研修ビザ(在留資格「研修」)と技能実習との違いは何ですか?
目次
1,研修ビザとはどんなビザですか?
(1)研修ビザ概要
研修ビザとは、在留資格「研修」のことで、入管法上「本邦の公私の機関により受け入れられて行う技術、技能又は知識の習得をする在留資格」と定義されます。
この「研修」では、原則として「実務研修」が認められていません。よって、株式会社などの民間企業が、研修ビザで外国人を招聘する場合は、実務研修をさせることはできません。基本的に座学の研修に限られます。例外として、公共機関等に受け入れられて研修を行う場合は実務研修が認められます。
研修ビザでは1年、6月、3月のいずれかの在留期間が認められます。この在留期間は、予定されている研修期間などを考慮して、入管の裁量によって決定されます。
(2)実務研修の意味
実務研修とは、「労働の対価を得てサービス提供を行う業務に従事することにより技能等を習得する研修や商品の生産、販売をする業務」を意味します。例えば、建設現場の現場作業や工場のライン工、飲食店や小売店の接客といった作業の研修は、研修ビザでは認められません。基本的には、座学での研修が認められます。
実務研修の例 |
・商品の生産や販売を行う業務 ・対価を得てサービスの提供を行う業務に従事することにより技能等を習得する研修 |
(3)研修生は労働者か否か
研修ビザで来日する外国人の身分は、労働するために来日しているわけではないので、労働者という身分にはなりません。座学での研修を目的として来日しているため「研修生」という身分になります。
労働者ではないため、研修ビザの外国人との間に「雇用契約」は必要ありません。研修ビザで来日する外国人に、雇用保険や労災保険は適用されません。また、労働基準法をはじめ労働関係諸法規の適用もありません。よって、給金を支払い場合も、賃金ではなく「研修手当」となります。時間外労働や休日労働という概念もありません。もっとも、このように労働者ではないからといって、研修計画で定められた時間外に座学研修をさせることはできません。
(4)研修ビザの問題点
研修ビザは、上記で検討した通り、例外を除いては、実務研修は認められず座学による研修を目的としたビザです。しかし、単純労働をさせるために研修と称して研修ビザによって外国人を招聘し、低賃金によって違法就労させている実態も報告されています。技能実習ビザが研修ビザとは別に制度化された背景には、このような研修ビザの問題点も一つの要因としてあります。
2,技能実習ビザとはどんなビザですか?
(1)技能実習ビザ概要
技能実習ビザとは、在留資格「技能実習」のことで、「日本で開発されて培われた技能・技術・知識を開発途上国などに移転すること」を目的としています。技能実習ビザは、このように「人づくり」によって開発途上国の経済発展に寄与するという、国際協力を目的としたビザです。
技能実習ビザでは、通算で3年間の在留が認められています。建設業などの業種によっては、通算で5年間の在留が認められます。
(2)技能実習生は労働者か否か
外国人技能実習生は、労働を通じて技能実習を行うので「労働者」に位置付けられます。このように技能実習生は、労働者に位置付けられるため、労働基準法や最低賃金法といった労働関係諸法令が適用され、過酷な労働環境に置かれることがないように法律上保護されます。
外国人技能実習生は労働者であるため、「雇用契約」に基づき技能を身につけるため実習を行うことになります。労働者として、雇用保険や労災保険などの社会保険も適用され、同様の業務に従事する日本人従業員と差別的に取り扱うことは認められません。
(3)実務研修の可否
技能実習ビザは、技能実習を通して技能や技術を身につけ開発途上諸国に移転することを目的とした制度です。よって日本で実務経験を積むことを目的としているので、当然に実務研修が可能です。原則として実務研修が認められず座学研修に限られている研修ビザと比べて、実務研修を目的としている点が技能実習の特徴です。
3,研修ビザと技能実習ビザとの違いは何ですか?
上記で検討した通り、研修ビザと技能実習ビザは制度趣旨が類似していることもあり、混同を招きやすいビザになります。以下では、研修ビザと技能実習ビザを比較検討します。
(1)研修ビザ
実務研修 | 不可 注)例外として公的機関での実務研修は可能(労働者ではなく、あくまでも研修生) |
労働者か否か | 研修生 |
給付について | 研修手当 |
給付されるお金の意味 | 日本で生活するための実費 |
雇用契約 | 不要 |
労働関係諸法令 | 適用範囲外 注)準拠はする |
時間外労働や休日労働 | 不可(労働者ではないから) |
(2)技能実習ビザ
実務研修 | 可 (技術などを実際学んで母国にその移転することが目的) |
労働者か否か | 労働者 |
給付について | 賃金 |
給付されるお金の意味 | 労働の対価としての性格 |
雇用契約 | 必要 |
労働関係諸法令 | 適用される |
時間外や休日労働 | させられる(労働者のため) |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |