永住許可要件「原則10年在留に関する特例」とは何ですか?

1,永住許可要件の住居要件とは何ですか?

 永住許可要件の1つに住居要件というものがあります。住居要件では、原則として「引き続き10年以上」日本に在留していることを要求しています。そのため、海外在住の外国人が永住申請することは出来ません。永住権は、申請人が一定期間日本で生活をしていて、また将来に渡って日本で生活していくということを前提とした在留資格となります。

 例外として、この原則10年在留という住居要件には特例があります。日本との関係が特に深い外国人は、この特例が適用され、10年以上日本に在留していなくても永住申請することが認められています。以下では、この「原則10年在留に関する特例」について検討します。

2,どんな場合に「原則10年在留に関する特例」が認められますか?

 「原則10年在留に関する特例」とは、永住許可要件の1つ住居要件が緩和されることです。以下では、住居要件が緩和される代表的な例を検討します。

(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合

 日本人、永住者及び特別永住者の配偶者は、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上に在留している場合は、永住申請が認められます。1年以上日本で婚姻生活を送っていれば、残りの婚姻生活は海外で送っていても問題ありません。3年以上の実態を伴った婚姻生活と認められるためには、同居を伴った婚姻生活であることが必要です。別居している場合は、その期間は実体を伴った婚姻生活とは認められません。

(2)日本人、永住者及び特別永住者の実子の場合

 日本人、永住者及び特別永住者の実子の場合は、1年以上継続して日本に在留している場合は、永住申請が認められます。

(3)定住者の場合

 「定住者」の在留資格で日本に在留している外国人の場合は、当該在留資格で5年以上に在留している場合は、永住申請が認められます。

(4)難民認定を受けた者

 難民認定を受けた外国人は、難民認定の日から5年以上日本に在留している場合には、永住申請が認められます。なお、難民申請は結果が出るまで2年近くかかることもありますが、この審査中の期間は5年以上在留に数えることができません。起算点は、認定を受けた日です。

(5)高度外国人材(高度専門職ビザ:ポイント70点以上)の場合

 ポイント70点以上の高度専門職ビザを保有する高度外国人材は、以下のア、イの要件を充足した場合には、永住申請が認められます。

ア、「高度外国人材」として3年以上継続して日本に在留していること。

イ、3年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から3年の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。

 高度専門職ビザ(70点以上)を保有している高度外国人材は、高度専門職ビザを取得した時点から3年以上日本に在留している場合は、永住申請が認められます。また、高度専門職ビザ以外の在留資格で日本に在留している場合でも、永住許可申請日を起算点として3年前の時点を基準として、高度専門職ポイント計算表で計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められる場合には、永住申請が認められます。

(6)高度外国人材(高度専門職ビザ:ポイント80点以上)の場合

 ポイント80点以上の高度専門職ビザを保有する高度外国人材は、以下のア、イの要件を充足した場合には、永住申請が認められます。

ア、「高度外国人材」として1年以上継続して日本に在留していること。

イ、1年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から1年の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。

 高度専門職ビザ(80点以上)を保有している高度外国人材は、高度専門職ビザを取得した時点から1年以上日本に在留している場合は、永住申請が認められます。また、高度専門職ビザ以外の在留資格で日本に在留している場合でも、永住許可申請日を起算点として1年前の時点を基準として、高度専門職ポイント計算表で計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められる場合には、永住申請が認められます。

3,出国している場合でも特例は認められますか?

 「原則10年在留に関する特例」が適用されるためには、引き続き特例に該当する期間を在留している必要があります。「引き続き」とは在留が継続していることです。短期間の出国の場合は、在留が継続していると認められます。しかし、長期間の出国や短期間の出国でも出国回数が多い場合は、在留が継続しているとは認められなくなる可能性があります。具体的には、1回の出国で90日以上外国に滞在していた場合は、在留の継続が認められなくなる可能性がある、と実務上考えられています。また、短期間の出国でも1年間の合計出国日数が150日以上の場合は在留が継続しているとは認められなくなる可能性があります。この場合は、カウントはリセットされ帰国した時点から計算し直しになります。出国している場合でも特例は適用されますが、上記の場合は、特例に該当する在留期間の計算は、1から出直しになります。

 なお、「引き続き」とは在留が継続していることを意味しますので、再入国許可を受けずに出国したり、期限までに帰国せず再入国許可が失効した場合は、在留資格は失効し、在留が継続しているとは認められません。再入国許可(みなし再入国を含む)を得て出国した場合は、在留が継続していると認められます。

4,その他の許可要件も緩和されますか?

 永住申請には、住居要件の他にも生計要件や素行善良要件など、いくつかの許可要件があります。特例はあくまでも住居要件に関するもので、生計要件や素行善良要件をはじめその他の許可要件については緩和されません。他の許可要件については、一般の永住申請の場合と変わりありません。

 永住申請で住居要件が要求される趣旨は、日本に生活の基盤があることに求められます。そして、日本に生活の基盤があるか否かは、年間の出国数のみならず、長期出国の理由、過去の出国期間、家族状況(子供が日本の学校に在籍等)、資産の状況(日本の不動産の有無)などから総合的に審査され判断されます。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法