、日本で出産する必要があるため帰国が困難
・出産後の経過が悪く日本で治療の必要があり帰国が困難

2,180日ルールの制度趣旨は何ですか?

 上記のような180日ルールが設けられている制度趣旨には理由があります。短期滞在ビザは、文字通り短期の滞在を目的としたビザです。年間180日を超える滞在が「短期」滞在と言えるか、という点が問題となります。

 入管は短期滞在を「日本に生活の本拠がない」と考えています。そして、その判断基準の1つとして、年間180日以内と考えています。年間180日を超える滞在は中長期の在留に該当し、中長期の在留資格と区別化され短期滞在ビザは審査されます。また、年間180日を超える滞在を認めると、就労の可能性や機会が多くなることも理由として挙げられます。

3,180日の計算はどうしますか?

 180日を計算するにあたっての起算点は、滞在予定期間の最終日つまり帰国予定日を起算とします。帰国予定日から遡った1年間の滞在日数を計算します。

 例えば、短期滞在ビザ申請で、令和6年2月1日を出国予定日として申請したとします。この場合は、この出国予定日から1年遡った令和5年2月1日までが対象の範囲となります。この1年間の間に合計で180日という180日ルールが適用されます。

 滞在日数を計算する際には、パスポートに出入国のスタンプが押されていると思いますので、スタンプの日付をもとに計算してください。

具体例
①令和6年1月1日~令和6年1月31日(31日間滞在)
②令和6年3月1日~令和6年3月31日(31日間滞在)
③令和6年5月1日~令和6年6月30日(61日間滞在)
合計123日滞在
 上記のように、短期滞在ビザで3度の入国し、既に合計123日間日本に滞在している場合は、残り57日となります。この場合に4度目の入国のために短期滞在ビザ申請する場合で、57日を超える90日間の滞在予定で申請した場合は、許可の可能性が非常に低くなります。この場合は、57日を超えない15日や30日で滞在予定を組んで申請することが、許可の可能性という観点からは望ましいといえます。

4,90日の短期滞在ビザで60日滞在した場合はどうなりますか?

 前回入国した際に90日の短期滞在ビザを取得し、60日間日本に滞在し帰国した場合に、90日と60日のいずれで計算すべきか、問題となります。この場合は、前回入国の滞在期間は60日で計算します。180日ルールで計算される滞在期間は、外国人が実際に滞在した期間で計算されます。出入国の際にパスポートに押されたスタンプの日付をもとに計算してください。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法