スタートアップ企業でも技人国ビザは取れる?不許可を回避する実務ポイントを徹底解説

(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)

スタートアップ企業が外国人エンジニアやマーケター、デザイナーなどを採用することが珍しくなくなった現在、
「創業したばかりでも技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)は取れるのか?」
という相談を非常に多くいただきます。

結論から言えば――

スタートアップでも問題なく技人国ビザは取得できます。
ただし、一般企業よりも厳格に“事業の安定性・継続性”を示すことが必須。

本記事では、
スタートアップ企業が技人国ビザを取得する際の実務ポイント、不許可を避けるための書類、よくある誤解、審査基準を徹底解説します。


この記事のポイント

  • スタートアップ企業でも技人国ビザの取得は可能
  • 最大の審査ポイントは「事業の安定性・継続性」
  • 創業直後に求められる追加資料の具体例
  • 不許可になりやすいケースと対策
  • 事業実態・売上見込み・資金計画の示し方
  • 職務内容と学歴(または実務経験)の整合性
  • Q&Aでスタートアップ特有の疑問にも回答

1. スタートアップでも技人国ビザは取得できる?結論と前提条件

まず結論です。


結論:スタートアップでも問題なく技人国ビザは取れます。

しかし、

創業期の企業は、通常より審査が厳しく、事業の継続性を示す資料が必須。

という特徴があります。

スタートアップが特に求められるもの

  • 事業の実態が確認できる書類
  • 収益計画(3〜5年分)
  • 投資家・融資の資料(ある場合)
  • 顧客との契約書・見積書・PoC資料
  • 役員・従業員体制
  • 就労ポジションが専門性のある業務か

2. 技人国ビザの審査基準|スタートアップが注意すべき3つのポイント

入管は以下の観点で企業を審査します。


① 事業の継続性(スタートアップで最重要)

創業期は売上や契約が不安定であるため、入管は「本当に会社が続くのか?」を確認します。

チェックされる資料例:

  • 事業計画書
  • 投資契約書(VC、エンジェル投資家)
  • 銀行残高証明
  • 売上データ(請求書・入金履歴)
  • 顧客との契約書
  • プロダクトの開発状況
  • 代表者の経歴(経験・実績)

② 外国人の職務内容が高度/専門業務か

技人国ビザで認められる業務は、以下の3分野に整理されます。

  • 技術(エンジニア)
  • 人文知識(事務・マーケティング)
  • 国際業務(翻訳・海外営業)

単純労働は禁止 のため、職務内容書は極めて重要です。


③ 給与が日本人と同等以上か

スタートアップであっても「安すぎる給与」は不許可の典型例。

目安:

  • エンジニア:月給25〜30万円以上
  • 人文知識系:月給22〜25万円以上

3. スタートアップ企業が提出すべき書類|一般企業と何が違う?

多くの場合、創業3年未満の企業は追加資料を求められます。


【基本書類】

  • 登記事項証明書
  • 直近の決算書(創業1年未満の場合は不要)
  • 雇用契約書
  • 会社案内・HP
  • 事業内容説明書
  • 労働条件通知書
  • 職務内容書

【スタートアップ特有の追加提出資料】

書類採用される理由(審査ポイント)
事業計画書(3〜5年)事業の継続性を説明
投資契約書(VC/エンジェル)資金基盤の証明
銀行残高証明書当面の運営資金
プロダクト説明資料実態性の証明
顧客との契約書・LoI売上の見込み
PoC資料プロトタイプの実態

4. 不許可になりやすい理由と対策(創業期の典型パターン)

ここでは実際に多い不許可理由を紹介し、それぞれについて「実務対策」を提示します。


① 売上や契約が全くない

理由
事業の継続性が確認できない。

対策

  • PoC・β版・デザインモック資料
  • ユーザー数データ
  • 顧客との見積書・交渉履歴
  • 投資家からの支援資料

② オフィスを借りていない(自宅・バーチャル)

理由
本店所在地の実態が疑われる。

対策

  • WeWork等のコワーキングスペース契約
  • 入居写真やレイアウト図
  • プロダクト開発状況の資料

③ 職務内容が曖昧(スタートアップで多い)

理由
「何でも屋」的な業務は技人国ビザの対象外。

対策

  • 分業体制(誰が何をするか)
  • 専門業務部分を強調
  • 専門性と学歴(or経験)の整合性を明記

④ 給与が低い

理由
労働条件が適正でない。

対策

  • 市場平均を示す資料
  • 職務の専門性を強調
  • 昇給制度の説明

5. 職務内容と学歴の整合性が最重要(スタートアップ採用の本質)

技人国ビザの許可・不許可はここで決まると言っても過言ではありません。


学歴・職務内容の組み合わせ例

学歴職務内容許可可能性
情報工学(学士)ソフトウェアエンジニア
経済学(学士)マーケティング職
文学部エンジニア✕(実務10年以上なら可)
デザイン専門学校UI/UXデザイナー

6. 採用理由書(雇用理由書)の書き方|スタートアップ向けテンプレ

スタートアップでは、この文書の完成度が許可率を大きく左右します。


【サンプル構成】

  1. 会社概要・事業モデル
  2. 外国人採用の必要性
  3. 採用する外国人の専門性
  4. 専門性が事業に与える影響
  5. 職務内容(専門業務を中心に)
  6. 労働条件
  7. 今後の事業計画

7. 創業1年未満企業のビザ審査強化ポイント

創業から短期間の場合、入管は次の点を詳細に求めます。

  • 代表者の経歴が事業と関連しているか
  • 資金調達が十分か
  • 顧客の見込みはあるか
  • プロダクトの開発は進んでいるか
  • 専門業務を任せる根拠はあるか

8. 許可率を高めるための実務チェックリスト

  • 事業計画書は作成したか
  • 資金調達資料は提出したか
  • プロダクト資料を準備したか
  • 職務内容は専門業務だけを記載したか
  • 採用理由書はロジックが通っているか
  • 給与は市場平均以上か
  • 会社の実態(オフィス・HP・事業資料)は整っているか

9. よくある質問Q&A(スタートアップ企業向け)

Q1. 創業したばかりでもビザは取れますか?

取れますが、追加資料が必須です。


Q2. 売上ゼロでも大丈夫?

顧客との契約予定・PoC・投資資料があれば許可される可能性あり。


Q3. オフィスは必須?

実態のある場所は必要。自宅オフィスでも場合により許可されます。


Q4. 給与はどれくらい必要?

日本人と同等以上が必須。最低22〜25万円程度。


Q5. 採用理由書は必要?

スタートアップでは必須レベル。クオリティ次第で許可率が変わります。


10. まとめ|スタートアップは“説明力”があれば技人国ビザは全く問題なし

スタートアップ企業だからといって、技人国ビザが不利になるわけではありません。

必要なのは「事業が継続する」「専門性のある業務がある」ことを、書類でロジカルに説明する力。

実務的には、

  • 事業計画
  • 投資資料
  • プロダクト資料
  • 職務内容書
  • 採用理由書

の質を高めるほど許可率が上がります。


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