特定技能制度とは?外国人労働者受け入れの新しい制度をわかりやすく解説

特定技能制度は、日本で深刻化する人手不足を解消するために、2019年4月に導入された外国人材受け入れの新制度です。本記事では、特定技能とは何か?どのような業種で活用されているのか? などをわかりやすく解説します。最新の制度改正にも触れながら、企業側・外国人側の双方にとってメリットのある制度運用についても詳しくご紹介します。


1,特定技能制度とは?

特定技能制度とは、特定の分野において一定の専門性や技能を有する外国人を、**就労を目的として受け入れる在留資格(ビザ)**のことです。これまで「単純労働」とみなされ就労できなかった分野にも、制度によって外国人が働けるようになりました。


2,2種類の「特定技能」

特定技能には2つの種類があります。

① 特定技能1号(SSW1)

  • 期間:通算5年まで
  • 技能レベル:中級(試験等で証明)
  • 日本語能力:N4相当以上
  • 家族の帯同:不可
  • 対象分野:介護・外食・建設・農業・宿泊など12分野

② 特定技能2号(SSW2)

  • 期間:更新可能、実質無期限
  • 技能レベル:熟練(高度技能)
  • 家族の帯同:可能
  • 対象分野:2025年現在、建設・造船の2分野(今後拡大予定)

3,特定技能の対象となる業種(分野)

2024年3月の閣議決定により、特定技能の対象分野は16分野に拡大されています。

以下に、現在の特定技能の対象となる16分野と、それぞれの主な業務内容を挙げます。

  1. 介護
    • 身体介護(入浴、食事、排泄等の介助)、生活援助(清掃、洗濯、調理等)など
  2. ビルクリーニング
    • 建築物内部の清掃作業全般
  3. 工業製品製造業(旧:素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)
    • 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、溶接、塗装、仕上げ、電気機器組立て、電子機器組立て、プリント配線板製造、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、工業包装、工業板金、機械保全、プラスチック成形、紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、陶磁器製品製造、紡織製品製造、縫製、RPF製造、印刷・製本など
  4. 建設
    • 型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、内装仕上げ、とび、石工、電気工事、鉄骨施工、タイル施工、配管、熱絶縁、計装、築炉など
  5. 造船・舶用工業
    • 溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立てなど
  6. 自動車整備
    • 自動車の日常点検、定期点検、分解整備など
  7. 航空
    • 空港グランドハンドリング(航空機誘導、手荷物・貨物取扱等)、航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
  8. 宿泊
    • フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなど
  9. 農業
    • 耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)、畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
  10. 漁業
    • 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索・採捕、漁獲物の処理・保蔵等)、養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収穫・処理等)
  11. 飲食料品製造業
    • 飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生管理
  12. 外食業
    • 飲食物の調理、接客、店舗管理など
  13. 自動車運送業(2024年3月追加)
    • バス運転者、タクシー運転者、トラック運転者
  14. 鉄道(2024年3月追加)
    • 軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員(運転士、車掌、駅係員)
  15. 林業(2024年3月追加)
    • 育林(地拵え、植栽、下刈り、間伐等)、素材生産(伐採、搬出等)、林業用種苗の育成(育苗)
  16. 木材産業(2024年3月追加)
    • 製材、木材加工

なお、将来的には2027年頃の運用開始を目指し、新たに「倉庫管理」「廃棄物処理」「リネン供給」の3分野が追加され、合計で19分野になる方針が示されています。


4,特定技能の取得方法・流れ

  1. 日本語・技能試験に合格
  2. 雇用先企業とのマッチング
  3. 在留資格申請(入管)
  4. 来日・就労開始

※「技能実習」からの移行や、「日本の留学生」からの切り替えも可能です。


5,特定技能制度のメリット・デメリット

企業側のメリット

  • 人手不足の即戦力を確保できる
  • 技能実習よりも柔軟に活用可能
  • 永続雇用の可能性がある(特定技能2号)

外国人側のメリット

  • 賃金・労働条件が改善されやすい
  • 実質的なキャリアアップが可能
  • 2号への移行で家族帯同も実現

注意点・デメリット

  • 試験や日本語のハードルがある
  • 分野ごとに制度が複雑で変動が多い
  • 企業の支援体制(生活支援など)が必要

6,特定技能制度の未来と今後の展望

特定技能制度は、日本の人手不足を解消する重要な施策として、今後もその役割を拡大していくと考えられます。

  • 対象分野のさらなる拡大: 現在16分野ですが、将来的には「倉庫管理」「廃棄物処理」「リネン供給」の3分野が追加され、合計19分野となる方針が示されています(2027年頃運用開始予定)。
  • 特定技能2号の対象分野の拡大: より多くの分野で特定技能2号への移行が可能となり、外国人材が長期的に日本で活躍できる環境が整いつつあります。

これにより、外国人材が日本でキャリアを築きやすくなると同時に、日本企業はより安定的に人材を確保できるようになるでしょう。


7,よくある質問(FAQ)

Q1:技能実習と特定技能の違いは?
→ 技能実習は「技術移転」が目的、特定技能は「労働力確保」が目的です。

Q2:永住権は取得できますか?
→ 特定技能1号だけでは困難ですが、2号での在留や家族帯同を経て長期在留が可能になる場合があります。

Q3:どのくらいの日本語力が必要?
→ 基本はJLPT N4以上(簡単な会話ができるレベル)が求められます。


8,まとめ:特定技能制度は日本の未来を支える仕組み

特定技能制度は、外国人が「労働者」として日本社会で活躍できる道を開く画期的な制度です。企業にとっても人材確保の選択肢が広がり、社会全体の持続可能性にも貢献しています。

外国人雇用を検討している企業や、日本で働きたいと考えている海外の方は、ぜひこの制度を活用して新たな一歩を踏み出してください。


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特定技能制度に関する最新情報は、法務省・出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。

 
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/

  代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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