経営・管理ビザ申請での事業所確保はいつまでに?実務担当者必見ガイド

はじめに

日本国内で外国人が起業・事業経営を行う際、「経営・管理」在留資格を取得するためには、様々な審査要件が設けられています。中でも「事業所(オフィス・事務所・拠点)を日本国内に確保しているか/いつまでに確保すべきか」は、早期から準備すべき重要なポイントです。
本稿では、①事業所確保の背景・法的要件、②実務的なタイミング・手順、③最新の法改正動向、④よくある質問形式(Q&A)に整理し、申請者・実務担当者の双方にとって理解しやすく構成しました。


1.「事業所確保」がなぜ必要か

1‑1 在留資格「経営・管理」の制度趣旨

在留資格「経営・管理」は、外国人が日本国内で「事業を経営」または「事業の管理に従事」する活動を行うための在留資格であり、かつ「日本国内において事業経営を行う」実態があることが求められています。基本的な要件として、「事業所を日本国内に確保していること」が明示されています。
この要件は、単に法人登記だけでなく、「実際に日本国内に事務所・オフィスという物理的拠点を有しているか」「そこで事業運営がされているか」を確認するものです。例えば、バーチャルオフィス・自宅兼用住所などが「実体ある事業所」として認められるかは慎重に見られています。
このように、「物理的な事業所を確保している」=「日本で実質的な事業を行う拠点がある」ことが、制度上の重要な審査項目です。

1‑2 審査上の観点:事業所確保に関して確認されるポイント

実務上、審査において以下のような観点が重視されます(複数の行政書士・専門サイトによる整理):

  • 賃貸借契約書・敷金・設備等の整備状況など、事業所としての契約実態があるか。
  • その事業所が、法人名義・事業目的として賃貸借契約されているか(単なるレンタル会議室・バーチャルオフィスのみでは不十分なケースあり)
  • 自宅兼用の住所を事業所として使用していないか。近年、特に「自宅兼オフィス=原則不可」との認識が明確になっています。
  • 表札・社名プレート・来客ルート・固定電話やネット回線等、事業拠点としての体裁が整っているか。
    これらを踏まると、申請を検討する段階で「いつまでに」「どのような事業所を確保すべきか」を逆算して準備することが極めて重要と言えます。

2.「いつまでに」事業所を確保すべきか:実務的タイミング

さて、審査上「事業所を確保しているか」という観点は明確ですが、では「いつまでに確保すればよいのか?」というタイミングについては、実務上の目安や注意点があります。以下に、実務的観点から整理します。

2‑1 原則的な目安

  • 申請前に事業所の賃貸借契約を締結し、設備等も整え、実際に事業を開始できる状態が望ましい。
  • 具体的には、「法人登記→銀行口座開設→賃貸契約締結→設備設置」の順で準備を進め、在留資格の申請時には「事業所を確保している証拠書類(賃貸契約書・平面図・事務所写真など)」を添付することが推奨されます。
  • 逆に、申請後に「これから事業所を探します」「設備を整えます」という段階では、審査上リスクとなる可能性があります。したがって、申請前の確保が基本と捉えるべきです。

2‑2 ケース別の検討:海外在住・来日前申請の場合

特に、海外から日本に呼び寄せる(在留資格認定証明書交付申請)や、現在別の在留資格から「経営・管理」へ変更する場合には、以下の注意があります。

  • 海外在住の外国人が来日前に会社設立・事業所確保を行う場合、銀行口座開設や賃貸契約等で協力者が必要になることが多く、時間的余裕をもって準備すべきです。
  • また、申請受理後も「事業所契約を締結さえすれば良い」という甘い理解では、審査で「実際に事業を行う拠点が整備されているか」という観点から不利となることがあります。だからこそ、申請前に契約と設備をある程度整えておくことが推奨されます。

2‑3 最新の法改正とタイミング影響

2025年10月16日から、経営・管理ビザの許可基準が大幅に厳格化されました。
この改正にあたり、事業所の実体要件が明確になっており、事業所確保のタイミングに関しても実務上の注意点があります。例えば、改正後は「事業規模に見合った独立した事業所の確保」が必須とされています。
したがって、改正ルールを前提に申請を検討するなら、改正施行日以降の申請分は、より早期に事業所を確保し、実態を整備しておくことが一層重要です。

2‑4 実務的に抑える「いつまでに」ライン

まとめると、実務上次のようなスケジュールが目安となります:

  1. 法人設立・登記完了
  2. 資本金の払込・銀行口座開設
  3. 賃貸借契約(法人名義・事業所用途)締結
  4. 表札・電話・インターネット・来客動線等設備・体制整備
  5. これらを整えたうえで「在留資格認定証明書交付申請(海外から)」または「在留資格変更許可申請(日本国内から)」を行う

この中で「賃貸借契約を締結して、実際に事業所として使用可能な状態」が、申請時点で整っていることが望まれます。実務上、「申請書類提出直前」ないし「申請時点」で賃貸借契約が締結済であるケースが多く、申請直前までに事業所確保を完了しておくのが安全です。
特に、改正後の厳格審査を踏まえると、申請前1ヶ月〜数ヶ月前には契約・設備準備を済ませておくのが理想と言えます。


3.改正後のポイント:事業所確保に関する最新動向

2025年10月16日より、上記のように許可基準が改正され、事業所確保・実体性に関しても審査の目が一段と厳しくなっています。
以下、特に押さえておきたい改正ポイントです。

3‑1 自宅兼用オフィスの原則的な否認

改正後、自宅兼用の住所を事業所として使うことは原則不可という見解が強まっています。
つまり、自宅に会社の机を置いて「ここが事業所です」と申請する方法だけでは、審査で実体拠点と認められにくくなっています。
→したがって、賃貸オフィス・法人契約・来訪対応可能な独立スペースなど、事業運営の拠点として機能していることを示せる状態であることが求められます。

3‑2 レンタルオフィスの活用時の注意

レンタルオフィスを使う場合、独立した専用部屋・来訪応対・固定電話・掲示看板の有無など、体制整備の度合いで「実態あり」と判断されるかが変わります。
→レンタルオフィスを利用するなら、単に住所貸し契約だけではなく、「この場で実務が行われていること」が資料で示せるよう準備が必要です(例:業務中の写真・来訪記録・社名表示)。

3‑3 事業規模との均衡:事業所の広さ・設備・契約内容

改正後、審査官は「事業規模に見合った事業所かどうか」も確認対象としています。
つまり、例えば、資本金500万円程度・常勤職員1名という小規模の会社であっても、「机1台・レンタル会議室だけ」の事務所では、事業実態・継続性・安定性という観点から疑義を持たれる可能性があります。
→事業所確保時には、契約面積・設備・来客フロー・固定電話・ネット回線・表示看板等を整えておくことが望ましいです。

3‑4 申請後・更新時の実態確認強化

事業所確保だけで終わるわけではなく、許可取得後の更新申請時にも「事業を継続・安定的に運営しているか」「事業所が実質的に機能しているか」が重視されます。
→初回許可後も、定期的に事業所体制(従業員・設備・契約)を整えておき、例えば決算書・税金納付・社会保険加入等を着実に履行することが、更新・永住申請へ向けた信頼性を高めます。


4.申請準備におけるチェックリスト:事業所確保編

申請にあたって「事業所を確保済」とするために、以下のチェックリストを活用してください。

項目準備内容
賃貸借契約法人名義(または法人契約へ変更手続中)/用途が「事務所・店舗」等/契約書の写しを用意
所在地・面積・用途来客可能な事務所スペース・通りを通る看板・社名表示等があるか
設備状況固定電話・ネット回線・FAXまたは複合機・デスク・椅子・来客応接スペースなど
社名表示建物入口・賃貸部分入口に社名プレート・表札があるか
来客・電話応対体制クライアント来訪可能な流れ・電話応対部屋があるか
資料写真・平面図事務所の外観・内観写真/平面図を撮影・添付できる状態か
バーチャルオフィス利用時専用執務スペースが確保されているか/来客対応可能か/固定電話番号・社名表示があるか
自宅兼用の回避自宅住所をそのまま事務所として使っていないか/明確な専用スペースがあるか再確認

このうち少なくとも「賃貸契約/社名表示/設備/平面図・写真」が整っている段階で申請準備を進めると安心です。


5.Q&A よくある質問

Q1. 事業所を確保する「契約締結日」が申請時点で必要ですか?

A1. はい、原則として「申請書類を提出する段階で賃貸借契約(法人名義・事業用途)が締結済であること」が望ましいとされています。前述の通り、申請後に「これから契約します」という状況では、審査上リスクがあります。
とはいえ、ケースによっては「契約書を申請提出直後に締結予定である」旨や、「締結済であるが賃貸借契約書の写しがまだ取得できていない」等の事情を添えて許可が出た事例もありますが、あくまで例外的です。したがって、可能な限り申請前に契約を終えておくことを強く推奨します。

Q2. 事業所として「レンタルオフィスのみ」を使ってもよいでしょうか?

A2. レンタルオフィスのみ、つまり住所貸しサービス・来客スペースなし・固定電話番号なし、という形態では「実体的な事業所」と認められない可能性が高いです。
ただし、レンタルオフィスを使う場合でも、以下のような条件を満たせば認められるケースもあります:

  • 専用執務スペース(鍵付き個室等)を利用できる契約である
  • 固定電話番号・社名表示・郵便受け・来客応対可能(打合せルーム予約可能)など、実務上利用可能な体制がある
  • 賃貸借契約書に「事務所用途」の記載がある
    これらを備えるか、別途来訪可能な実拠点を用意するなどして、事務所実態を整備しておくべきです。

Q3. 申請後に事業所契約を締結しても補正で対応できますか?

A3. 事業所確保について、申請後に契約を締結して「補正資料」として提出する事例もありますが、これはあくまで例外的かつリスクのある対応です。申請段階で契約済であることが安心です。
特に改正後は「実体ある事業所」がより厳格にチェックされており、申請時点で整備されていない場合、却下又は補正要求を受ける可能性が高くなっています。

Q4. どれくらい前から事業所を探して契約すればよいですか?

A4. 実務的には、法人設立登記が完了するタイミング、または銀行口座開設後、1〜2ヶ月前から賃貸物件を探し・契約を締結し・設備を整えるというスケジュールが多くみられます。特に来日前・海外在住者の場合は、準備に時間を要します。多めに3〜4ヶ月前から着手することが安全です。
また、改正後の基準対応を見据えるなら、設備・体制・実態書類(写真・平面図)を整える時間も含めて余裕を持つことが望まれます。

Q5. 更新申請時にも事業所実態が問われますか?

A5. はい、更新申請時には「引き続き事業を継続・安定的に行っているか」「事業所が機能しているか」「税金・社会保険・雇用保険などを適切に履行しているか」等が審査対象となります。
したがって、初回許可取得後も、引き続き事業所の実態を整備・維持することが、更新・永住申請へ向けた信頼性確保につながります。


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7.まとめ

  • 事業所確保は「経営・管理」ビザ申請において必須の実体要件であり、申請時点で契約・設備等が整っていることが望ましい。
  • 実務的には、法人登記完了後、少なくとも1〜2ヶ月以上前には賃貸契約・設備整備を完了させ、申請前段階で準備を整えておくべき。
  • 2025年10月16日施行の改正により、事業所の実体・独立性・契約形態・事業規模との均衡が一段と重視されており、特に「自宅兼用オフィス」や「バーチャルオフィスのみ」の利用には慎重な準備が必要。
  • 更新申請・永住申請も含め、事業所および事業実態を維持・改善し続けることが重要。
  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
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 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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