レンタルオフィスで経営管理ビザは取得できる?事業所要件の最新ガイド

はじめに

日本で外国人が「経営・管理ビザ(Business Manager / 経営管理)」を取得する際、重要な要件の一つが 事業所の確保 です。近年、レンタルオフィス(サービスオフィス、シェアオフィスなど)を利用して起業を目指す方も多く、「レンタルオフィスでもビザ要件を満たせるのか?」という疑問がよく出ます。

この記事では、法務省・出入国在留管理庁(入管)や専門家の最新見解をもとに、2025年10月に施行された省令改正も含めて、レンタルオフィスを事業所として使う際のポイント・リスク・実務上の注意点を詳しく解説します。


1. 経営管理ビザの「事業所要件」とは

まず、経営管理ビザにおける 事業所(オフィス)を確保する要件 の基本を押さえておきましょう。

  • 入管のビザ審査では、単に住所があるだけでは不十分で、実際に経済活動が行われている場所=事業所であることを示す必要があります。
  • 入管が重視する主な観点は、「独立性(独占使用)」「継続性」「実体性」。
  • レンタルオフィスが認められるかどうかは、これらの条件をどこまで満たせるかによります。
  • また、2025年10月16日の省令改正により、より “事業規模に見合った” 事業所が求められるようになっています。
  • 自宅を兼ねた事務所(自宅兼オフィス)は、原則として認められない(例外は限定的)という運用が強まっています。

2. レンタルオフィスとは/その種類

「レンタルオフィス」と一口に言っても形態はさまざまです。ビザ審査においてどのタイプが適しているかを理解するため、主な種類を整理します。

種類特徴ビザ審査上の評価
専用個室タイプ(レンタルオフィス・サービスオフィス)完全な個室、壁・ドアあり。机・椅子、ネットなど備えあり。最も望ましい。独立性・実体性を確保しやすいため審査で認められやすい。
コワーキング/シェアオフィス(フリーデスク型)複数企業・個人が共用スペースを使う。固定デスクや専用区画がない場合も。危険。自由な席(フリーデスク)は独立性が弱く、ビザ審査で認められにくい。ただし、完全個室(ロックできる部屋)があれば評価される可能性がある。
バーチャルオフィス実際の執務スペースなし。住所と郵便受けがあるのみ。原則不可。物理的空間がないため、事業所として認められない。
インキュベーションオフィス起業支援施設、公共機関や自治体運営のインキュベーター。条件次第で認められる。特に “起業支援を目的とした施設” は、入管ガイドラインで例外扱いされることがある。

3. レンタルオフィスを事業所として使う際の具体的要件

レンタルオフィスを “事業所” として認めてもらうためには、次のようなポイントをクリアする必要があります。

  1. 独立性(専有スペース)
    • 個室(部屋)が必要。単なるパーティションや可動壁だけでは不十分。
    • 他の区画と明確に分かれており、入室導線が独立している方が望ましい。
    • 壁の上部や天井が開口している(欄間がある)場合もありますが、「独立した空間」として認められるかはケースバイケース。
  2. 契約名義と用途の明記
    • 賃貸契約(または転貸契約)が法人名義(会社名)であることが理想。
    • 契約書上の “使用目的” が「事務所」「商業利用」「オフィス利用」など、明確にビジネス用途であること。
    • レンタルオフィス運営会社・大家との合意が必要な場合がある(特に部分転貸の場合)。
  3. 実体性(設備・運営実態)
    • 机・椅子・パソコン・電話・コピー機など、オフィスとして使われている証拠が必要。
    • 郵便受け・看板・社名表札など、社会的表示があるとより信頼性が高まる。
    • 光熱費・通信費など、共益費やランニングコストの支払い実績を示せると良い。
  4. 継続性
    • 短期・月契約 (< 1ヶ月など) のスペースは、入管から「容易に撤退できる場所」と判断されがち。
    • 長期契約、あるいは自動更新条項あり、または安定した賃料支払い実績があることが望ましい。
    • 実際に来客対応、郵便物受け取り、会議実施など、日常的な “オフィス運営” の証跡(写真、帳簿、請求書など)を整えておく。

4. 2025年の省令改正による重要なポイント

2025年10月16日の省令改正は、経営管理ビザ申請における事業所要件にも影響を与えています。

  • 自宅兼オフィス(住居を兼ねた事務所)は 原則不可
  • 事業規模が厳しくなり、「資本金」「従業員数」といった面での要件が増強。これにより、事業所には “ある程度の規模感/実態” が求められる。
  • レンタルオフィスを使用する場合でも、単に “住所登録用” に使うだけでは不十分。実際にビジネス活動を行っている証拠を示す必要が強化されている。

