帰化要件の1つ素行要件とは何ですか？

１，素行要件とは何ですか？
２，素行要件の注意点は何ですか？
３，帰化申請中に犯罪行為や交通違反をしてしまった場合は、どうなりますか？

１，素行要件とは何ですか？

　国籍法第5条第１項第３号は、帰化要件の１つとして「素行が善良であること」と定めています。このような素行要件をクリアするためには、素行が善良であることが要求されます。素行善良であると認められるか否かは、一般通常人を基準として社会通念により判断されます。具体的には、犯罪歴の有無や態様、納税状況、社会への迷惑の有無などを総合的に勘案して判断されます。

２，素行要件の注意点は何ですか？

　素行要件の審査ポイントでは、犯罪歴の有無、納税状況、交通違反が注意点となります。以下では各々について、検討していきます。

（１）犯罪歴の有無について

　犯罪歴に関しては、資格外活動違反やオーバーステイなどの在留資格や入管法に違反する犯罪類型と、入管法以外の刑法その他刑罰法令に違反した犯罪類型に分けられます。

　在留資格や入管法に違反した類型については、日本に入国した以降の在留状況が審査の対象となります。過去にオーバーステイの事実がある場合は、オーバーステイの程度や年数によって変わってきますが、短くてもオーバーステイの時点から５年間は帰化申請の可能性はなくなります。

　刑法その他の刑罰法令に違反した場合は、退去強制事由に該当するような刑罰法令に違反し刑事処分を受けた場合は帰化申請が難しくなります。また、窃盗や暴行といった程度の犯罪の場合は、起訴されているか否かが重要になってきます。起訴された場合は、罰金刑や禁固刑などの刑事処分が科されることとなります。この場合は、処分を受けた日から１０年間は帰化申請の可能性はなくなります。

（２）納税状況について

　納税状況に関する審査ポイントは住民税と年金の支払状況が審査の対象となります。

　会社員の場合は、勤務先が社会保険に加入しており、税金や年金が給与から天引きされている場合は、問題となることは少ないです。一方、個人事業主や会社経営者の場合は、確定申告や法人税、国民年金等が問題となりますので注意が必要です。会社員の場合でも、直近１年以内に転職しており、転職期間に空白がある場合は、その間は税金や年金が天引きされることはありません。よって、この転職期間は、国民年金に加入する必要があります。転職期間の国民年金は、自分で払込票によって支払う必要があります。この間の国民年金も支払っているか否か審査されますので注意が必要です。

（３）交通違反について

　交通違反と素行要件との関係について、明確な基準が公表されているわけではありませんが、直近５年間に軽微な交通違反が５回以上ある場合は、素行善良であると認められなくなる、と実務上考えられています。刑事罰に該当するような重大な交通違反（飲酒運転、人身事故、３５㎞以上のスピード違反など）は１回でアウトです。この場合は、相当期間を経過してから帰化申請をすることが望ましいと考えます。

３，帰化申請中に犯罪行為や交通違反をしてしまった場合は、どうなりますか？

　帰化申請中に犯罪行為や交通違反をしてしまった場合は、必ず法務局に当該行為の事実を報告してください。隠匿しても法務局は調査します。また隠匿したほうが審査に悪影響を及ぼします。当該行為はいずれにしても審査に悪影響を及ぼしますが、正直に報告することで、悪影響を最小限にすることが望ましいと考えます。申請中に重大な犯罪や交通違反をして起訴された場合は、不許可となります。帰化申請は申請が受理されてから結果が出るまでの審査期間は、およそ１年です。審査の期間が長いので、その間は審査に悪影響を及ぼす行為には気を付ける必要があります。