スタートアップ企業でも技人国ビザは取れる?不許可を回避する実務ポイントを徹底解説
(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)
スタートアップ企業が外国人エンジニアやマーケター、デザイナーなどを採用することが珍しくなくなった現在、
「創業したばかりでも技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)は取れるのか?」
という相談を非常に多くいただきます。
結論から言えば――
スタートアップでも問題なく技人国ビザは取得できます。
ただし、一般企業よりも厳格に“事業の安定性・継続性”を示すことが必須。
本記事では、
スタートアップ企業が技人国ビザを取得する際の実務ポイント、不許可を避けるための書類、よくある誤解、審査基準を徹底解説します。
この記事のポイント
- スタートアップ企業でも技人国ビザの取得は可能
- 最大の審査ポイントは「事業の安定性・継続性」
- 創業直後に求められる追加資料の具体例
- 不許可になりやすいケースと対策
- 事業実態・売上見込み・資金計画の示し方
- 職務内容と学歴(または実務経験)の整合性
- Q&Aでスタートアップ特有の疑問にも回答
目次
- 1. スタートアップでも技人国ビザは取得できる?結論と前提条件
- 2. 技人国ビザの審査基準|スタートアップが注意すべき3つのポイント
- 3. スタートアップ企業が提出すべき書類|一般企業と何が違う?
- 4. 不許可になりやすい理由と対策(創業期の典型パターン)
- 5. 職務内容と学歴の整合性が最重要(スタートアップ採用の本質)
- 6. 採用理由書(雇用理由書)の書き方|スタートアップ向けテンプレ
- 7. 創業1年未満企業のビザ審査強化ポイント
- 8. 許可率を高めるための実務チェックリスト
- 9. よくある質問Q&A(スタートアップ企業向け)
- 10. まとめ|スタートアップは“説明力”があれば技人国ビザは全く問題なし
- 関連記事・参考リンク
- 無料相談
1. スタートアップでも技人国ビザは取得できる?結論と前提条件
まず結論です。
結論:スタートアップでも問題なく技人国ビザは取れます。
しかし、
創業期の企業は、通常より審査が厳しく、事業の継続性を示す資料が必須。
という特徴があります。
スタートアップが特に求められるもの
- 事業の実態が確認できる書類
- 収益計画(3〜5年分)
- 投資家・融資の資料(ある場合)
- 顧客との契約書・見積書・PoC資料
- 役員・従業員体制
- 就労ポジションが専門性のある業務か
2. 技人国ビザの審査基準|スタートアップが注意すべき3つのポイント
入管は以下の観点で企業を審査します。
① 事業の継続性(スタートアップで最重要)
創業期は売上や契約が不安定であるため、入管は「本当に会社が続くのか?」を確認します。
チェックされる資料例:
- 事業計画書
- 投資契約書(VC、エンジェル投資家)
- 銀行残高証明
- 売上データ(請求書・入金履歴)
- 顧客との契約書
- プロダクトの開発状況
- 代表者の経歴(経験・実績)
② 外国人の職務内容が高度/専門業務か
技人国ビザで認められる業務は、以下の3分野に整理されます。
- 技術(エンジニア)
- 人文知識(事務・マーケティング)
- 国際業務(翻訳・海外営業)
単純労働は禁止 のため、職務内容書は極めて重要です。
③ 給与が日本人と同等以上か
スタートアップであっても「安すぎる給与」は不許可の典型例。
目安:
- エンジニア:月給25〜30万円以上
- 人文知識系:月給22〜25万円以上
3. スタートアップ企業が提出すべき書類|一般企業と何が違う?
