帰化要件の1つである生計要件とは何でしょうか?
目次
1,生計要件とは何でしょうか?
国籍法第5条第1項第4号は、帰化要件の1つとして生計要件を定めています。つまり、帰化にあたり日本で経済的に安定継続して生計を維持できることを要求しています。
この生計要件は、世帯年収を基準として判断されます。つまり、申請人本人のみに限らず、同居する親族全員の収入で審査されます。よって、申請者自身の収入が低い場合や専業主婦などで無収入である場合も、配偶者やその他同居の親族の収入によって、安定継続して生計を維持していくことができる場合は、生計要件を充足します。生計要件は、必ずしも申請人本人に備わっていることは必要ありません。
2,安定継続した生計の維持は、どのように判断されますか?
安定継続した生計を維持していくことができると認められるためには、毎月安定して収入を得ることができることが重要となります。会社員の場合は問題となることは多くはありません。しかし、個人事業主や会社経営者の場合は、以下の点に気を付ける必要があります。
(1)個人事業主の場合の注意点
個人事業主の収入の審査は、確定申告書の所得金額を基準に審査されます。所得金額とは、売上から経費を差し引いた利益を指します。経費が売上を上回り利益を出していない場合は、所得金額とは認められません。この場合、実際に生計を維持できている場合でも、収入とは認められないため生計要件を充足することは出来ません。
帰化申請では、直近3年分の課税証明書や納税証明書などの所得金額に関する証明書を提出します。よって、3年間継続して十分な収入を得ており、安定継続的に生計を維持していることが必要となっています。
(2)会社経営者の場合の注意点
会社経営者の収入の審査は、役員報酬の金額を基準に審査されます。この役員報酬の金額は、会社の事業規模や決算状況に照らして、適切な金額であることが必要となってきます。会社経営者の場合、事業の継続安定性が認められるか否かが、安定継続した生計を維持できるか否かに直結してきます。よって、事業が黒字であることはもちろん、利益に見合った役員報酬を得ていることが重要となります。事業が債務超過であるにもかかわらず、不相応に高い役員報酬を得ている場合は、事業の継続安定性という観点から問題があります。この場合、生計要件の判断に消極的に作用する危険性があります。
会社経営者の場合も直近3年分の課税証明書や納税証明書などの所得金額に関する証明書を提出します。よって、3年間継続して十分な役員報酬を受けており、また会社も3年間継続して十分な利益を出していることが求められます。
3,収入以外で生計要件を充足できるでしょうか?
帰化申請の生計要件を充足するためには、毎月安定した収入を得ていることが最も重要です。もっとも、預貯金などの資産を有する場合は、収入を補う形で生計要件を充足することができます。しかし、最低でも1年間は世帯全員が生計を維持できるだけの預貯金などの資産を保有していることが求められます。また、海外の親族から毎月安定した送金などの支援を受けている場合は、収入を補う形で生計要件を充足することができます。預貯金や親族の支援は、生計要件の立証において、あくまで補助的手段と考えることが無難と考えます。
4,生計要件充足の為には、いくらの年収が必要ですか?
生計要件は、申請人の同居の家族の人数や生活費、養育費、借金の有無など、個々人の生活状況を総合的に勘案し判断されます。よって、生計要件を充足するために必要な収入は、申請人個々人によって異なってきます。何よりも、申請人個々人の収入に見合った生活を営んでいることが大切だと考えます。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |