「永住者・定住者・配偶者ビザの違いと就労制限」―コンビニ勤務が可能な在留資格を整理する―

外国人の皆さまが日本で働く際、特に「コンビニのレジ打ち」「アルバイト」「夜勤シフト」など、一般的な“小売・サービス”業務に従事したい場合、どの在留資格であれば可能かを明確に把握しておくことは極めて重要です。今回は、代表的な在留資格である

  • 永住者
  • 定住者
  • 日本人の配偶者等/永住者の配偶者等

の3種類を中心に、「就労制限の有無」「どんな仕事ができるか」「コンビニ勤務が可能か」という観点から整理・比較します。

また、記事末には「よくある質問(Q&A)」形式で、実務上よくある疑問にもお答えしています。


1.基礎知識:在留資格と就労制限とは

(1) 在留資格とは

在日本の外国人が日本国内で「どんな活動をするために」「どのくらい在留するか」を定めた制度が在留資格です。たとえば「技術・人文知識・国際業務」「家族滞在」「留学」などがあり、それぞれ活動内容・在留期間・更新要件が異なります。

(2) 就労制限とは

在留カード(在留資格を持つ外国人に交付されるカード)には、「就労制限の有無」という欄があります。一般に次の三つに分類されます。

  • 「就労制限なし」:職種・雇用形態・就労時間などに大きな制限が無いことを意味します。
  • 「在留資格に基づく就労活動のみ可」:その在留資格で許された範囲内の活動しかできません。たとえば「技術・人文知識・国際業務」では製造ラインの単純作業はNGなどです。
  • 「就労不可」:原則として働けません。ただし「資格外活動許可」を得て別途収入を伴う活動をする場合があります。

この「就労制限なし」の在留資格を持っていると、いわゆる「コンビニ勤務」「アルバイト」「パート」「夜勤・深夜シフト」など比較的自由度の高い就労も可能となります。実際、「就労制限なし」の在留資格であれば、会社経営も可能、職種・形態も自由となります。


2.3つの在留資格の比較

以下、3つの在留資格を「就労制限」「コンビニ勤務可否」「その他特徴」を整理します。

在留資格就労制限の有無コンビニ勤務(単純労働)可能か主な特徴・補足
永住者就労制限なし 可能(職種・時間とも自由)在留期間の制限なし(多くの場合「無期限」)/帰化とは異なり国籍は日本籍にはなりません。
定住者就労制限なしという扱いが多い。 可能主に「日系3世」「中国残留邦人」「定住特別な事情がある者」などが対象。仕事内容に制限なく、学歴・職歴も必ずしも要件にならないことがあります。
日本人の配偶者等/永住者の配偶者等就労制限なし 可能配偶者または実子であることが条件。婚姻実態・同居・生計維持など審査があります。特に離婚・死別時には在留資格変更を要する場合があります。

補足説明

  • 永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の4つの在留資格は、**「就労の制限がない」**在留資格に分類されます。
  • よって、この4つを持っていれば「コンビニのレジ打ち」「深夜シフト」「パート」「アルバイト」「工事現場作業」など、いわゆる単純労働的業務でも従事可能と理解されます。実務解説にも「日本人と同様にどんな仕事にも就くことができます」と明記されています。
  • また、在留資格を有していても「在留カードの就労制限欄」「在留期限」「在留資格の趣旨(本来の目的)」を常に確認し、実際の就労がその範囲から逸脱していないかを意識することが重要です。

3.「コンビニ勤務」が在留資格上大丈夫か?実務観点からの整理

(1) なぜ「コンビニ勤務」が問題になるか

コンビニ勤務(レジ・品出し・夜勤・清掃・商品の陳列など)は、一般に「単純労働」「技能・学歴を必ずしも必要としない業務」という位置づけです。多くの就労ビザ(例えば「技術・人文知識・国際業務」など)では、学歴や実務経験・専門性が求められ、「単純労働」「深夜シフト」「軽作業」等が許可外となるケースがあります。
そのため、「就労制限あり」の在留資格を持っている方がコンビニ勤務を行うと、在留資格の趣旨に反して 「資格外活動」 とみなされて不法就労の疑いを受ける可能性があります。

(2) 上記比較表からの結論:コンビニ勤務は可能か

  • 永住者 → 可能
  • 定住者 → 可能
  • 日本人の配偶者等/永住者の配偶者等 → 可能
    つまり、上記3種類すべてにおいて「コンビニ勤務」は在留資格上可能であると整理できます。
    ただし、次のような注意点があります。

(3) 注意すべき実務ポイント

  • 在留カードの「就労制限の有無」が「就労制限なし」と記載されていることを確認すること。特に、何らかの条件付で「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載されている場合はその範囲外の仕事(例:単純労働・夜勤・深夜業務など)はNGとなる可能性があります。
  • 離婚・死別・婚姻解消があった場合には、配偶者系の在留資格の場合、引き続き同じ在留資格で在留可能か、あるいは「定住者」など別の在留資格への変更が必要になるケースがあります。例えば、配偶者等ビザを取得していたが離婚した場合は在留資格変更届出を要することがあります。
  • 勤務先(雇用主)にも、外国人雇用する際に「在留資格」「就労制限の有無」「外国人雇用状況届出」など法令遵守が求められます。永住者等の場合、就労制限がないとはいえ、雇用側にも義務があります。

4.それぞれの在留資格の「その他条件/特徴」も確認

(A) 永住者

  • 在留期間の制限がないケースが多く、「無期限」あるいは「5年・3年・1年」など更新不要のケースもあります。
  • 永住許可申請の際には、例えば、引き続き10年以上日本に在留していること(ただし「技能実習」「特定技能1号」を除く)などの要件があります。
  • 就労制限がないため、パート・アルバイト・正社員・経営者など、働き方の自由度が非常に高いです。

(B) 定住者

  • 主に「日系3世」や「中国残留邦人」「特別な事情により定住を許可された者」などが対象となっています。
  • 学歴・職歴の要件があまり厳しくなく、仕事内容の制限がない例として紹介されています。
  • 在留期間は1年・3年・5年等、法務大臣が指定するものです。

(C) 日本人の配偶者等/永住者の配偶者等

  • 日本人または永住者と婚姻関係を有する外国人、あるいは日本人・永住者の実子・特別養子が対象です。
  • 就労制限なし。職種・雇用形態・就労時間のいずれも自由。
  • ただし、婚姻の実態・同居状況・生計維持などが審査され、離婚・死別時には在留資格変更を求められることもあります。

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6.Q&A:よくある疑問と回答

Q1.「定住者」の在留資格だけど、コンビニで夜勤できますか?
A1. はい。「定住者」の在留資格は、一般的に就労制限がない在留資格として扱われており、仕事内容や時間・雇用形態の制限がない例が紹介されています。 ただし、雇用契約内容が法令違反(例えば深夜営業のうち風俗営業に該当するなど)でないか、在留カードの記載に「就労制限なし」とあるかを必ず確認してください。

Q2.「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、コンビニのレジ打ちはできますか?
A2. 原則、できません。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、学歴や実務経験を要する専門的・知的業務が想定されており、単純作業(例:レジ打ち・清掃・品出し)や製造ラインなどが「許された範囲外」とされることがあります。 そのため、この在留資格ではコンビニ勤務はリスクを伴います。

Q3.「日本人の配偶者等」の在留資格を持っていますが、パート勤務(週20時間未満)なら問題ありますか?
A3. 問題ありません。この在留資格では「就労制限なし」とされており、正社員でもパートでも、勤務時間の制限も特にありません。 ただし、勤務先が法令で禁止された業務(風俗営業等)でないか、雇用契約が適法か等は雇用先ともよく確認してください。

Q4.配偶者ビザで働いていますが、離婚したら在留資格はどうなりますか?
A4. 配偶者系の在留資格(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」)の場合、離婚・死別があったときには、在留資格の変更・届出が必要になるケースがあります。例えば「定住者」への変更を検討するなどです。 離婚後にそのまま更新申請すると、不許可になる可能性もありますので、早めに専門家に相談することをお勧めします。

Q5.「永住者」の在留資格ですが、アルバイト先を変えてコンビニから飲食チェーンに移りたいです。大丈夫ですか?
A5. はい、大丈夫です。永住者は「就労制限なし」の在留資格であり、職種・雇用形態・勤務時間を問わず働くことが可能です。転職・パートから正社員・起業なども自由です。 ただし、勤務内容が法令違反・在留カード事項違反にならないか、また雇用主側も外国人雇用にあたって適切な届出・手続きをしているかを確認してください。


7.まとめ:在留資格と「コンビニ勤務」の関係

  • 「コンビニ勤務」は、多くの場合“単純労働”“深夜シフト”“アルバイト/パート”という特徴を持つため、在留資格によっては就労できない・リスクがある場合があります。
  • 本稿で整理した「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等/永住者の配偶者等」の3種類は、いずれも 「就労制限なし」 の在留資格であり、コンビニ勤務を含む一般就労活動が可能と理解できます。
  • ただし、就労できるからといって何でもOKというわけではなく、雇用契約内容・勤務先の業種(風俗営業等ではないか)・在留カードの記載・在留資格の趣旨と実際の生活状況(婚姻・同居・生計維持など)など、実務上の注意点があります。
  • 在留資格で定められている活動範囲・雇用主の義務・外国人本人の義務(税金・年金・届出)を理解し、必要に応じて専門家(行政書士/社労士)に相談することもおすすめです。

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  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
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