これらの点から、レンタルオフィス選びの戦略が非常に重要になっています。


5. リスクと注意点

レンタルオフィスを使ったビザ申請には、多くの利点がある一方で、リスクもあります。

  • 審査落ちリスク:独立性や実体性が不十分だと、入管から “形式だけのオフィス” とみなされ、不許可となる可能性がある。
  • 契約名義・契約内容の不整合:個人名義契約、用途不明確、共益費や看板設置の同意がないなど、契約が甘いと問題になる。
  • 写真・現地証拠が重要:オフィス内部・外観・設備・看板・事業運営の写真を準備しないと実体を証明しきれない。
  • コスト:初期費用や月額費用はレンタルオフィスで抑えられる一方で、看板設置費や共益費、通信費なども考慮が必要。
  • 将来的なスケール:ビザは更新があるため、将来的に従業員が増えたり事業が拡大した場合、レンタルオフィスが手狭になる可能性がある。

6. 実務アドバイス(専門家視点)

レンタルオフィスを事業所として使って経営管理ビザを成功させるには、以下の実務的なポイントを押さえることが非常に有効です。

  1. 契約前に運営会社と条件交渉
    • 法人名義での賃貸が可能かを確認。
    • 使用目的がビジネス用(オフィス利用)である旨を契約書に明記。
    • 看板設置、郵便受け、来客許可などを含めた “社会的表示” が可能かどうか。
  2. 実体あるオフィス設営
    • 最低限のオフィス什器(机、椅子、PC、電話など)を準備。
    • 看板、表札、郵便受けの設置。
    • オフィス運営の記録を残す(来客記録、請求書や領収書、会議記録など)。
  3. 写真・図面を準備
    • オフィスの間取り図(フロアプラン)。
    • 内部・外観・設備を撮影した写真。
    • オフィス運営や業務中の様子が分かる写真など。
  4. 契約期間・支払い証拠を重視
    • 長期契約、または自動更新がある契約が望ましい。
    • 家賃、共益費、通信費などの支払い証拠を整えておく。
  5. 専門家(行政書士など)への相談
    • 入管対応に慣れた行政書士に相談し、書類作成を依頼。
    • 申請前にオフィス選定や契約内容をレビューしてもらうことで不許可リスクを下げられる。

7. Q&A(よくある質問)

Q1. レンタルオフィスが「事業所」と認められないケースは?
A1. 主に以下のような場合です:

  • フリーデスク型(固定席なし・共用スペース)で、独立した個室がない。
  • バーチャルオフィスのみ(物理的執務スペースが全くない)。
  • 賃貸契約が短期間(月単位など)で継続性が疑われる。
  • 契約名義が個人で、会社名義になっていない、または用途が「住居」になっている。

Q2. 居住兼オフィス(自宅兼事務所)は絶対ダメですか?
A2. 2025年以降は 原則不可 ですが、例外がゼロというわけではありません。たとえば、専用の部屋があり、居住スペースと明確に区分されていて、オフィスとしての実態が写真や図面で示せるケースでは、個別に認められる可能性があります。 ただし運用は厳しくなっているので、慎重に検討が必要です。


Q3. インキュベーションオフィスや起業支援施設でも大丈夫ですか?
A3. はい、条件を満たせば認められる場合があります。特に 公的なインキュベーション施設起業支援オフィス では、「支援目的」のオフィスとして一時的に借りる形でビザ要件をクリアできるケースがあります。 ただし、施設の運営者からの「使用承諾書」などを提出し、実体を示す証拠が求められる可能性が高いです。


Q4. 写真や図面がないと不許可になりますか?
A4. 写真・図面は非常に重要な審査資料です。内装・外観・設備・看板・来客・業務中の様子などを示す資料がないと、入管は “実体が伴わないオフィス” と判断するリスクがあります。実際に、弊所ではこれらを必ず準備するようアドバイスしています。


8. まとめ(結論)

  • 結論としては、「はい」、レンタルオフィスを使って経営管理ビザの事業所要件を満たすことは可能 です。ただし、自室登録型やバーチャルオフィスだけでは不十分なケースが多く、レンタルオフィス選び・契約・運営において慎重な準備が必要です。
  • 特に 個室(専有スペース)+設備+継続利用の実績 を確保し、オフィス運営の「実体性」を示す証拠を丁寧に用意することが鍵になります。
  • 2025年の省令改正により要件がより厳しくなっているため、専門家(行政書士など)への相談を強くおすすめします。

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参考リンク

  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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