多くの場合、創業3年未満の企業は追加資料を求められます。
【基本書類】
- 登記事項証明書
- 直近の決算書(創業1年未満の場合は不要)
- 雇用契約書
- 会社案内・HP
- 事業内容説明書
- 労働条件通知書
- 職務内容書
【スタートアップ特有の追加提出資料】
| 書類 | 採用される理由(審査ポイント) |
|---|---|
| 事業計画書(3〜5年) | 事業の継続性を説明 |
| 投資契約書(VC/エンジェル) | 資金基盤の証明 |
| 銀行残高証明書 | 当面の運営資金 |
| プロダクト説明資料 | 実態性の証明 |
| 顧客との契約書・LoI | 売上の見込み |
| PoC資料 | プロトタイプの実態 |
4. 不許可になりやすい理由と対策(創業期の典型パターン)
ここでは実際に多い不許可理由を紹介し、それぞれについて「実務対策」を提示します。
① 売上や契約が全くない
理由
事業の継続性が確認できない。
対策
- PoC・β版・デザインモック資料
- ユーザー数データ
- 顧客との見積書・交渉履歴
- 投資家からの支援資料
② オフィスを借りていない(自宅・バーチャル)
理由
本店所在地の実態が疑われる。
対策
- WeWork等のコワーキングスペース契約
- 入居写真やレイアウト図
- プロダクト開発状況の資料
③ 職務内容が曖昧(スタートアップで多い)
理由
「何でも屋」的な業務は技人国ビザの対象外。
対策
- 分業体制(誰が何をするか)
- 専門業務部分を強調
- 専門性と学歴(or経験)の整合性を明記
④ 給与が低い
理由
労働条件が適正でない。
対策
- 市場平均を示す資料
- 職務の専門性を強調
- 昇給制度の説明
5. 職務内容と学歴の整合性が最重要(スタートアップ採用の本質)
技人国ビザの許可・不許可はここで決まると言っても過言ではありません。
学歴・職務内容の組み合わせ例
| 学歴 | 職務内容 | 許可可能性 |
|---|---|---|
| 情報工学(学士) | ソフトウェアエンジニア | ◎ |
| 経済学(学士) | マーケティング職 | ◎ |
| 文学部 | エンジニア | ✕(実務10年以上なら可) |
| デザイン専門学校 | UI/UXデザイナー | ○ |
6. 採用理由書(雇用理由書)の書き方|スタートアップ向けテンプレ
スタートアップでは、この文書の完成度が許可率を大きく左右します。
【サンプル構成】
- 会社概要・事業モデル
- 外国人採用の必要性
- 採用する外国人の専門性
- 専門性が事業に与える影響
- 職務内容(専門業務を中心に)
- 労働条件
- 今後の事業計画
7. 創業1年未満企業のビザ審査強化ポイント
創業から短期間の場合、入管は次の点を詳細に求めます。
- 代表者の経歴が事業と関連しているか
- 資金調達が十分か
- 顧客の見込みはあるか
- プロダクトの開発は進んでいるか
- 専門業務を任せる根拠はあるか
8. 許可率を高めるための実務チェックリスト
- 事業計画書は作成したか
- 資金調達資料は提出したか
- プロダクト資料を準備したか
- 職務内容は専門業務だけを記載したか
- 採用理由書はロジックが通っているか
- 給与は市場平均以上か
- 会社の実態(オフィス・HP・事業資料)は整っているか
9. よくある質問Q&A(スタートアップ企業向け)
Q1. 創業したばかりでもビザは取れますか?
→ 取れますが、追加資料が必須です。
Q2. 売上ゼロでも大丈夫?
→ 顧客との契約予定・PoC・投資資料があれば許可される可能性あり。
Q3. オフィスは必須?
→ 実態のある場所は必要。自宅オフィスでも場合により許可されます。
Q4. 給与はどれくらい必要?
→ 日本人と同等以上が必須。最低22〜25万円程度。
Q5. 採用理由書は必要?
→ スタートアップでは必須レベル。クオリティ次第で許可率が変わります。
10. まとめ|スタートアップは“説明力”があれば技人国ビザは全く問題なし
スタートアップ企業だからといって、技人国ビザが不利になるわけではありません。
必要なのは「事業が継続する」「専門性のある業務がある」ことを、書類でロジカルに説明する力。
実務的には、
- 事業計画
- 投資資料
- プロダクト資料
- 職務内容書
- 採用理由書
の質を高めるほど許可率が上がります。
関連記事・参考リンク
関連記事
- 【転職している場合の技術・人文知識・国際業務ビザ 更新の注意点】
- 客先常駐でも技術・人文知識・国際業務ビザは取得可能?条件・注意点を徹底解説
- 技術・人文知識・国際業務ビザの給与・職務条件|適正給与・職務内容・注意点を徹底解説
- 技人国ビザの在留期間が1年になってしまう理由と回避方法
- 中小企業でも技人国ビザは取れる?不許可を回避する実務ポイントを徹底解説
参考リンク
無料相談
| まずは、無料相談に、お気軽にお申込み下さい。ご相談の申し込みは、「お問い合わせページ」から承っております。なお、無料相談は事前予約制とさせて頂いています。 |
![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |

