【完全ガイド】外国人ITエンジニアを採用する企業が知っておくべき在留資格の基礎
目次
1.外国人ITエンジニア採用が増加している背景
近年、日本国内では深刻なIT人材不足が続いており、経済産業省の調査によると2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると試算されています。
そのため、海外から優秀なエンジニアを受け入れる企業が急増しています。
特に、ベトナム・インド・ネパール・中国・インドネシアなどの出身者は、日本のIT企業での需要が高く、システム開発・ネットワーク構築・AI開発などの分野で活躍しています。
しかし、外国人を採用する際には「在留資格(ビザ)」の理解が欠かせません。誤った在留資格での雇用は不法就労助長罪に問われるリスクもあります。
2.ITエンジニアに該当する在留資格とは?
外国人ITエンジニアが日本で働く場合、主に以下の在留資格が関係します。
| 在留資格名 | 対象業務 | 主な対象者 | 
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | IT技術・システム開発・設計 | 大卒・専門卒の技術者 | 
| 高度専門職1号・2号 | 高度な専門知識を持つ人材 | 年収や学歴要件を満たす人 | 
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等 | 制限なく就労可能 | 永住・身分系資格者 | 
その中でも、「技術・人文知識・国際業務」ビザ(以下「技人国ビザ」)が、ITエンジニア雇用で最も一般的な在留資格です。
3.「技術・人文知識・国際業務」ビザの基本要件
この在留資格は、「理学・工学・情報学」などの専門知識を活かす業務に従事する外国人を対象としています。
▶ 技人国ビザの取得要件
- 学歴要件:大学または専門学校でIT・情報系の専攻を修了していること
- 職務内容要件:専攻内容と職務内容に関連性があること
- 雇用要件:日本国内の企業と正式な雇用契約があること
- 給与要件:日本人と同等以上の報酬であること
この要件を満たしていれば、システムエンジニア・プログラマー・ネットワークエンジニアなどの職種で就労可能です。
4.ITエンジニア採用で注意すべき学歴・職務内容の適合性
最も多い不許可理由が、「学歴と職務内容の不一致」です。
たとえば、大学で経済学を専攻した人がプログラマーとして採用された場合、専攻と職務の関連性が弱いと判断され、許可が下りないケースがあります。
▶ 関連性が認められる例
- 大学で情報工学 → システム開発職
- 大学で電子工学 → 組込ソフト開発
- 大学で経営情報 → ITコンサルティング
▶ 関連性が弱い例
- 大学で経済学 → プログラミング職(関連性説明が必要)
- 大学で文学 → ネットワークエンジニア(原則不可)
このような場合は、職務内容説明書を詳細に作成し、「学業で習得した知識がどのように業務に活かせるか」を具体的に説明することが重要です。
5.学歴がない外国人を採用する場合の代替要件
大学や専門学校を卒業していない場合でも、次の条件を満たせば「技人国ビザ」が許可される可能性があります。
- 10年以上の実務経験(うち5年以上は専門分野に従事)
- IT関連の**国際資格(例:CCNA、Oracle、AWS認定資格など)**がある
- 過去に日本で同様の業務に従事した実績がある
これらの要件を証明するため、職務経歴証明書や推薦書、業務内容の詳細説明書を用意する必要があります。
6.IT業界での具体的な職種例と該当可否
| 職種 | 技人国ビザで可能か | 補足 | 
|---|---|---|
| システムエンジニア | ○ | 主な対象 | 
| プログラマー | ○ | 専攻と業務の関連性要 | 
| ITコンサルタント | ○ | 実務経験も評価対象 | 
| ネットワークエンジニア | ○ | 理系専攻者に適合 | 
| カスタマーサポート | △ | 技術サポート業務なら可 | 
| データ入力・テスター | × | 単純作業は不可 | 
つまり、「知的労働・専門的労働」に該当しない単純作業職は、技人国ビザの対象外です。
7.採用企業が準備すべき必要書類と流れ
▶ 採用企業が提出する主な書類
- 雇用契約書(期間・給与・職務内容明記)
- 会社登記簿謄本
- 直近の決算書または確定申告書
- 会社案内(パンフレット・ウェブサイト)
- 職務内容説明書
- 理由書(外国人採用の必要性)
▶ 外国人本人が提出する主な書類
- 卒業証明書・成績証明書(翻訳付き)
- パスポート・在留カード(変更申請の場合)
- 履歴書・職務経歴書
8.よくある不許可理由とその回避策
| 不許可理由 | 回避策 | 
|---|---|
| 学歴と職務内容が一致しない | 職務内容説明書で関連性を明確に説明 | 
| 会社の経営状況が不安定 | 決算書で安定性を示す | 
| 給与が日本人より低い | 同職種との比較表を添付 | 
| 契約期間が短い | 1年以上の契約を推奨 | 
特に中小企業の場合、会社側の信頼性(経営基盤・社員数・事業実績)も審査されます。
入管は「継続的に雇用できる体制があるか」を重視します。
9.採用後に企業が守るべき義務(入管法・労基法)
外国人を採用した後も、企業には次のような法的義務があります。
- 在留カードの確認・コピー保管(入管法19条)
- 在留期間満了前の更新支援
- 労働条件通知書・雇用契約書の交付(労基法15条)
- 雇用保険・社会保険の加入
- 離職時の**「外国人雇用状況届出書」**提出(ハローワーク)
これらを怠ると、行政指導や罰則の対象となる場合があります。
10.Q&A:よくある質問まとめ
Q1. 外国人エンジニアをアルバイトで採用できますか?
→ できません。「技人国ビザ」はフルタイムが原則です。
Q2. 新卒外国人を採用する場合、内定時に何をすべきですか?
→ 内定後、入管に「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
Q3. 技術・人文知識・国際業務ビザの更新はいつ行えばいいですか?
→ 在留期間満了の3か月前から申請可能です。
Q4. リモートワーク勤務でもビザ申請できますか?
→ 原則可能ですが、勤務地(本社や支社)が日本国内である必要があります。
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12.まとめ
外国人ITエンジニアを採用する際、最も重要なのは「在留資格の適正判断」です。
特に「技術・人文知識・国際業務」ビザは、学歴・職務内容・給与・企業の安定性の4つが審査の柱になります。
入管実務では、専門性の説明と書類の整合性が何より重視されます。
自社での判断が難しい場合は、入管実務に詳しい行政書士への相談をおすすめします。
参考リンク
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|  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 | 

