飲食業で働ける就労ビザは何ですか?
目次
1,ホールやキッチンで働ける就労ビザは何ですか?
飲食店のキッチンやホールで働ける在留資格は、主に「特定技能(外食業)」、「特定活動46号」、「技能」の3種類になります。また、留学ビザや家族滞在ビザは就労が認められていませんが、資格外活動許可を取得することによってアルバイトが認められます。なお、日本人の配偶者等、永住者、定住者は就労制限がないため就労することができますが、就労ビザではないため、ここでは割愛します。
(1)在留資格「特定技能(外食業)」
在留資格「特定技能」は、人手不足が深刻化している14の産業分野において、一定の専門性や技術を有する外国人を受入れることによって人手不足に対応するため2019年に創設された制度です。飲食業もこの人手不足が深刻化している産業分野に含まれ、特定技能ビザ(外食業)では、飲食物の調理や接客、店舗管理といった業務に従事することが認められています。在留資格「特定技能」を取得するための要件として、「医療・福祉施設給食製造業種:医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を良好に修了する、又は「外食業特定技能1号技能測定試験」及び「日本語能力試験」の合格が外国人に要求されています。
(2)在留資格「特定活動(46号)」
特定活動46号は、日本の大学又は大学院を卒業した外国人留学生に、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に就労することを認めています。本制度が創設される以前は、外国人留学生が日本で就職を希望する場合、技術人文知識国際業務ビザを取得することが一般的でしたが、技人国ビザでは単純労働に従事することは認められていません。これに対して、2019年に創設された特定活動46号ビザは、単純作業的な要素を含む業務に従事することが認められています。接客ビザと呼ばれたりもしています。特定活動46号ビザでは、外国人客が多い飲食店などで、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行う(日本人への接客も可)ことができます。なお、店舗の清掃や皿洗いにのみ従事することは認められません。
特定活動46号ビザの許可要件は以下の通りです。
学歴要件 | 日本の4年制大学の卒業及び大学院を修了している者に限ります。 短期大学及び専門学校の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象になりません。 |
日本語能力要件 | ア、日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語テストで480点以上を有する者 日本語能力試験については、旧試験制度の「1級」も対象となります。 イ、その他、大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した者についてはアの要件を満たすものとみなされます。 |
(3)在留資格「技能」
在留資格「技能」は、熟練技能労働者を外国から受け入れることを目的としています。技能ビザでは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事することが認められています。料理人も熟練した技能を要する業務の1つとして認められています。
技能ビザの許可要件の1つとして、10年の実務経験を有することが入管法上求められます。つまり「熟練した技能を要する業務に従事する活動」を10年以上行っていることが必要です。
「熟練した技能を要する業務に従事する活動」とは、日本より外国の技能水準が高い分野や、外国特有の文化に基づく分野、日本には熟練技能労働者が少ない分野を意味します。料理人分野では、外国特有の料理、日本より技能水準が高い料理、日本では料理人が少数しか存在しない料理となります。中華料理やフランス料理、イタリア料理、タイ料理、韓国料理など専門とする料理人が該当します。料理人には、デザートなどの菓子類を製造するパティシエも含まれます。これに対して、ラーメンや餃子など一般大衆化した料理を提供する店舗での料理人は「熟練した技能を要する業務に従事する活動」には含まれません。
(4)資格外活動許可(留学生や家族滞在のアルバイト)
在留資格「留学」や「家族滞在」は、原則として就労が認められていませんが、資格外活動許可を取得することによって、週28時間以内のアルバイトをすることができます。この資格外活動許可によるアルバイトで、飲食店でホールやキッチンの業務に従事することに法律上問題はありません。よって、接客や皿洗い、清掃といった業務を行うことができます。ファーストフード店や居酒屋などでアルバイトをしている外国人も多くなりましたが、この様にアルバイトをしている外国人の多くは資格外活動許可を取得しているのが一般的です。なお、資格外活動許可は保有している在留資格に基づくものであるため、留学ビザや家族滞在ビザを失った場合はアルバイトできません。大学卒業などで留学ビザを失った後も、アルバイト先での就労を希望する場合には、適切な就労ビザに変更する必要があります。
2,飲食業の店舗管理やマーケティング、営業、財務などで働ける就労ビザは何ですか?
(1)在留資格「技術・人文知識・国際業務」
チェーン店などを展開している飲食業で複数の店舗を管理や、マーケティングなどの営業部門や法務、財務、経営企画などの管理部門で就労するためには、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得する必要があります。もっとも、この技術人文知識国際業務ビザでは上記1で検討した、ホールでの接客やキッチンの業務に従事することはできません。
「技術人文知識国際業務ビザで従事できる飲食業の仕事例」
・外国人観光客が多い空港などの飲食店での、外国語のメニューの翻訳業務、食材等の海外取引業務、来店された外国人の通訳業務など ・外食チェーン店などでは、複数店舗の管理として、発注業務、在庫管理、品質管理、個人情報管理、勤務管理、人事管理、コンプライアンス、決算等の業務 |
(2)許可要件
技術人文知識国際業務ビザの許可要件は以下の通りです。
①学歴又は実務経験要件 技術・人文知識・国際業務ビザの許可要件として、外国人本人は大学卒業または日本の専門学校卒業が要求されます。または、3年又は10年の実務経験を有していることが必要です。 |
②仕事内容が学歴で学んだ内容又は実務経験との関係で関連性があること 飲食業で従事する店舗管理やマーケティング、経営企画などの業務に必要な技術又は知識に関連する科目を大学で専攻していることが必要です。そして、従事する業務は、この学術的基礎を必要とする一定水準以上の専門性が求められる業務であることが必要です。単に反復継続した経験で得た知識では不十分で、学問的な技術や知識を必要とする業務となります。 |
③公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること この契約は労働契約に限られず、請負契約や派遣契約も含みます。 |
④会社の継続性・安定性(経営状態) |
⑤日本人と同等以上の報酬 |
⑥素行善良 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |