離婚歴が多くても配偶者ビザ（在留資格「日本人の配偶者等」）を取れますか？

１，離婚歴が多いと配偶者ビザの審査は厳しくなりますか？
２，前婚の婚姻期間や前婚相手の国籍は審査に影響しますか？
３，離婚歴が多い場合、どうしたら良いですか？
- （１）婚姻の信ぴょう性の立証責任
- （２）婚姻の信ぴょう性の立証と理由書
４，離婚歴を隠しても大丈夫ですか？

１，離婚歴が多いと配偶者ビザの審査は厳しくなりますか？

（１）婚姻の信ぴょう性

　配偶者ビザは日本人と結婚すれば当然に付与されるものではありません。婚姻の信ぴょう性や生計要件、素行善良要件といった配偶者ビザの許可要件を充足していない場合は、当然に不許可となります。

　結婚、離婚、再婚を繰り返している場合は、配偶者ビザの許可要件の1つ「婚姻の信ぴょう性」との関係で、審査が厳しくなります。配偶者ビザは日本国法および外国人の国籍国法に基づく婚姻関係があることは大前提として、「婚姻の信ぴょう性」が要求されます。「婚姻の信ぴょう性」とは、婚姻の実体があること、すなわち真摯な婚姻意思に基づく婚姻であることが必要です。

（２）婚姻の信ぴょう性の趣旨

　配偶者ビザの許可要件の1つに「婚姻の信ぴょう性」が要求されている趣旨は、就労を目的とした偽装結婚や悪質なブローカーが介在した国際結婚を防止することに求められます。配偶者ビザは他の就労ビザと比べても、就労制限がなく永住申請や帰化申請の要件が緩和されているなど、優遇されている在留資格です。このように優遇されている在留資格であるため、外国人が日本人を騙すケースや日本人が戸籍売りなどをするケースといった偽装結婚によって、配偶者ビザの取得を試みる外国人は少なくありません。

　日本人が外国人と離婚結婚を繰り返しているケースには、戸籍売りをしている場合、つまり外国人や悪質な国際結婚ブローカーからお金をもらって結婚する場合が報告されています。外国人が日本人と結婚離婚を繰り返しているケースには、配偶者ビザ取得後就労し日本でお金を稼いで、離婚して帰国するといったことを繰り返すケースが報告されています。

（３）離婚が多い場合の婚姻の信ぴょう性

　上記のような偽装結婚は入管も問題視しており、配偶者ビザの許可要件を充足しているか否かについては、入管は厳格に審査します。審査の結果、偽装結婚の疑いがあると判断されれば、当然に不許可となります。日本人が外国人と結婚離婚を繰り返している場合や、外国人が日本人と結婚離婚を繰り返している場合は、「婚姻の信ぴょう性」への疑義すなわち偽装結婚との疑いが生じやすくなります。

２，前婚の婚姻期間や前婚相手の国籍は審査に影響しますか？

　前婚の婚姻期間が短い場合は、婚姻の信ぴょう性の判断に不利益に働きます。偽装結婚の事例では、配偶者ビザ取得後すぐに離婚し婚姻の実体がなくなるという場合があります。したがって、前婚の婚姻期間が短い場合は偽装結婚との疑いが生じやすくなります。また、１で検討した通り、日本人が外国人と結婚離婚を繰り返している場合、外国人が日本人と結婚離婚を繰り返している場合は、偽装結婚との疑いが生じやすくなります。

３，離婚歴が多い場合、どうしたら良いですか？

（１）婚姻の信ぴょう性の立証責任

　上記で検討した通り、離婚歴が多いと婚姻の信ぴょう性との関係で疑義が生じやすくなります。しかし、婚姻の信ぴょう性が認められる場合、つまり真摯な婚姻意思に基づく結婚であることが認められれば、配偶者ビザを取得することは可能です。この婚姻の信ぴょう性の立証責任は申請者側にあります。したがって、真摯な婚姻意思に基づく婚姻であることを証明できなかった場合は、不許可になります。離婚歴が多い場合は、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなっているので、婚姻の信ぴょう性の立証は難しくなることは避けられません。

（２）婚姻の信ぴょう性の立証と理由書

　離婚歴が多い場合は、理由書を作成することが不可欠になってきます。離婚歴がない場合でも、配偶者ビザでは質問書の提出が必須となります。質問書には、質問事項の一つに、結婚に至った経緯の質問事項があります。この質問事項では、出会った経緯、出会いから交際に至った経緯、交際から結婚に至った経緯をできる限り詳しく説明する必要があります。〇年〇月頃、何処でどういった理由で知り合ったか、交際に至るまではどのような形で連絡し交際に至ったか、交際から結婚に至るまでも同じようにデートで訪れた場所などを詳しく説明してください。もちろん、これを裏付ける写真やメールなどの交信履歴のコピーを提出することは不可欠です。離婚歴が多く、これらの資料も提出できないというのであれば、偽装結婚であると疑われても不思議ではありません。質問書に加えて、結婚に至った理由書を作成して、婚姻の信ぴょう性に関し説得力を持たせることが必要になります。

　離婚歴がある場合は、前婚の離婚理由を説明することも必要です。なぜ前婚は離婚に至ったのか、合理的に説明する必要があります。特に結婚離婚を繰り返している場合は、それぞれに合理的な理由があることを説明していく必要があります。

４，離婚歴を隠しても大丈夫ですか？

　日本人に離婚歴がある場合、戸籍に反映されます。日本人の戸籍謄本は必須の提出書類です。日本人の離婚歴を隠しても、戸籍と申請書の記載に齟齬が生じるので、すぐに判明します。それどころか、申告しなければならないことを隠すことは虚偽になるので、虚偽申請となってしまいます。

　外国人の場合は、前婚を本国に届けていない場合は、離婚歴が分からない場合もあります。しかし、入管は審査にあたり、申請の際に提出した資料以外にも申請人に関する事項を調べて審査します。過去に入国している場合は入国の記録が残っていますので入国の経緯、過去に在留資格を取得していたのであれば申請の経緯や在留状況の記録が残っています。よって、調査によって前婚が明らかになれば、離婚歴を隠していたことは虚偽申請となります。

　虚偽申請をした場合は、当然に不許可となります。そして、不許可となるだけではなく、将来の申請に悪影響を及ぼします。虚偽申請の結果不許可になり、再申請するとしても、前回虚偽申請をした理由や、前回の申請と今回の申請とで内容が異なることの説明が求められたりします。このように、離婚歴を隠して申請した場合は、信用を失い、将来の申請が厳しくなるだけなので、離婚歴は正直に報告してください。

離婚歴が多くても配偶者ビザを取れますか？