帰化申請で不利益事由(犯罪歴や罰金刑など)がある場合の注意点は何ですか?

1,過去の犯罪歴や罰金刑など不利益事由がある場合に帰化申請できますか?

 帰化許可要件の1つに、「素行善良要件」というものがあります。素行善良と認められるためには、前科前歴がないことや納税や社会保険料を適切に支払っていることが必要です。過去に逮捕歴や罰金刑を受けている場合は、素行善良要件に抵触します。もっとも、不利益事由があっても永久に素行善良を否定されるわけではなく、当該行為の時から一定期間経過し、その間は素行善良要件に抵触する行為をしなかった場合は、素行善良要件を充足することができます。以下では、不利益事由がある場合に注意すべき点を検討します。

2,過去に罰金刑を受けている場合は、どうなりますか?

 器物損壊や暴行等で起訴された場合は、罰金刑を受けることも多いです。過去に罰金刑を受けている場合は、当該罰金の支払いを終えてから10年以上の期間を経過することによって、素行善良要件を充足することができます。もちろん、その間は犯罪行為を行っていないことが大前提です。なお、他の帰化許可要件を満たしている場合は、帰化申請自体はできます。しかし、素行善良要件に抵触する為、不許可となる可能性が大きいです。

3,1年以上の懲役若しくは禁固刑を受けた場合は、どうですか?

 無期または1年を超える懲役若しくは禁固の刑に処せられた場合は、退去強制事由に該当します。よって、日本に在留できなくなります。また、退去強制の処分を受けた場合は、処分時から5年間は日本に入国することはできません。このような場合は、素行善良要件のみならず、帰化許可要件の1つ居住要件を充足できません。したがって、この場合は帰化申請することはできません。

4,不法滞在によって在留特別許可を受けている場合は、どうなりますか?

 オーバーステイその他の不法滞在は、退去強制事由に該当します。もっとも、自ら入管に出頭することによって在留特別許可を受け、特別に在留が認められることもあります。このように在留特別許可を受けている場合は、在留特別許可を受けた日から10年の期間を経過することによって素行善良要件を回復することができます。

5,過去に交通違反がある場合は、どうなりますか?

交通違反も帰化申請の審査に影響を及ぼします。一度でも交通違反をすれば、帰化申請が不許可になるというものではありません。しかし、交通違反の回数を重ねれば、それだけ不許可となる可能性が高まります。実務上は、軽微な違反でも過去5年間で5回以上の違反があると、帰化申請が不許可になる可能性が高くなると考えられています。また、1回の違反でも、飲酒運転や死亡事故のような重大な交通違反の場合は不許可となります。このような重大な交通違反の場合には、違反から相当期間を経過していない限り許可される見込みはないと思います。少なくても、5年以上の期間を経過する必要があります。

6,自己破産した場合は、どうなりますか?

 自己破産している場合は、帰化許可要件の1つ生計要件に抵触します。生計要件は、日本で安定継続的に生計を維持できる程度の収入があることを求めています。自己破産している場合は、この生計要件を充足することができないので、まずは自己破産から復権することが必要です。そして、復権してから7年の間、生計を維持できる程度の収入を得ている必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法