介護分野で働ける就労ビザ(在留資格)は何ですか?

1,介護分野で働ける就労ビザはありますか?

 福祉施設などで働く介護職は、現在深刻な人手不足状況に陥っています。このような背景を受けて、介護分野における人手不足状況に対応するため、外国人材の確保に向けて出入国管理及び難民認定法も、外国人に介護分野での就労に門戸を広げています。現在、外国人が介護分野で就労することが認められる在留資格は4種類あります。もっとも、この4つの種類の在留資格は、各々の制度趣旨や目的がことなり、申請人の経歴や保有資格によって取得できる在留資格は異なってきます。

2,介護分野で働ける就労ビザは何ですか?

 上記1で検討した通り、介護分野で働ける在留資格には4種類があります。具体的には、在留資格「介護」「技能実習」「特定技能」と「特定活動(EPA)」です。以下では各々について検討していきます。

(1)在留資格「介護」

 介護分野で働ける就労ビザの代表格は介護ビザ(在留資格「介護」)です。介護ビザを取得するためには、介護福祉士養成施設(大学や専門学校)を卒業し、介護福祉士の国家資格を取得する必要があります。また、介護分野の特定技能や技能実習その他資格外活動などで、3年以上の実務経験を有している場合は、実務者研修を受講することによって介護福祉士の国家試験を受験することができます。このような過程を経て、介護福祉士の国家資格を取得した場合も介護ビザを取得することができます。

 介護職で働ける他の就労ビザと比較して、在留資格「介護」の取得には次の2つの利点があります。

①在留期間の上限がなく、永住申請も可能
 在留資格「介護」を取得するためには、介護福祉士の国家資格が必要とされているように、専門人材と認められます。よって、技能実習や特定技能と異なり、介護ビザには在留期間の上限が設けられていません。したがって、更新許可要件を充足する限り、何度でも在留期間の更新をすることができます。このように、永続的に就労することができることが、介護ビザの利点です。また、原則10年の在留その他の許可要件を充足すれば、永住申請をすることも可能です。
②自主的な採用が可能
 特定技能や技能実習には、日本に受け入れることができる外国人について上限が定められています。そのため、外国人を受入れるに当たって調整する受入調整機関が存在します。
 これに対して、介護ビザには受入調整機関の存在がないため、自主的な採用活動ができます。福祉施設などの事業者が、大学や専門学校などの介護福祉士養成施設と提携して、卒業生を採用することも可能です。

(2)在留資格「特定技能(介護分野)」

 特定技能制度は、日本社会における人手不足状況を背景に、人手不足が顕著な産業分野において、一定の専門性や技術を有し即戦力となりうる外国籍労働者を受け入れていくことを目的とした制度です。介護分野も、この人手不足が顕著な産業分野に該当します。特定技能ビザは、この人手不足に対応し日本経済社会の持続可能性を維持していくことを目的としています。

 在留資格「特定技能(介護分野)」を取得するためには、特定技能介護分野の技能検定試験及び日本語試験に合格している必要があります。なお、技能実習2号を良好に修了した者については、上記試験は免除されます。特定技能ビザには、介護ビザと異なり、以下のような在留期間の上限が設けられています。

在留期間通算5年の上限
 特定技能ビザには、在留期間の上限が設けられています。特定技能ビザで日本に在留できる期間は、通算で5年間です。よって、在留期間5年間を経過した場合は、特定技能ビザの在留期間更新許可申請は認められません。もっとも、上記2(1)で述べた通り、実務経験を経て介護福祉士の国家試験を受験することができます。この試験に合格し、介護福祉士の国家資格を取得した場合は、在留資格「介護」への変更申請も可能になります。

(3)在留資格「技能実習(介護職)」

 技能実習制度とは、外国人技能実習生が、本国において習得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を日本で達成することを目的としています。技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行わることになります。外国人技能実習生は、日本の企業や個人事業主などの技能実習者と雇用契約を結び、在留が認められる期間は最長5年間とされています。このように、在留資格「技能実習」は、技術移転による国際協力を目的とした制度であるため、介護ビザと異なり帰国が前提のビザとなっています。

①在留期間通算5年の上限
 上記の通り、技能実習は技術移転による国際協力を制度趣旨としているため、技能実習ビザで認められる在留期間が通算で5年という上限が定められています。また、自動的に5年間在留が認められるわけではなく、1~2年ごとに試験があり、合格すれば最長5年間まで更新が認められます。
 まず、入国の1年後に試験があります。この試験に合格すると更新が認められ実習を継続することができます。さらに2~3年後にまた試験があります。この試験に合格すると更新が認められ、更に2年間の実習を継続することができます。
 技能実習ビザは帰国することが前提となっていますが、上記の通り技能実習良好修了者は特定技能ビザへの変更申請を行うことができます。また、技能実習によって介護福祉士国家試験の受験資格を取得し、この国家試験に合格して介護福祉士の資格を取得した場合には、介護ビザへの変更も可能です。
②技能実習から介護ビザ変更の注意点
 上記の通り、介護福祉士の国家資格を取得した場合は、技能実習から介護ビザへ変更申請することも可能です。しかし、前述の通り、技能実習は帰国して母国に技術や知識を移転することを目的としているため、帰国することが前提のビザとなります。よって、技能実習から介護ビザへの変更申請が許可されるためには、「技能実習で学んだ技能等について本国への移転に勤められること」が要件となります。日本在留を継続しながら、技能移転をどのように実現していくのか、理由書などで合理的に説明していくことが重要です。

(4)在留資格特定活動(EPA)」

経済連携協定では、介護福祉士候補者として外国人を受け入れています。このEPAとは、経済活動の連携強化を目的とした日本国と相手国との間の取決めのことで、現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から外国人を受け入れています。EPAに基づき介護福祉士候補者として入国し、介護福祉士養成施設卒業又は実務経験を経ることによって、介護福祉士の国家資格を取得することができます。

①入国要件の日本語能力
 この制度では、入国要件として日本語能力試験に合格していることが必要です。インドネシア、フィリピンの場合は日本語能力試験N5以上、ベトナムの場合は日本語能力試験N3以上に合格していることが必要です。なお、インドネシア人及びフィリピン人候補者の約9割は、就労開始時点でN3程度の日本語水準に到達しています。
 さらに、入国後も日本語や介護に関する基本的な研修を経たうえで、介護施設で介護福祉士候補者として雇用されます。この研修の前後で、介護福祉施設とのマッチングが行われます。 
②介護ビザへの変更
 この制度で入国した場合は、入国してから4年目に介護福祉士の国家試験を受験することになります。国家試験に合格し、介護福祉士の国家資格を取得すれば、介護ビザへ変更申請が可能になります。上記2(1)の通り、介護ビザでは更新に上限がなく、永続的な就労が可能となります。また、永住申請の可能性も見えてきます。
 なお、残念ながら国家試験に不合格となった場合は、帰国することになります。

3,終わりに

 上記の通り、介護分野で働ける在留資格には4種類があります。しかし、法改正や上陸基準省令の見直しが、比較的頻繁に行われている分野でもあります。そのため、各在留資格の取得や特定技能ビザから介護ビザへの変更は複雑になっています。よって、在留資格を取得する際には、各々の制度趣旨を把握し、いかなる目的をもって外国人材を雇用していくのか、明確にしておく必要があると考えます。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」  
同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
明治大学法科大学院修了  
「専門分野」  
入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法